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チキンとオカルトのある日常  作者: 華表 泰信
5/6

チキン 慌てる

久しぶりの投稿です。

 頭に鈍い痛みと自分の横たわっているアスファルトの硬さを感じながら俺は意識を取り戻した。


 視界には気絶する直前に見た二人の女の子が映っている。自分が気絶する前までの記憶と今の状況から、俺とぶつかったのは頭上にアホ毛の生えているほうの子だろう。


 もう一人の俺の通う高校のブレザーを着た子はアホ毛の子を追いかけていたのか?俺が気絶する前は般若の能面のような表情していたし。…ん?何か見覚えがあるような顔だけど……ダメだ、思い出せない。まあいっか、そのうち思い出すだろ。


 ブレザーを着た子は俺が目を覚ましたことにほっとした様子だが、アホ毛の子は煮物を作っていて落とし蓋を忘れて吹きこぼしてしまったときのようにあたふたしている。


 「あの、大丈夫ですか?自分が誰か分かりますか?」


 心配そうにこちらを見ながらブレザーを着た子が尋ねてくる。


 俺は制服に付いた砂利を払いながら立ち上がって答えた。


 「ああ、大丈夫。少し頭が痛いけどそれ以外は問題ない。そのうち痛みは引くだろうし、記憶もしっかりあるから。」


 「良かった、そしてすみません。私の妹がぶつかってしまって。ほら理沙、いつまでもあわあわしてないで謝りなさい。」

 そう言って彼女はアホ毛の子(理沙という名前らしい)を自分の前に立たせる。すると立たされた子は何か不思議な生き物を見るように彼女を見てからこちらを向いて頭を下げる。


 「さっきは本当にごめんなさい。」


 「別にいいよ。それよりそっちの方は怪我とか大丈夫?」


 「はい、見ての通り大丈夫です!」


 そのように言って彼女は両手を腰に当てて胸をそらす。とてもつつましやかなm…と思った瞬間に2人からの冷たい視線が俺に突き刺さったためすぐに考えることを止める。(何についてのとは言わない)

 そして、さっきはアホ毛に気を取られていて気付かなかったが、目の前に立つこの子は俺の通う高校の近く(高校のある山の麓)の中学の制服を着ていた。中学の制服を着ているからには中学生なんだろうけど、それにしても見た目が幼い。ランドセルを背負ってしまえば小学校に見えてしまいそうなくらいだ。


 「…ねえ、おにーさん。さっきから失礼なこと考えてない?」


 そんなことを考えていたため更に冷たい視線を向けられ、そっと彼女達の視線から逃れるようにして自分の腕時計を見ると余裕を持って登校できる時間ぎりぎりの時間になっていた。このなんとも嫌な空気から抜け出すために俺は提案することにした。


 「いや、考えてないよ。それより学校に向かわないか?そろそろ余裕持って登校できない時間になりそうだ。登校時間ぎりぎりで登校すると朝から精神的に疲れることになるから避けた方がいいと思う。」


 するとブレザーを着ている方が彼女自身の腕時計で時間を確認する。


 「……まあ、そうですね。ではさっさと行きましょう。」


 そう言って彼女は学校へ歩き始め、その後ろを理沙と俺はついて行く。

 俺の考えていたことについて何か言われると予想していたのだけど、意外とあっさり流したな。

誠はテンパった。あの人と学校生活の中で雑談することがあるはずがないと高をくくっていた。誠には少女とのコミュニケーションの仕方がわからぬ。誠は、ただのチキンである。


 そんな文が俺の脳内に浮かんだ。確かに、今テンパっているということ、自分から女子に声をかけるという進歩の一歩を踏み出せないチキン魂の持ち主であること、それ故に女の子との会話経験が乏しく、したがって異性とのコミュニケーション能力も低いこと、それらすべては紛れもない事実だった。


