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ルート

この作品を親愛なる友人頃音に捧げる。

『From:琴音 本文:おはよ 昨日の風邪はもう平気?今日は九時半に一般公開開始だよ』


 ケイタイのメール画面。その下にある時刻は十時半を少し過ぎたころを表示している。すでに日は高く、じんわりと汗ばむ気温になっていた。


 家には人の気配はない。シンッと静まっており物音一つなく、外からやかましい蝉の声が聞こえてくる。学校は文化祭でも世間一般的にはごく普通の平日だから当然のことだ。


 琴音からのメールを読み直す。行く気はなかったが人から借りたままのギターが気にかかる。せめてギターだけは回収したかった。憂鬱の種は早く片付け、最初から何もなかったことにしたい。そうだ、そうしよう。


 思考がまとまりようやく俺は布団から出た。

 寝癖に水をつけ、Tシャツにジャージというラフな格好に着替える。今日は文化祭だし服さえ着ていれば文句を言われることもないだろう。髪を染めることもなく目立った悪事も起こしたことはない。かといってスポーツや勉強で目立ったこともなかった。そんな無個性な俺が制服を着用せずにぶらぶらしていたところで、目をつけるモノ好きもいないだろう。


 朝食はいらない。昨日も何かを食べた記憶はないが空腹を感じなかった。キッチンを横目に玄関に向かい、くたびれたスニーカーを履く。外の日差しが差し込む玄関は暑く、外の炎天下が予想された。仕方なくジャージの袖をひざ下まで捲りあげる。ポケットに鍵とケータイを突っこみ家をでた。


 本日も快晴。いっそ雨でも降ってくれればよかったのに。雲ひとつない空に悪態をつく。

 暑いのは嫌いだ。とにかく鬱陶しいうえ、汗をかけば気持ち悪い。

 重い足を前へ前へと進め学校を目指す。目的地がいつもの何倍も遠くに感じた。一昨日までは重いギターを背負って歩いた道だが、足取りは軽かったハズだ。まったく、なんで俺はこんな目にあっているのだろう。俺は何も悪いことをしていないのに。

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