51.真夜中の出来事
街の宿屋。
図書館から借りてきた本は、街の外に持ち出すのは禁止だが、街の中なら図書館から持ち出してもいいらしく、アルファルド君が探してきた何冊かの本を私達は宿屋へと持ち込んでいた。
ベッドの上、それを撒き散らす。
「…読めない」
アルファルド君が借りてきた本は、ほとんどが文字主体で私には理解不能だった。挿し絵がちょこちょこあるのでそれだけパラパラと見る。
「お前は何か見つけなかったのかよ」
「イベント本なら見つけた」
いべんと?と首を傾げるアルファルド君が借りてきた本は七冊。全て勇者魔王の話の本かと思いきや、魔導書チックなものまであるらしかった。
「アルファルド君、魔法使えるの?」
使っている場面など一度も見なかったが。そう聞くと、アルファルド君が私をじっと睨んできた。
いや、まぁ、私は使えるけども。
読めないし。
その後はやはりアルファルド君が一人で読書と相成った。私はベッドでごろごろ。
魔王城にもベッドはあったが豪奢過ぎてなかなか寝付けなかった。ここのベッドは質素で、ふかふかでもなければ、ビラビラといらないものが付いているわけでもない。
かなり居心地はいい。
「やっぱ庶民には庶民な物が一番だ」
硬いベッドでごろごろしながら隣のベッドに座って本を読むアルファルド君を見る。じっと見る。他にやることもなく、じっとじっと見る。じーっとじーっと見る。
「…私、一人でイベント消化して来ようか?」
「だからいべんとって何だ」
暇だった。
結果、本からは何の手がかりも掴めなかった。勇者と魔王の話はただの勇者と魔王の話、だった。
私も魔導書チックな本を頑張って読んでみようと努力はしたのだが、いくら努力した所で読めないものは読めない。読めないんです。どうやっても。
晩御飯を食べ就寝。
私に、アルファルド君と一緒の部屋で寝ることによってのドキドキなんてものはなかった。だって今まで普通に隣で寝てたし。見えなかった時も見えるようになってからも野宿の時も普通に隣。
一緒の部屋。
隣どうしのベッド。
今更すぎる。
逆にベッドがある分距離がある。
「じゃあ、おやすみー」
そう言って私達は眠りについた。
深夜遅く。
私がふとまだ眠い目を開けると、そこには隣のベッドに座りこっちを見ているアルファルド君がいた。
私の寝顔なんか見ても面白くないだろうに。
「…あるふぁるどくん、どーしたの?」
眠い。
私は半身を起こしアルファルド君に訊ねた。眠いよ。私はまだ眠い。欠伸をする。
まさか、庶民ベッドがここまで私の睡眠欲を刺激するとは。
「…別に」
アルファルド君はそれだけ言って自身のベッドに潜り込んだ。こちらに背中を向けて横になってしまったので、私からはアルファルド君の背中しか見えなくなってしまった。
何なんだ。
そう思いつつ、やはり眠かった私は自分もベッドに潜り込んだ。
その後、やはり起き上がったアルファルド君がじっと私を見ていたことに、深い眠りについた私は気付くことはなかった。
翌朝。
いつも通り普通のアルファルド君に、私は特に何も聞くことはしなかった。
「アルファルド君、どうしようか」
これからどうするか。
本で調べられなかったのだから、多分その辺にいる人に聞いて回っても多分手がかりなど掴めないだろう。
異世界人が元の世界に帰る方法など、人に聞いて分かるものでもないような気がするが。
「宿屋の奴らが話してたこと、覚えてるか?」
「話?」
アルファルド君言うところの話、とは。
ここから少し北に行った所にとある小さな村がある、という話。その村には地下へと続く秘密の通路があって、その地下通路を進むとその先に、願いを叶えてくれる信者がいる、というファンタジー感むらむらな話。
そんな話を宿屋に泊まっていた他の客がしていたのだ。
「アルファルド君、信じてるの?」
話をしていた人達は、面白半分に話していた。酒の魚に面白話、だ。空想、創造、夢うつつ。あれが、真実な話だとは信じられない。
村があるかどうかも怪しい所だ。この世界ならありそうだけど。
村にはここから二、三日ぐらいで着く、と話していたっけ。
「アルファルド君、信じてるの?」
もう一度聞く。
「それぐらいしか、他に行く所もないだろ」
「…まあ」
その通りだ。
私達はその村に行くことになった。地図にも載ってないらしいので、行く、といっても着ける気はしなかったが。
アルファルド君の方向音痴で、結局あまり着ける気はしないんだけど。
私が元の世界に戻る方法。
ブカに聞ければ早いのだが。
本当にそう思っていた。