 とはいえこのまま黙っていても仕方がないので、俺はとにかく会話することにした。


 「あ、い、いや、自分も忘れていたからお互い様ですよ。俺は守宮 誠です。こちらこそ以後よろしくお願いします。」


 「……どうして、口調を変えたのです?さっきまではかなりくだけた口調でしたのに。」


 (……あ、いつもの癖で敬語使っちまった。でも初めて話す相手にタメ口は…いやでもしかし…)

 姫宮さんの表情を見て、俺のさっきまでの混乱状態が更に悪化する。一見するとただ純粋に疑問を抱いている表情だが、その中に姫宮さんはどことなく寂しさを漂わせているように見えた。最終的に俺は姫宮さんの発言と表情から口調をくだけたものにしてもいいと判断した。


 「え、えっと、その、自己紹介するときぐらいは丁寧な言葉の方がいいと思ってさ。」 (ちくしょう!なんでそこでまたテンパるんだよ~)


 そうやって自分を心の中で罵りながら姫宮姉妹の方を見ると、さっきまでのこれ以上はないというくらいの混乱状態がすぐに収まり、代わりになんとも言えない悪寒が心に生じた。二人ともまるで面白い物を見つけたような、しかもSの気が混じる眼差しを俺に向けている。


 「へぇ~、そうなんですか~」


 「それにしては随分緊張しているようにに私からは見えるよ~、ねぇ、おにーさん?」


 (……姫宮さんってこんな感じの人だったっけ?もっとこう、穏やかで優しい雰囲気だったはず…妹の方もなんか怖ぇ…このままだと自分にとって嫌なことが起こる気しかしないんだが……)


 彼女達の予想外な反応を見て俺は自分の頭の中にある姫宮さんに対するイメージ像が崩壊していくのを感じ、また、直感的に感じた嫌な予感によって冷や汗が出てきた。 自分自身で用意した今から起こす行動の選択肢は全部で4つ。


1.あまり何も考えず、なるようになる精神で会話を続行する


2.一旦落ち着きを取り戻してからこの場合一番的確だと思われる表現を模索して冷静に会話を進める


3.無理やり話題を変更し、今ある話題がうやむやになるように努力する


4.逃げる



チキン魂発動


選択――→ 4


 「いや、そんなことないよそれと朝の委員会の仕事があるから先に学校に行くわ」


 「え、ちょっとまだ話が……」


 最低限のことわりを一気にまくし立て、俺はこの場を全力で離脱した。行き詰まりそうなときはやはりこの手に限る。この後のことは学校に着いてから考えればいい。






残された姫宮姉妹はというと、


 「……ちっ、逃げられた。」


 「お姉ちゃん、素の状態に戻ってるよ。」


 「別に大丈夫よ。ここはあまり人通りが多くないから。」


 「そっか。それにしても、お姉ちゃんは学校でそんなしゃべり方してるんだ。初めて聞いたよ、そのしゃべり方。」


 「そう?慣れないとちょっとストレスがかかるけど、周りからの印象はこっちの方がいいし、しかも今私は『学校の4大美少女のおしとやか派』って認識されているみたいだから今更元に戻すことができないの。それに、かかるストレスはあれのとき(・・・・・)に発散すればいいから問題ないし。」

 「ふ~ん、そうなんだ。さすがはあっち(・・・)で『火炎の踊り子』の二つ名を持つお姉ちゃん。世渡りが上z「アァ?」イエナンデモアリマセン。」


 有無も言わせぬ威圧によって理沙を黙らせる優華。


 「そのことは口にあまり出さないって決まりでしょ。時間もだいぶロスしているからさっさと行くよ(……あの男子、さっきは逃げられたけど、どうせ学校で会うはずだから休み時間にでも必ず声かけなきゃ。彼は気づいていないふりをしてたけど、これの存在に気づいていそうだから口止めしないと)。」


 そう考えながら優華は誠がチラチラ見ていた自分の胸元を押さえた。そこにはあのペンダントがあった。


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