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戦争と兄妹  作者: KAIN
第二章:蜘蛛と兄妹
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第十七話

 半開きになった扉の隙間からでも、もの凄い閃光が差し込み、真っ暗だった工場全体が眩い輝きに一瞬照らし出される。

 地震の様な振動で、工場全体が激しく揺れ、天井からパラパラと埃のような物が落ちてくる。

 そして……

 もの凄い轟音が、耳をつんざいた。

 耳を塞ぎたかったけれど、手に力が入らず、耳元に手が持っていけない。

 ややあって……

 それらの轟音や、振動、閃光が収まり……

 辺りには、再び暗黒と静寂が訪れていた。


「さて」

 男の声が、その静寂の中に響く。

「それじゃあ、今度は君の番だ」

「……っ」

 僕はぎりり、と歯ぎしりする。

 玲奈……

 妹の名前を、小さく心の中で呟く。あの爆発では……さすがに……

 さすがに、あいつも……

 そして……

 きり、と、首を絞める紐の感触が強くなる。

「……」

 首の皮膚が少し裂け、血が滴るのが解る。

 畜生……

 僕は、悔しさに顔を歪めていた。

 妹も……

 僕も……

 こんな……

 こんな、『犯罪者』に……

「……」

 せめてもの抵抗をしてやろうと、どうにか手を動かす、ブルブルと震え、ろくに動かせなかったけれど、とにかく、こいつにただ殺されるのはごめんだった、僅かにでも……何か……

 何か抵抗をした、という証を示したかった。

 意識が、どんどん遠のいて行く……

 かろうじて、前へ突き出す様な動きをした手も、すぐに力を無くして垂れ下がる。

 視界が……

 黒く……塗りつぶされていく。

 ダメだ……

 このまま……

 このまま、意識を……失うわけには……

 このまま……

 死んで……

 たまるか……

 妹の……仇を……

「……」

 歯ぎしりする力も入らない……

 だけど……

 それでも僕は……

 そいつを……

 目の前の男を……

 最後まで……

 睨みつけ……

 そして……

 視界が、完全に……

 完全に、黒く染まった……


「うむ」


「……っ」

 声が、響いた。

 もう……

 もう、永遠に……

 聞く事は無い。

 そう、思っていた声。


「苦しみに歪んだ兄様の表情、というのも、これはなかなか……『来る』ものがあるな、何やらおかしな性癖に目覚めてしまいそうだ」


 ごくり、と。

 唾を飲み込みながら、巫山戯た、変態的な事を言う声。

 もう十数年もの間、うんざりするくらい毎日聞いている声。


「だが……」


 ソイツが……

 その声の主が、言う。


「兄様に『そういう』表情をさせて良いのは、世界で私一人だけ、と決まっているのだ、悪いが……」


 そんなの決まっててたまるか!!

 そう怒鳴りつけそうになる。

 だが今の僕には……そう怒鳴るだけの力も無い。


「貴様は、退場して貰おうか」


 少しだけ、怒った様な声がする。

 次いで……


 ばっ、と。

 周囲の暗闇よりも更に黒い影が……

 男に向けて、飛びかかる。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 玲奈ちゃーーーーん!心配したよーっ(; ゜Д゜) 生きてて良かった!!!!
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