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3話目に伏線(郵便局員の先輩の科白)追加しています。
――気になることが多すぎる。
寝静まった夜、耕太は自分用の畳部屋で、布団に転がりながら考えた。
夕食のときに、母とまた、態度の悪い作業員の話をした。母が言っている五十代の男は、耕太が今日会った年配の作業員と同じようだった。母も自分も彼の名前は覚えていなかったが、顔の特徴を言い合って合致したのだ。
――たまたま今日は、機嫌が良かったとか?
大したことではないと思うのだが、なぜか気になった。
他にも突き詰めたいことがある。
耕太は指を折って、一件一件、課題を挙げていく。
航が薄幸町にいたとき、どんな問題を起こしていたのか。日野の爺さんに聞いてみることも考えたが、やめた。教えてくれるわけがない。
日野の爺さんが杉崎村に固執する理由も気になる。「昔住んでいたから懐かしくて」なんて、俄かに信じられない。金持ちが来るような村ではないのだ。
そして、千夏。今日休んだ理由と、航の火傷。日野の爺さんが言っていた「一緒に花火をしていた」という話は嘘だと思うが、昨日何かあったのは確かだ。花火をする時間帯、ということは夜に?
――夜、二人で会っていた?
すうっと喉元が冷たくなった。
――ずっと一緒だったんだ。生まれたときからずっと。
いつも耕太の近くにいる女の子。それが千夏だった。いつも優しくて笑顔が可愛くて、しっかりしていて、自分よりも勉強ができて――たまに耕太のコンプレックスを刺激するが、それでも一緒にいて一番安らげて、楽しい相手だった。千夏も同じ気持ちでいてくれているはずだ。
――一緒に東京行こうよ。
昨日の帰り道、耕太をまっすぐに見て、言ってくれたのに。なんで素直に「俺も一緒に行きたい」と言えなかったのか。
部屋の隅にある勉強机に向かい、引き出しから写真を一枚取り出した。
そこには、小学三年生の頃の耕太と千夏が写っている。耕太は坊主頭で、千夏はショートカットだ。
そういえば、と思い出す。
――この写真を撮ったときからだ。千夏が髪をショートにして伸ばさなくなったのは。
写真を撮影したのは、たしか、千夏が耕太の家に泊まりに来ていたときだ。
「そうだ、うちで髪を切ってた」
――なんで俺の家で?
耕太の母は美容師免許なんて持っていない。でも、彼女が千夏の髪を切っていた。切らなくてはいけない事情があったのだ。そこまで考えが巡ったあと、耕太は思い出した。
――そうだ、ボヤがあったんだ。千夏の家で。
それは小さい火事だった。部屋の一室で火が上がって、すぐに千夏の母親が消し止めた。だが、そのころ千夏のトレードマークだったポニーテールの髪の毛が燃えたのだ。
どうしてボヤが起きたのか、詳しい事情は聞いていない。
「まあ、そのことも追々」
謎が謎を呼ぶとはこのことだ。考えれば考えるほど、気になることが増えていく。
とりあえず、と耕太はメモを取る。
明日の郵便配達には、薄幸町の局で働いていた鎌田という人がやってくる。その人にダメ元で日野家の話を聞いてみよう。
配達は確実にある。きのう担任が、千夏と航に成績表を郵送している。
郵便が来るのは午前中が多い。
耕太は明日の朝、必ず郵便車が止まる村の入り口で、鎌田が配達に来るのを待つことに決めた。




