21.対面
ちゃお~
本日二度目の投稿。
力尽きたぜ…
パララリラリラ~パラリラパラリラ~
「勇者様の御来場でございます」
そのファンファーレに対し、俺は全力でツッコミを抑えた。
どっかの暴走したバカどもっぽいファンファーレの後に、分厚くて重厚な謁見の間の扉が開く。
最初に入ってきたのは案内役だろう。その人物が横に避け一礼のもと下がると、続いて勇者御一行が入ってきた。
先頭の人物はいかにも勇者であった。目以外は。
その目は絶対に人を信用できないと物語っている。しかし、勇者とは世界との盟約により、勇者を履行しないといけない。故に人を助けないといけない。魔王を倒さないといけない。将来生きる可能性は1/2しかない。自分でもなに言ってるかわからないが、しないといけないのだ。世界がそうなっている。そう納得すればいい。
さて、俺が一度消えてから初めての勇者だったか?元勇者だった俺からしたら…こう、なんかこれじゃない感。確かに腰に履いている武器も、名は知らないが聖剣ではある。雰囲気も実直な感想は申し分ない。なにが…ああ、絶対強者の感じが無いのか。演じているのは聖人君子か。恐らく国の上層部には、彼女がそう演じているのはバレている。上層部にもなると相手の目で大体のことを察することが必要になってくる。
それはさておき、勇者の次に入ってきたのは…パラディンだろうか。儀礼軽甲冑の勇者に対し、こちらは、俺がタンクだ!感が凄い。アホみたいなタワーシールドに叩き潰す系の大剣。そして白銀に輝く全身甲冑。正直邪魔じゃないだろうか…。ん…?こいつもしかして白い壁を意識してないだろうな?
お次は…ソーサラー?か?いかにも魔術師ですーを強調し過ぎじゃないか?なんだそのだぼっだぼの服、スッゴい動きづらそう。そして視界の邪魔になりそうなつば広のとんがり帽子を選んだチョイスは頂けない。それに警戒用の極薄の魔力フィールドすら展開してないぞ…嘘だろ…。にしてもどっかで見たな…。だぼっだぼの服、つば広の三角帽…前世初期の俺じゃねーか。
はぁ、嫌なものを見た気がする…次が最後か。最後は…ヒーラーっぽいな。スッゴい眩しい。なにがって?笑顔が。物凄い神々しさもあるな。まるで癒しの天使フィルディアのよ…う?…あれフィルディアじゃね!?あの額の聖印は確実にフィルディアのじゃん!ちょなにやってんの!…あ。
ふと目が合ってしまった。瞬間フィルディアの笑顔が固まった。
『弁解は?』
『いやほら!天使って多忙じゃん!?よって息抜きも必要じゃん!?』
『ふむ、ルナさんに報告しとく』
『やめてぇーーーー!!ルナ様だけは絶対やめてぇーーーー!!!』
『ウィルコネで叫ぶな。頭が痛い。それと俺に見つかったのがお前のミスだ』
『ああ…せっかく偽装の下着着けて活動してたのに…』
『詳しくは後で話してもらう』
『ちゃんと理由があるのにぃ…』
このやり取りの間もしっかり謁見の行事は進んでいる。が、フィルディアだけは冷や汗をダラダラしながら、青ざめた笑顔でこの場を凌いでいる。
謁見自体は恙無く進んでいく。
勇者挨拶から始まり、謁見の挨拶、各種閣僚の紹介、国王による勇者への祝福の言伝て、そして支援の目録の受け渡し等である。
そして、最後の国王による校長先生の話の3割り程しかない挨拶の後に、晩餐会が設けられていた。
マーヴ初耳である。
閣下に聞けば、話せば逃げるだろうから内緒にしていただとか。
勿論その通りだ!!
