少女との出会い
暑い夏の日の昼間のことである。
とある都市に人間関係がうまくいってなさそうな青年がいた。名前は孝、九重 孝である。
孝はいつものように図書館に籠り、怪異、魔術、呪術などのオカルトの本を読んでいた。
その日読んでいた本は「悪魔の召喚法」と「悪魔とは何者であるのか」が記されていた。
孝にはそうしなければならない理由があった。
それは後々明らかになるとして、とにかく孝はそのオカルトを真剣に学んでいたのである。
孝はしかし、朝から数時間の活字を読んでいたのでさすがに疲れてしまい、息抜きをしようと本を借り、そのまま外に持ち出した。
それから昼飯でも食べようかとぼーっと考えていると孝は後ろのほうにパタパタと走りなれていない人間が走っている音が聞こえてきた。
ぼーっとしている孝であったが、孝の無意識はその音が大きく――つまり近づいてきていることを――孝の意識に知らせた。
孝は振り向き、それがなんであるのかを確認した。
それは小柄な女の子であった。
風貌から中学生ぐらいであろうかと推察されたが、それが本当かどうかは孝に分かるすべはなかった。
はぁ、はぁと息を切らせるその少女は、孝の一歩手前で停止し息を整えながら孝にこういった「あなたが借りた本を貸してほしいのですけど」と。
「なんで?。あいや、なんでですか」
孝はあとから高圧的であったかもしれないと思いなおし、なるべく親しみやすいように言いなおした。
「その、その本がないと……」
少女はうつむき、目を泳がせながら何かを言おうとして、そして黙り込んだ。
孝もしばらく黙り、少女が自分から話しだすことを期待した。自分の態度が彼女が言いにくくなる原因なのではないかと思い、にこやかにほほ笑んだ。
しかし、少女は話し出すことができないようであった。
「話しづらいこと何ですか?」
「あ、えっと……はい」
「なんで話しづらいのか聞いてもいい?」
「信じてもらえないかもしれないから」
「大丈夫、信じるよ。オカルトに関連することは、結構僕は信じているんだ」
それは、孝がオカルトを調べるに至る原因に由来した確信からである。
「本当に信じてもらえるんですか?」
「大丈夫。信じるよ」
少女はその言葉を聞いて目を活発に動かし思案したのち、話し始めた。
「じゃぁ、話します……。私の友達が、その本で悪魔を呼び出して。それで、いなくなってしまったんです」
「警察に話したのか?」
「それが。まるで友達が居なかったみたいにみんなふるまうんです……」
「いなかった?」
「はい。その子の親も、他の友達も全員忘れているんです」
「そうか」
まぁ、そうだろうなと孝は思った。
「信じてくれますか?」
少女は孝の淡白な反応に不信感を抱いたように見えた。
「信じるよ、それでこの本を読んでどうやってその女の子を救うつもりなんだい?」
「それは……まだ考えてないです。でも、行動しないと何も変わらないと思って」
「そうだね。……僕もその友達を救うのを手伝ってもいいかな?」
「え!いいんですか?でもなんで」
「……やり直し、かな?あるいは、練習。まぁあまり聞かないでくれ。これは結構重い秘密なんだ」
「え、はい。分かりました」
「……昼飯を食おうと思っていたんだ。どこかで一緒に食べないか?その友達のことも知りたいし」
「え、それは。ちょっと」
「ああ、そっか。知らないおじさんと飯なんて嫌だよな。えーっと。どうしようか?コンビニで昼を買って公園にでも行こうか」
「それなら、大丈夫ですけど」
そういうことになった。
誤字脱字があれば教えていただけると幸いです。