第一話
デート。
短い、言葉だ――
たったの三文字、いいや、一文字は単なる棒だから、実質的には二文字と言って良い言葉、ペンを手に、どれだけゆっくりと丁寧に書いたとしても、書き終わるまでにせいぜい数秒というところだろう――
そんな短い言葉なのに――この僕……
堂本雅志には、十七年という生涯の中で一度も縁が無かった言葉。
しかし――
そう――
しかし、だ。
「それも今日までだあぁーっ!!」
午前七時ジャスト。
自宅二階の自室。
八畳ほどのフローリングの洋室の真ん中に立ち、僕は、高らかに宣言した。
そう――
僕は――
僕は今日――
「女の子とデートをするんだああぁーっ!!」
叫びながら、僕はその場でバタバタと足を踏みならす。
嬉しい、楽しい、両方が合わさったような、なんとも言えない甘酸っぱい感情が心の奥から湧き出して来る。
「ふあああああああああ……」
変な声を上げながら、僕はそのまま背後にあるベッドに倒れ込む。
「うわああああああああああーっ!!」
叫びながら、さらにベッドの上をゴロゴロと転がり回る――
気恥ずかしい思いが、どんどん吹き出して来る、僕はさらに激しくベッドの上を転げ回り――
「う うわっ!!」
思わず声が出るのと、ほとんど同時に、身体がずるり、とベッドから滑り落ち――
そのままびたんっ、と背中を床に打ち付ける。鋭い痛みが背中に走る。
だけど……
その痛みが、これが現実である事を物語っていた。
シミだらけの自室の天井をぼんやりと眺めながら、僕はにやついた顔で、床の上に横たわっていた。
「デート……この僕が……デート……」
ぶつぶつと、口の中で呟く。
女の子とデートをする。
この僕が――
「……」
僕は、思わず目を閉じていた。
この僕が、女の子とデートをする。昔は――
昔は……
「――っ」
一瞬、心の奥底深くに浮かぶ、昏い感情。
考えるな。
僕は、自分に言い聞かせる――
もう、『あれ』は終わった事だ。
『あんな事』は、もう二度と起こらない。もう……考えても仕方の無い事だ。
僕は、激しく頭を振って、昏い感情を頭から追い出した。
そのまま、ゆっくりと立ち上がる。
余計な事を考えるな。
今日は楽しい一日にするんだ、それにはまず、僕が楽しい顔をしていなければ、暗い表情でいたら、せっかくのデートも台無しだし、何よりも相手の子に失礼じゃないか。
僕はゆっくりと息を吐いて気を落ち着かせ、壁に掛けられた時計を見る。
七時十分。十分間も騒いでいたのか――僕は呆れながらも、改めて頭の中で計画した今日の予定を確認する。
待ち合わせ時刻は午前十時――場所は駅前広場だ、この家からは徒歩で三十分ほどだから、九時半に家を出れば間に合うはずだ。
その後、相手の子にちょっとした用事があるので、午前中はまずそれを済ませる。その後、昼になったら駅前に戻ってまずは昼食だ、もちろん彼女の好みに合わせるつもりだ、ファミレス、ファーストフード、ラーメン屋、蕎麦屋、駅前近くで食事が出来そうな店は大体把握済みだ、何処に行きたいと言われても案内出来る――
「兄様」
その後は街でデートだ。遊園地、映画館、ゲームセンター、博物館に美術館、この街の中や、あるいはその近辺で遊べそうなところも、大体調べてある、まあ、この街には産まれた時から暮らしているから、今更調べずとも知っているところばかりだったけれど……
とにかく、そこで夕方まで過ごし、夕方になったら街へ戻る――そんな流れで良いだろう。
「兄様」
街に戻ったら次はディナー、ここももちろん彼女の好みに合わせる。この日の為にお金はばっちりと準備してあるんだ、問題は無い、昼夜両方とも、という訳にはいかないけど、どちらかを奢るくらいは出来る。そして夕食を終えたら……
「兄様、おい兄様、話を聞いてくれ」
夕食後は――まあ、そのまま解散だろう。
「……」
一瞬、頭の中にピンク色の妄想が浮かぶ――
そ そりゃあ、まあ……僕だって健全な十七歳、高校二年生の男子生徒だ。
『そういう事』にも、全く興味が無いというわけじゃない――
だが、相手の子とは今日が初めてのデートなのだ――いきなりそこまでの関係になれるというのは、さすがに無理があるだろう。
まずはとりあえず、仲良くなる事だ。そして次のデートの約束を取り付ける。最初としてはそんなところだろう。
うん、そうだ。焦ることは無いさ――僕はそう自分を納得させた。
さて、そうと決まったら準備をしなくてはいけない――まずはとりあえず顔を洗わないと――
そんな事を考えた、まさにその瞬間だった――
すっ――
「……?」
いきなり耳元に、何かが音も無く寄せられる――そちらに怪訝な顔を向ける暇も無く――
「兄様ってばーっ!!」
「うぉあっ!!」
いきなり甲高いキンキン声で呼びかけられ、僕は思わずその場を飛び退いていた。
慌てて声のした方を振り返る――
そこに、一人の少女が立っていた――
こんばんは。
二作品目の投稿となりましたKAINです。
キーワードに「近親相姦」とかついてますが、あまり過激なのにはしない・・・予定w
昨年(2018年)のダッシュエックスに応募した作品のリメイク版です。
どうぞ最後までお付き合い下さいませ~




