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チキンとオカルトのある日常  作者: 華表 泰信
3/6

とある少女の朝

相変わらず不定期です。ご了承下さい。

 体内時計によって私こと姫宮ひめみや 優華ゆうかは自然に目が覚めた。

 部屋の時計に目を向けると今は朝の4時半。

 いつもと比べるとまだ起きるには早いが、作り置きのおかずを昨夜食べきってしまったことを思い出してベッドから抜け出す。

 両親はここにいない。住んでいるのは私と妹の理沙りさの2人だけ。


 母は4年前のある事件で亡くなり、父は仕事の都合上あまり帰ってくることはなく、普段は仕事場の一角を借りて寝泊まりしている。

 しかし、父曰わく、私たちと定期的に会わないと彼にとって必要不可欠な栄養素である「ムスメリン」なるものが欠乏し、私たちに会いたくて会いたくて仕方なくなって仕事に支障をきたすらしく、少なくとも1ヶ月に1度(彼の給料日に合わせて)、多い時は2週間に1度、必ず「ムスメリン」を補給するために私たちが住むアパートに帰ってくる。


 ベッドから出て、パジャマから制服に着替える。パジャマのボタンを上から順に外していくとシンプルな作りのペンダントが手に触れた。

 首からかけているそれは楕円形の金属製の台に透明で丸みを帯びた硬いものがはまっている。そして、とても見えずらいが、その表面には5つの星が刻まれていた。

 このペンダントはある日、父からどんな時でも首からかけていなさないと言われ、強制的に持たされたもので、持たされてから一度も首から外したことはなかった。そのため必ず手に触れる着替えの時以外はそれを首にかけていることさえ忘れてしまう。

 私はペンダント一瞥してから着替えを再開した。


 着替えを済ませてキッチンへ向かい、冷蔵庫の中にある食材を確認する。

 今日の朝食のメニューは、きゅうりとニンジンの野菜スティック、ベーコンエッグ、トースト、そしてカップスープに決めた。というよりもむしろそれ以外の選択肢が料理の苦手な私にはなかった。

 かつて野菜炒めを作ろうとして調味料の分量と炒める野菜の順番を間違えてしまい、塩辛く、ニンジンやキャベツの芯に火が通っていないなんとも残念な野菜炒めを作ってしまったり、手を抜いてゆで卵を作ろうとして電子レンジの中で卵を爆発させてしまったこともあった。今でもそれは私のトラウマとなっている。

 今作っているベーコンエッグも焦げないようにするのにどれくらいかかったことやら……


 作った料理を食卓テーブルに並べ、食パンが焼けるのを待っていると寝室にしている部屋のドアを開けて理沙が起きてきた。


 「おはよう、理沙。」


 「ふぁ~、おふぁよぅおねえちゃん」


 まだ寝ぼけているみたいで目尻に涙を浮かべ、欠伸をしながら挨拶をしている。


 「先に顔を洗ってきて。それが終わったころにたぶんパンがちょうど焼けると思うから。」


 「は~い」


 そう返事して理沙はふらふらと眠気が抜けきっていない状態で洗面所へ向かった。


 予想通り理沙が顔を洗ってさっぱりとした様子で戻ってきたところでパンがこんがりといい色に焼けたことをトースターが知らせる。


 「パンに塗るのはマーガリン、ジャムどっちにする?」


 「う~、両方はダメ?」


 「魅力的だけどダメ。」


 私はそのようにきっぱりと答える。


 「何で?おいしいのに」


 「これを見て」

 

 そう言って私はマーガリンの入った容器とジャムの入ったビンの中身を見せる。どちらもあと食パン数枚分しか残っていない。


 「……少ないね」


 「そう、しかもこれを今使い切っちゃうとストックがないから明日の朝ご飯のパンに塗るものがなくなるし、買いに行くにしても手持ちのお金が非常用にとって置いてあるのと今日の私のお昼代を抜くとほとんどないの。お父さんがお給料を持って帰ってくるのは明後日だし。そもそも今月の家計がカツカツなのは理沙がこっそりお菓子とかジュースを買ってたからじゃない。」


 「う……で、でもおねえちゃんだってこの前新しいストラップ買ってたでしょ?」


 少し間を空けながらも理沙が言い返してくる。


 (仕方ないじゃない、とても可愛いかったんだもの!)


 そう思ったが、それを言ってしまうとすごく自分が大人気ないような気がして、


 「……わかったわ。私も悪かったから、今さっきの言ったことはもう言わないようにするね。で、話を元に戻すけど、どうする、パンに塗るのは?」


 「そーゆーじじょーがあってもジャムとマーガリンの両方にする。」


 結局理沙は自分の意志を曲げなかった。しかし、一応は理解してくれたようで、塗る量は控えめにしていた。


 しばらくしゃべっていたためベーコンエッグやカップスープは少し冷めてしまったけど、トーストはまだトースターの中に入ったままだったおかげであまり冷めておらず、十分美味しく食べることができた。


 食器の片付けを済ませてから洗面所で身支度を整えて勉強部屋に向かうと中から慌てた様子の理沙がリュックを背負って出てきた。


 「き、今日は日直だから、行ってきます!」


 「ちょっと待ちなさい。」


 そう言って私は理沙を捕まえる。それから部屋の中を見て何故理沙がこんなにも慌てているのかを理解した。

 私の勉強机の上には私の大切にしていたポスターが破れた状態で置かれていた。


 「……何か言うことは?」


 「えっとー……破けちゃいました。ごめんなさいっ☆」テへペロッ


ブチッ


 その反応を見て自分の頭のどこかで何かが切れた音を聞いた。


 「そ~う、そういう反応するの。これは少しきつめのお仕置きが必要みたいね。」


 そう言って私が手のひらを上に向けて手から炎を出す(・・・・)。

 するとリュックをつかんでいる手がビリッといきなり痺れてそれから手を離してしまった。

 急いで玄関に向かう理沙を見ると髪の毛が茶色くなり(・・・・・)、その頭のてっぺんから生えるアホ毛が帯電していた(・・・・・・)。


 「行ってきます!」


 「行ってきますじゃないでしょ!待ちなさい!!」 前日に用意していた学校用の鞄を片手に戸締まりもそこそこにしてマンションを出て理沙を追いかける。

 理沙の通う中学校は私の通う高校の近くにあるため私と理沙とで通学路は変わらない。そのおかげで今理沙を追いかけても通学には支障がない。

 抜け道の小路に入るところで理沙に追いつきそうになったので、思わず声を発した。


 「待ちなさい!今ならその頭のてっぺんから生えてるアホ毛を焦がすだけで許してあげるから!!」

ここまで読んで下さりありがとうございます!

これからもよろしくお願いいたします。

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