序(陸)
昨日早く寝た(当社比)甲斐があって平日と変わらない時間に起きることができた、この時間からであれば今日の待ち合わせには余裕を持って到着できることだろう、まだまだ出発するにしても時間が早すぎるので、自分が住んでいるこの街について調べてみることにした、ネットの情報なのであまり鵜呑みにもできないなとは思っていたがどうやら、この街は過去数多の戦の舞台として戦場となっており、そのことからほかの地域と比べても霊障など、不思議な出来事が多いそうである
そういったものの根拠などを調べながらネットサーフィンをしていると割といい時間になっていたので身支度を整え待ち合わせ場所へと向かった、外はカラッと晴れ渡っていて、この季節にしては高めの気温になると先ほど天気予報で言っていたような気がした
駅前広場には11時20分ごろに到着した、少し早めではあったが先生に到着しましたと連絡をすると、10秒後くらいに後ろから声をかけられた
「どうも、来てくれてありがとう」
振り返るとレディーススーツ姿の磯部先生が立っていた、まさかスーツで来るとは思っていなかったので多少面食らったが先生の凛とした雰囲気にとても似合っていて見とれてしまった
「いえ、僕も初めてのことだったので不安もありましたから」
「そうですよね、それもそうですがああいう場所では事故も起こりやすいですから、先に一度お話ししておくのが賢明だと判断しまして」
そう言って駅を外周するように歩き出した先生についていく
駅周辺は田舎にしてはきれいな場所であり、近くにテーマパークがあることからそこのキャラクターたちがたくさん描かれた構内となっている、ファミレスなども近くにあるためそこに行くのかと思ったが、どんどん道をそれて、近くのビルの一室へと向かっていき、ビルのエレベーターに乗り込んだ
「このビルの一室を借りていまして、主に私の研究拠点なのですが専攻が民俗学なので部活の子たちには開放しているんです、私室ではありませんが使いたいときは日立木君か私がいるときにということになっているので、よろしくお願いします」
そう説明され、ビルの一室へと案内される、そこはまるでオフィスルームのようになっていてPCとデスクが数台置かれているが、周りにはこの土地にまつわるものなのであろうたくさんのなにか不気味なお面のようなものから、儀式に使えそうな燭台などありとあらゆるものが置かれていてそのマッチしていない雰囲気も相まってとても怖さがある部屋が出来上がっていた
「これは、怖いですね」
僕がそうつぶやくと先生は少し笑って
「みんな最初はそう言うんですがね、土日、放課後よくここに来る子もいますしきっとすぐなれますよ、相馬君はきっと来年までうちの部活にいるでしょうし」
「?なぜそう思うんですか」
「いや、日立木さんとお話しできるのはおそらく君くらいでしょうから、来年二人になったとして日立木さんがまさか君を手放すとは思えませんから」
そういえば来年には先輩方は卒業してしまうのだ、日立木さんと二人きりの部活というのもなにか青春っぽくていいかもしれない
「しかもあなたは日立木さんの誘いを断ることはできない、そう感じましたから」
「なぜです?」
「まあそれはあなた自身が追々気づくことになると思いますよ」
そんなことを言って先生は一番奥にある席に腰を下ろした、僕も座れと促されているようだったのでその手前のイスに腰を下ろした