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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編 Ⅱ
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最強のケイン

 「お前達は師団の者ではないな。ということは敵・・・だな?イブリースとまではいかなくても少しは楽しませてほしいものだ。」


 か細い長剣をタカヒト達に向けると歩み寄ってきた。戦慄を感じながらもてんとは理力を高めて球体を発生させるとケインの歩みを妨害する。薄っすらと笑みを浮かべたケインはか細い長剣を軽く振るうと三つの球体を斬り落とした。あり得ない出来事にてんとは困惑の表情を隠しきれなかった。球体は弾性力があり、どのような攻撃をも受け流すことが出来る。その球体を真っ二つに斬り裂いたケインの長剣と剣術は恐ろしいものだった。戦意を喪失したてんとは激しい激痛を感じると目の前が真っ暗になり意識を失った。


 「てんと!」


 倒れたてんとにはタカヒトの叫び声も聞こえない。意識のないてんとの横を通りすぎるとケインの目の前にリディーネとデュポンが立ちふさがった。


 「デュポン、いくわよ!紅玉・風の精霊、複合技 ファイアーソルジャー!」


 風の精霊デュポンにリディーネは紅玉上級闘気朱玉を浴びせた。激しい火炎風を発生させ炎の戦士と化したデュポンの攻撃力は著しくあがり身体もふたまわりほど大きくなっていく。ケインを見下ろすデュポンは両腕から竜巻状の火炎を発生させた。か細い長剣でそれを受け止めるがケインの足元は地面にめり込んでいく。


 「一気に蹴散らすのよ!」


 リディーネの甲高い声がケインに届くとため息をついた。ケインは腰を低く落として力を溜めると竜巻状の火炎を一気に斬り裂いた。驚愕したデュポンではあるが斬り裂いたのは火炎だけではなかった。炎の戦士であるデュポンをも真っ二つに斬り裂かれた。


 「グガガガ・・・・あっ、姉さん・・・」


 目を見開きリディーネは走り近づくとそこには弱々しく意識の無くなりつつあるデュポンが倒れていた。


 「デュポン、しっかりして!」


 ケインは意識のないデュポンを介抱しているリディーネに歩み寄ろうとすると雷撃が行く手を阻んだ。


 「ほう、今度の相手はお前たちか?」


 雷撃をか細い長剣で受け流すとケインはゆっくりと視線を移した。リナとミカそれに赤紫タカヒトが涙を流しているリディーネの前に立ちふさがる。


 「ヤツに最大級の攻撃を浴びせてやる。リナ、ミカ、サポートしてくれ!」


 赤紫タカヒトは最大限まで闘気を高めていく。ケインはそれに気づくと阻止すべくか細い長剣を振りまわすと刃風を飛ばしてきた。ミカがレインボーウォールを二重に発生させることでそれをなんとかしのいでいく。


 「牡丹玉ハイエレメント インドラ!」


 リナの放った雷撃をケインは片手で受け止めた。だがこの攻撃もケインの手のひらをほんの少し火傷させた程度であった。ケインの素早い動きに反応できないリナは腹部にか細い長剣の柄が突き刺さる。


 「ふうっ!・・・・」


 その場に倒れたリナから視線を赤紫タカヒトに向けるとレインボーウォールに覆われたふたりの姿を確認した。ミカの精一杯の理力で創られたレインボーウォールをいとも簡単に斬り裂くとガラスのように粉々になった。


 「どうだ、準備は出来たか?」


 「俺様の攻撃を待っていたとでも言いたいらしいな。どけ、ミカ!コイツに俺様の最大級を喰らわせてやるぜ!」


 赤紫タカヒトは赤色の闘気と紫色の理力を最大まで高めた。その身体は周囲を取り巻くように激しく輝いている。赤紫タカヒトは両腕をケインに向けると一気に力を開放させた。


 「赤紫玉最大闘気 複合技 テラアルティメットバスター!」


 紫色の波動に赤色の大火炎が取り巻きケインに激しく突き刺さった。最大級の攻撃に対してケインも向日葵色の闘気を高めるとか細い長剣が向日葵色の輝きを放ち始めた。テラアルティメットバスターを受け止めていた向日葵色のか細い長剣の剣先をそれに向けると真っ二つにテラアルティメットバスターは斬り裂かれた。