だが、ある事情によって出席は出来ない。そう、フィルディアの件だ。謁見の最中にルナさんに交神したのだが、こちらの交神に気付かない程スヤァってらした。プレゼントの安眠布団、正式名称:『爆睡保証EXレムたんマジ神ってる布団DX改』には神と言えど抗えなかったらしい。取り敢えず、直に話を聞くことにした。
「フィルディア嬢、少々お時間を方を頂戴しても宜しいか?」
「はい、構いませんわ」
元より二人の間で約束していた事だ。体面的にはシャルウィード大公の護衛が聖女にコンタクトを計ったように見えるだろう。
「では此方に…どうかされましたでしょうか?勇者様」
しかし、進路に勇者が立ちはだかった。
「フィルをどうされるおつもりですか」
「少々専門的な会話をするだけでございます。なんなら勇者様も御一緒なさいますか?」
「………ええ、ついて行きます。ライザー、私とフィルは少々席を外します」
「畏まり」
例の銀の壁(仮)はライザーという名らしい。
三人は王城のある一室まで来ていた。ここはマーヴの仮部屋である。
「中にどうぞ」
「失礼致します」
「失礼します」
二人を中に入れ自分も入りドアを閉める。そして、踵を起点に21式界絶結界を部屋を覆うように貼る。
「!!貴方!謀りましたね!!」
術式に隠蔽は入れてないので陣は普通に見えてしまう。故に勇者が術式を発動させた俺に即効で斬りかかってきた。
「!?」
聖剣は勇者に対しての悪を絶つ。それがデフォルト。だから勇者エクシアは驚愕してしまった。
悪であり、剣圧で消え去ると思った相手が、ただの掌で聖剣を止めたのだから。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
「ああ~、窮屈だった~」
「え?」
驚愕したのも束の間、守ろうとした聖女の方から間の抜けた普段ではあり得ない口調のフィルディアの声がした。
「当たり前だ。偽装の衣だったか。使ったことはないが魔力と種族特徴が抑えられると聞く」
「翼が一番きつい。あと地味に光輪も」
そこには天使がいた。
「おい勇者よ、そろそろこの物騒なもん閉まってくんね?むお?お前ゴッド・オブ・ライトって言うのか。へー、性能いいじゃん」
エクシアの目の前ではあり得ない事が起きた。勇者にしか持てない筈の聖剣をこの女?は、いつの間にか持って名も明かしてしまった。
「貴方は…一体…」
「ん?ああ自己紹介がまだだったな。名前はマーヴィラス・アルフィア。肩書きは、そうだな。君の先輩とでも言っておこうか。君の話は後々やるからそこで大人しく座っててねエクシア・カルテッド王女殿下。あ、これ返すね」
そう言ったと同時に聖剣が消え、腰に下げている剣帯に重みが掛かった。そして景色が若干遠くなりいつの間にか椅子に座っていた。
あまりの高速展開に頭がついていっていないことは自覚した。が、それよりも、此方では名乗ったことの無い、王族のファミリーネームを知っていたことに、エクシアは驚愕を隠せないでいた。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
「さて、勇者のことは置いといて、馬鹿の天使長のお前がなぜここにいる。確かに書類整理や総務に関しては残念だが、カリスマとその笑顔でマスコット天使長の座を勝ち取ったお前が天使総括庁に居ないと不味いだろう。さっき理由があると言ってたな。話せ」
「マーヴさーん、ルナさん並の圧力が~あ"あ"、これクセになりそう…≪スパァァアアアン!!≫ぐばぁ!?」
新しい扉を開きかけたフィルディアの頭を、成敗印の大型ハリセンが襲った。
「は・な・せ」
「はいぃぃいいい」
それから天使長による懺悔(?)が始まった。事の発端はソルで、勇者に監視を付けようと考えたのが始まり。誰かを送ろうと考え、バレやすい人間達は不味い。神はもっての他。ならば身近にいる天使を偽装させて送り込むかとなり、予定の空いている天使を探したが、どこも多忙すぎてダメ。そこへ偶然現れたのがフィルディア。
天使庁のマスコットであり、仕事はさせたら不味い系の人物で総務関連と書類整理は副長の二人がこなしているらしい。そこで、ちょっとした不満を抱えたフィルディアがソルのところへ赴いたところ、この件について話し合ったらしい。流石に天使庁の長が地上へ降りるなど誰も思わず、今まで隠し通せたようだ。
地上に降りてバレる最大の懸念がマーヴだったらしい。実際、ソルから数ヶ月前までマーヴがどこでなにをしているかの連絡があったが、ある時から連絡が途絶し、流れに身を任せていたら、一介の冒険者であるマーヴが入れないであろう王宮に居ることを謁見の間で知ったと。
「ふむ、統括すると馬鹿が悪いと。よし、現況が分かった。ルナさんに交神せねば。はぁ、ルナさんの気苦労が絶えねぇ…」
「はい、まことに申し訳ありませんでしたー」
「フィルディアは悪くない…が、ペナルティはあるでしょうよ。で、天使副長の二人はこの事知ってんの?」
「えー、知らないんじゃないかなぁーって」
「…………もうお前自首してこい」
「まってぇー!慈悲をー!この私に慈悲をぉーー!!」
「ええいすがるな!ちょ!これ大公家で作ってもらった特注品やぞ!涙その他で汚れる!」
「いやぁ"ぁ"ルナ様の折檻はいやぁ"ぁ"もうナイトメア・ラビリンスには行きたくなぃぃいいい」
天使長、必死のガチ泣きである。
「分かった!分かったから!!泣くな!少しだけ弁護してやるから!」
「ほんと!ホントにほんと!?」
涙で一杯になった目でマーヴを見上げた。
「ああ、少しだけだからな!」
「マーヴだいしゅきー!!」
そしてこの掌くるー。
「抱き付くな!!だがペナルティはしっかり受けろ!」
「うん分かった!」
「はぁ…」
気苦労が絶えないのは眷属も同じかと感じたマーヴであった。
「え…?これ…え?なに?」
此方は未だに処理が追い付いていないエクシアであった。
真っ白によ…
ナイトメアラビリンス→例の鬼畜迷宮の改訂版
ではばいちゃ~ノシ