少女との出会い2
孝は少女とともに公園に赴いた。
片手にコンビニで購入したサンドイッチを持ちながら少女の話を聞くことなった。
「まず、始まりは……そうですねぇ。先月からでしょうか?友人に初めて好きな人ができたんです」
「うん」
「その好きな人っていうのはすごい人気のある人で、学校中の人気者でした。当然好意を寄せる生徒は多くて、多くのライバルが居ました」
「それで悪魔を召喚したり、魔術を使ったりしようと考えたのか」
「そうです。と言っても信じていたわけではないですけど。ただ勇気づけのために利用したんです。私とその友人は学校や市営図書館、大学の付属図書館にも行って本を読み漁りました」
「そのうちの一冊がこの本なのか」
「そうです。他の本は難しくて読めなかったんですけど、その本は平易な文章で書かれていたので中学生の私たちにも簡単に読むことができました」
確かにこの本は簡単な文章で書かれているのは確かである。しかし、そのような――人の存在を消去できるようなことができるような本であるとは思えない。
出版社が出版する大量生産された本にそんな効力があるわけがない。
前提としてそんな本がこの世にごろごろ転がっているわけがないのだ。
孝は金銭に余裕があるときは積極的に各地の古本屋を訪れ、本を漁ることもするが、それでもそんな本に出合えたことは無い――ただ一つを除いて。
孝は今考えたことをそのまま少女に伝えることにした。
「それでも、こんな大量生産された本にそんな特別な効力があるとは思えないのだけれど」
「そうですけど……それ以外で友達が参考にできた資料は無いはずなんです」
「それは分からないと思うけど。君に隠して、本を持っていた可能性だってあるじゃないか」
「その子は私に隠し事をすることは無かったですよ。いや、気づいてないだけかもしれないですけど。それでもどんな本を読んでるかを隠す必要はないでしょう」
「その本に自分一人しかその本の存在を知ってはいけないという条件があったのかもしれない」
「……そう、かもしれないですけど」
「この本は君に貸すよ。期限までに返してね。でもこの本を読むより、その友達の近辺を探ったほうがいいと思うんだ。例えばその子の家とか、学校とか、あとその子がよく行った場所に行くべきじゃないかな?友達の家の部屋とかはどうなってるんだ?」
「友達の親が私を誰だか知らないんです。だから部屋に入れてもらうことができない状況でして……」
「どういうこと?」
「友達を通して知り合った人は皆そうなんです。私を知らないんです」
「友達がいなかった世界になってるってことか。君の感覚としては」
「そうです。でも完全にそうなったわけではないんです。学校でもクラスの机が1つ余った事がありました。それは友達の分なんです。それ以外に名簿に友達の名前が載っていたりすることも見つけました」
「皆の記憶からだけ消えてる感じか。ならやっぱりその子の家に行けば何か痕跡が残ってるかもしれないな」
「でも親が止めますよ」
「不法侵入すればいいだけだろ」
「え、犯罪じゃないですか!」
「大丈夫だって、俺はもうすでに1回少年院に入れられてるけど、意外と大したことなかったし。その子を助けるために手段を選べる身分じゃないだろ」
「え、前科もちなんですか……」
「ああ、ちょっとしたことでな」
「少年院ってちょっとしたことで入れられる場所じゃないですよね!殺人とか、放火とかだったと思うんですけど」
「まぁな。ちょっとしたことだよ。それ以外でその子の家に入る方法があるのか?」
「え、ええっと。その子の妹と仲良くなるとか……」
「妹がいるのか!それを先に言ってくれよ……じゃぁ行こうか」
「今日ですか!」
「ああ、そうだよ」
孝は少女の手を強引にひいてその少女の妹に会いに行くことになった。
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