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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編 Ⅱ
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長き計画

 「本気を出す・・・だと?」


 この言葉を聞きアレス、デメテルは失笑した。柱に張り付いたものの、大したダメージなどない彼らはすぐに反撃に移行することができた。もちろん破壊神にしてもダメージは見られない。互いが様子見といった感じではあるが十六善神と破壊神の間にどれほどの戦闘力の差があるというのだ。しかも三人の十六善神を相手に差などあるわけがない。


 「では始めるかの・・・・こおおおぉぉ~~。」


 破壊神の腰を落とし力んでいる姿に爆笑するアレス達を見て落胆しながらも破壊神は闘気を開放していくのだが数秒後に彼らは戦慄を味わうことになる。破壊神は黒玉、藍玉そして瑠璃色玉を頭上に配置すると極限まで闘気を高めていくがそれは強固に造られたデスサイドが崩れ去れそうなほど強力な闘気だった。


 「・・・老体のくせになんて闘気だ!」


 「アレスよ、驚くのはまだ早いぞ。」


 破壊神の胸元に輝く暗黒色の共鳴石が鈍い光を放った瞬間、辺りを包んでいた闘気はなくなり静けさが空間を支配した。背中に流れる冷たい汗を感じながらもアレスはその場から動くことが出来なくなっている。その静けさに戦慄を感じたのではない、アレスの目前にいる破壊神からはピサロにも匹敵する闘気がみなぎっていたからだ。老体の破壊神はそこには存在せず若くビルトアップされた肉体からは美しささえ感じられた。


 「うぅぅ・・・・」


 恐怖を押さえ切れなかったデメテルは鋭い爪を光らせた。本能的に防衛本能が働いたのであろう。その姿を確認した破壊神はゆっくり右手を差し向けた。突然出現した流星群が放射状にデメテルの頭上に降り注ぐとその皮膚を切り裂き、肉に突き刺さり貫通すると大理石の床に押し込まれていく。容赦のない流星群が降り注がれるとデメテルの身体は血と肉片を残し陥没した大理石の床に埋まっていた。肉片からはもはやデメテルと確認することはかなわない。アレスは恐ろしさのあまり腰を抜かしてその場に座り込んだ。


 「・・・・四神・・・・白虎・・・」


 「アレスが白虎の存在を知っていたとはな。ならば恐ろしさも分かっていよう。」


 「グッ・・・」


 恐怖に支配されたアレスは破壊神に攻撃を仕掛けることなど頭になかった。それどころかこの場から生きて逃げられるのかも分からなかったからだ。だがフェイクは違う。再び身体を伸ばすと両腕と頭部が破壊神に襲い掛かった。フェイクの頭上に流星群が降り注がれるが液状化したフェイクの身体はそれに対してなんらダメージを受けることはなかった。


 「我には効かぬ!」


 「フム・・・液体に流星群は効かんか。ならばこれはどうだ?」


 流星群による攻撃を止めると破壊神は両手を合わせた。闘気をためた両手をフェイクに向けた瞬間、フェイクの目前に小さな黒い球体が現れた。黒い球体は半分に割れて内部から無数の光りが現れるとすべてを飲み込むように吸い込こまれていく。もがきながら必死に抵抗するがフェイクが球体に吸い込まれていくのにそう時間はかからなかった。完全に吸い込まれたフェイクの姿は破壊神やアレスからは見えるがフェイクからは見えないようだった。深い暗闇の空間をフェイクは警戒しながら辺りを見渡している。破壊神が指をパチンッと鳴らすと球体は少しずつ縮んでいく。フェイクは身体を伸ばそうと必死の抵抗をするが抵抗虚しく身体は縮んでいく。


 「ワシのブラックホールでは生きるも死ぬも叶わぬ。」


 破壊神の創りだしたブラックホールの中で身動きできず球体の中の小さな液体の塊となったフェイクは死ぬことも生きることもなく永遠と彷徨うしかない。再び破壊神が指を鳴らすとブラックホールは消えて三人もいた十六善神はアレスのみとなってしまった。近づいてくる破壊神に恐怖から動くことも出来ないアレスはガクガクと震えることしか出来なかった。


