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戦争と兄妹  作者: KAIN
第四章:激闘と兄妹
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第四十九話

「ぐっ……うう……」

 妹の呻き声。そして……

 身体を『く』の字に曲げた妹に向かって、背後から男達が手を伸ばして行く。そして男達が妹の手首を掴み、ぐいっ、と引っ張る。

「は 離せっ!!」

 妹が叫ぶ、だけど男達は止まらない、背後から首に腕を回し、妹の身体が持ち上げられる。

 妹はジタバタと藻掻いて、唯一自由に動く足で男達を蹴飛ばしたりするけれど、男達はやはり眉一つ動かさない、そればかりか妹の足首を掴んで、左右に広げさせた。

「や 止めろ!!」

 妹が叫ぶ。

 そのまま男達は、妹の制服に手をかける。

「い 嫌だっ!!」

 妹が叫ぶ。

 ビリビリと布が裂ける音、そして男達が妹に群がり始める。

 そのまま妹の姿は、群がった男達の背中で見えなくなってしまった。

 それでも。

 それでも、妹が……

 妹が、何をされているのかは……

「い 嫌だ、離せっ!! 離してくれ!! 私の、私の初めては兄様に……!!」

「……っ」

 僕は、ぎりり、と歯ぎしりした。

 背後から僕の身体を押さえつける大男の身体を、無理矢理振りほどこうとするけれど、男の身体はびくともしない。

 僕は、自由に動かせる首だけを何とか動かして、背後にいるガスマスクの女を睨み付ける。

「止めさせろ!!」

 僕は叫んだ。

「お前の狙いは僕だろう!? 妹は……」

 僕は、ぎりっ、と歯ぎしりする。

「玲奈は、もう関係無いはずだ!! だから……」

 僕は言う。

 そうだ。

 妹は……

 妹は、何も……

 何も、関係無いのだ。

 僕は……

 僕は、今になって……

 その事を、思い出した。


 女が、すっ、と。

 右手を上げる。

 一人がそれに気づいて、ぴたり、と動きを止める、それに合わせて、他の男達もみんなそれぞれ動きを止め、さっきまで妹の身体を掴んでいたり、服にかけていた手を離した。

 どさり、と音がした、多分妹が、地面の上に落ちたのだろう。

「確かに」

 マスクの女が言う。

「私の目的は、貴方一人だけ、貴方が私と一緒に来てくれれば、これ以上妹さんに手は出さない、と約束しても良いわ」

 マスクの女が告げた。

 僕はその女の顔を、じっと睨み付ける。

 この女の言葉を、何処まで信用して良いのか、それは解らない。

 だけど、今は……

 今は、こいつの言葉を信じるしか無い。

 でも。

「玲奈と……」

 僕は言う。

「妹と、二人きりで話をさせてくれ、ほんの数分で良いんだ」

 その言葉に。

 マスクの女は、僕の身体を押さえている男に向かって、またすっ、と右手を横に振って見せた。

 それを見た男が、ゆっくりと僕の身体を押さえる手を離した。


 僕は、ふらふらと立ち上がり、そのまま妹に向かって走る。

 大男達は、まだ妹を取り囲んではいたけれど、妹に駆け寄る僕を見ても、まるで人形のようにその場にじっと佇んでいるだけだ、それがより一層不気味ではあったけれど、今はそんな事より、妹の方が先だ。

 僕は、妹に駆け寄った。

「玲奈!!」

 立っている男達を押しのけて、僕は妹に向かって叫んだ。

 妹は……

 アスファルトの上に、力無く……

 力無く、横たわっていた。

「……っ」

 その妹の姿を見て、僕はまたしても歯ぎしりした。

 周りの男達を見る、何人かが、引き千切られた妹の制服の一部と思われる布を、手に持っている。

 よくも。

 そういう感情と同時に、僕の心に生まれたのは……

 妹に対しての、深い謝罪だった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 銃で撃っても倒せないなんて、まともに戦えないですよね……ここはもうマスク女に従うしか、玲奈ちゃんを助ける方法がない(;´・ω・) ここまでずっと雅志くんのためにたくさんの人を殺めてきた玲奈…
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