 「なんっ、だと!」


 驚愕する赤紫タカヒトは更にエネルギーを放出させるがテラアルティメットバスターを斬り裂きながらケインはゆっくりと近づいてくる。完全にエネルギーを放出しきって蒼ざめた表情を浮かべる赤紫タカヒトの前に向日葵色の闘気をまとったケインがいた。


 「残念だったな。いい線いっていたが・・・・相手が悪すぎた。」


 向日葵色のか細い長剣を振り下ろすと赤紫タカヒトはドサッと地面に倒れた。あり得ない光景にミカの泣き叫ぶ声だけが辺りに響いた。


 「タカちゃん、タカちゃん!」


 動かなくなったタカヒトの身体を揺すりながらミカは懸命に呼びかけた。反応を示さないタカヒトの胸元に顔を埋めて泣き出すミカを冷酷な表情で見下してしているケイン。剣先をミカに向け突き刺そうとした瞬間、ケインの背中に衝撃が襲った。ゆっくりと後ろを振り返るとリディーネが両手を前に紅玉闘気 業火を放っていた。


 「デュポンの仇とらせてもらうわ。紅玉最大闘気 獄熱地獄!!」


 巨大な火炎輪が上空より落ちてきて辺りのすべてを飲み込んだ。瞬時にミカはレインボーウォールを張り巡らせてタカヒトやてんと達の身体を包み込んで守りぬいていた。ケインは防御することもなく上空より落ちてきた巨大な火炎輪が直撃した。すべてを焼き尽くす紅玉最大級の攻撃 獄熱地獄にレインボーウォールに包まれた場所以外は跡形もなくなっていた。完全に闘気を開放しつくしたリディーネは輝きを失うと地面に座り込んでしまった。


 「どっ、どう、ミカ・・・アタシ勝ったよ!

  デュポンの・・・皆の仇、アタシ取ったよ!」


 疲れた表情ではあるがその笑顔が勝利を得た証であった。ミカはリディーネに走って近づくと座り込んでいるリディーネを抱きしめた。リディーネに肩を貸して立ちあがると焼き尽くされた大地を見回してふたりはただ呆然としている。途方に暮れるミカの視界に白いコートを羽織ったケインが映った。有り得ない光景にミカは一瞬、固まってしまった。


 「あ・・・あああ・・・」


 ミカ以上に衝撃を受けたのはリディーネだった。落胆と驚愕そして恐怖にガクッと膝を落とすと再びその場に座り込んだ。もやは余力などなくケインに勝てる要素などない・・・ただ死を待つだけだった。


 「なかなかの攻撃ではあったが・・・この程度か。最後に言い残すことはないか?」


 か細い長剣は向日葵色に輝きを放ちケインは最後の一撃でふたりを始末するつもりだった。腰を低く落として剣先をミカ達とは逆に向けて剣先が見えない態勢を取った。戦慄を感じながらも諦めに近い表情をしているふたりは抱き合いながら恐怖を紛らしていた。死を覚悟したミカは神に最後の祈りをした。


        神様、お願いします。死んだタカちゃんと同じ場所に・・・

       またタカちゃんに会えますようにお願いします。


 ケインの姿が近づいてくるのをスローモーションのように見えてしまったミカは瞳を閉じてその恐怖から逃れようとした。「キイィィ~ン」とミカの耳に金属音がハッキリと聞こえてそれからしばらくの間、沈黙が辺りを支配した。沈黙を打ち消したのは聞き覚えのある声だった。


 「もう大丈夫だよ。」


 ミカが瞳を開けるとぼやけてポンマンの姿が見えた。ポンマンは短剣を両手に持ちケインの一撃を受け止めていたのだ。ケインは驚愕した。最大級とまではいかないにしてもケインの斬撃を受け止める者などそうはいない。ケインは距離を取るとポンマンを異常に警戒していた。へのへのもへじのマスクにマント姿のポンマンは間抜けな姿をしていたがケインは警戒を怠らなかった。ミカとリディーネもその勇士に驚いている。実際、ミカもリディーネもポンマンの事をあまり知らない。補助的なことしか戦いに参加したことのないポンマンの本当の能力はどのようなものなのか。ミカ達は今それを知ることとなる。驚きでいっぱいのふたりにポンマンは笑顔で答えた。


 「僕がいるから安心して!」


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