 「アレスよ、最後に言い残す・・・・・ガブッ!!」


 アレスの目前で破壊神が吐血した。大理石の床に膝をつき苦悶の表情を浮かべる破壊神の姿にアレスは歓喜の声をあげずにいられなかった。


 「ハッ、ハッハッ・・・

  どっ、どうやら長きに渡る計画が今、実を結んだようだぞ!」


 「・・・・?」


 「フェイクの努力が実を結んだ瞬間だ!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 破壊神が閻魔大王に勝利して地獄道を統括することはピサロには想定内だった。次の一手を投入する時が来たと感じたピサロは小瓶を取り出すとそれをフェイクに手渡した。


 「フェイクさん、あなたにお願いがあるの。デスサイドに潜り込み破壊神に毒を盛ってくださらない?でも一気に飲ませては駄目よ。この粒子を少しずつ・・・どれだけ時間が掛かっても構わないわ。ゆっくり、ゆっくり・・・破壊神の体内に積もらせてあげてね。あっ、そうそう。破壊神は相手の思考を読み取る事が出来るのよね。あなたならその辺は大丈夫だと思うけど気をつけてほしいわ。」


 フェイクはドロドロの液体になると床を流れるように移動していった。フェイクがデスサイドに潜り込む事は実に容易なことであった。気配もそうだが思考自体消し去ることができるフェイクがまず行ったことはメイドババアを殺すことであった。数週間ほどメイドババアを監視し、行動、口癖など事細かに観察していく。行動パターンを把握したフェイクはメイドババアを暗殺しその遺体をドロドロの液体で取り込んでいく。姿形を完全にコピーしメイドババアになりすましたフェイクは食事の時間、破壊神に毒を盛っていく。ピサロに言われたとおりに小瓶に入った毒の粒子を盛って・・・・。相手の姿だけではなく思考や仕草もコピーできるフェイクを破壊神は何も疑うことなく長き歳月の間に毒を体内に積もらせていった。毒を盛られた破壊神には異常は見られなかった。しかし今になってその異常が破壊神に現れたのだ。


 「どうやら俺は軍神に愛されているらしいぞ。」


 アレスはこの時ほど神に感謝した事はない。闘気を最大まで高めるとその衝撃が毒に犯された破壊神の内臓にビリビリと響いてくる。吐血は止まらず激痛に耐えながらも破壊神はアレスの次なる攻撃に備えた。


 「冥途の土産に教えておいてやる。リディーネには四天王最強の使い手、ケインを刺客として送っておいた。親子共々仲良く死ね!アッ、ハハハハハ!!」


 「アレスよ・・・ワシもおまえに一言ある。おまえのその戦術予想だが・・・・いままで当たった試しがないよの!」


 「・・・貴様・・・殺してやる! 茶玉最大闘気 ガイヤ!!」


 ガイヤの発動に足元の大理石が砕け落ち破壊神は体勢を崩した。不安定な体勢のところに菜の花色玉最大闘気 ブレストイレイザーが放たれた。巨大な菜の花色の波動砲は破壊神を包み込んだ。激しい光と共に菜の花色の波動砲が消えるとアレスは破壊神の姿がないことを確認して勝利に口元が緩んだ。地獄道最強の破壊神を打ち負かし勝利の余韻を噛み締めている。


 「勝った・・・あの破壊神に勝ったぞ!俺が最強だ!ハッ、ハハハ・・・ハッ?」


 大笑いしているアレスは背後に巨大な圧力を感じ振り返った瞬間、アレスの視界に巨大な隕石が映った。防ぐ間もなく大理石を破壊しながら轟音と共に隕石は地中深く沈んでいった。静けさが辺りを支配するとそこにブラックホールが現れて中から破壊神が出てきた。


 「やはり当たった試しがなかったの・・・さて、老体にムチ打ってもうひとふんばりかの。」


 破壊神は再びブラックホールに入ると城内から姿を消した。再び静けさが辺りを支配していると地中深くから一閃の細長い菜の花色の粒子砲が撃ちあげられた。隕石を破壊したアレスはガクガクした膝を押さえながら立ちあがった。


 「まだだ。俺はすべての頂点を手に入れる。

  ゲホッ・・・くそったれ、諦めんぞ!!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 もうひとつの戦闘は激しさを更に増していた。激しい剣風が地面を斬り裂き応援に駆けつけた師団兵ですら容易に近づけない。桜色の半球体の防御壁がタカヒト達を剣風から守っているがそれも長くは続かないほどミカは限界に近づいている。イザークはケインから距離を取ると短剣を鞘に収めた。


 「勝てぬと命乞いか?」


 「別の場所で戦おう!」


 「・・・貴様、余裕だな。

  俺との戦いに集中していないな?ならばこれならどうだ?」


 向日葵色の刃がミカのレインボーウォールに突き刺さった。これにより理力を失うと同時にミカ達の命も失われる事となる。激しい衝撃にミカは悲鳴にも近い声をあげ、ニヤリと笑みを浮かべるケインにイザークは眉をひそめながらも二刀の短剣を再び鞘から抜いた。「時間がない!」とイザークは翡翠色の理力を放つと短剣に輝きが集中する。短剣の攻撃力を増したイザークは斬撃を仕掛けるがケインは神剣サリタリオンで受け流すと今度はケインの突技が炸裂する。イザークは紙一重でかわしながらも黒いコートに数箇所穴が開いていく。やはり剣術ではケインが一枚も二枚も上をいっていた。勝てぬ相手を前にミカの理力の限界・・・イザークに選択の余地は無かった。イザークは理力を高めると激しく短剣を振り回した。剣風が辺り一面を斬り裂き、それはケインにも襲い掛かった。それに対抗するように向日葵色の闘気をまとい、剣風をかわすとケインは神剣サリタリオンを振りかぶりイザークにそれを振り下ろした。


 「ぐうっ!」


 短剣を頭上で交差させて受け止めるもイザークは膝を地面につき、剣風に頬を切り裂かれた。鋭い眼つきでケインは押し潰すように神剣サリタリオンをイザークの顔に近づけていく。


 「くっくっくっ、イザークよ。死を迎えるというのはどんな気分だ?」


 「なにやら勝利を確信した顔をしているようだが・・・私のポリックとしての最後のマジックを見るがいい!!」


 「・・・!」


 イザークの言葉にハッとしたケインはミカのいる方向に視線を向けると先ほどまで突き刺さっていた向日葵色の刃がそこには無かった。イザークの放った剣風はケインを狙ったものではなくミカのレインボーウォールに突き刺さった向日葵色の刃を狙ったのだった。刃の危機は去ったがそれと同時にミカの理力も無くなり無防備な状態になってしまった。依然、イザーク、ミカ達の劣勢は続いている。ケインはイザークからミカに標準を変えると理力のないミカに襲い掛かった。しかしイザークは瞬時に回りこむとケインの前に立ち塞がりその一撃を受け止めた。


 「くっ、くっ、くっ、イザーク。

  俺の刃を弾いたのは見事だが事態はなんら変わらんぞ!」


 「それはどうかな?」


 笑みを浮かべるイザークに再びケインはミカの方向に視線を向けるとそこには倒したはずのタカヒトが意識を取り戻していた。イザークのポリックとしてのマジックはケインの刃を剣風で撃ち落すだけものではなかった。剣風にのせてルキイの実をミカに渡すことが最大の目的だった。天道にしか存在しないルキイの実は瀕死の重傷からすべてを回復させる夢のような薬なのだ。ポンマンが放浪の旅で生き長らえて来たのもこのルキイの実のおかげなのだ。だがその実もこれが残りの最後であり最後の実は最後の希望であるタカヒトに与えられた。  


 「タカちゃん、もう駄目かと思ったんだよ

  ・・・良かった・・・生きてて良かった。」


 タカヒトは事情があまり理解出来ていないらしくミカが涙を流して抱きついているのが妙に恥ずかしかった。ミカにすべてを聞きケインに敗れたことは憶えていてそのケインと同じ顔をしたイザークが実はポンマンだと教えられた。しばらく理解出来なかったがイザークがポンマンだと納得した。そしてタカヒトは自分の持っている最大限の力を開放した。


 「ポンマン、僕も戦うよ!!」


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