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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編 Ⅱ
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最強剣術VS最強の炎

 「久しいものだな・・・千年ぶりか。」


 「荒々しさは相変わらずか、ケインよ。」


 天道軍が若干おしている状況下、最前線の上空では十六善神の四天王であるケインと地獄一と言われる五大鬼神のイブリースが偶然出遭ってしまった。このふたりは千年前の天道軍と地獄軍の大規模な戦争でも顔を合わせている。若き剣術者のケインと火炎使いイブリースは三日三晩寝ずの戦いを繰り広げていたが結局決着はつかなかった。だが千年の時を経てふたりは大きく成長した。お互いが自分の成長を見せたいと思う。ケインはか細い長剣を取り出すとイブリースは薄色の闘気を高め、笑みを浮かべる。


 「千年ぶりの決着をつけようぞ。」


 「どちらが最強かを決めねばな!」


 戦闘開始の合図にイブリースが薄色の炎玉を投げつけるとケインはか細い長剣で投げられたリンゴを刺すように軽く突き刺した。それを剣先でクルクルを回すと再びイブリースに投げ返した。投げられた炎玉を弾き飛ばすとイブリースは一気にケイン目掛けて攻撃を仕掛けていく。最強対最強の戦いはこうして開始された。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 一方、てんと達は破壊神から渡された言霊をアスラに届ける途中だった。そこにアレスが上空より降下してきた。アレスは三獣士のひとりであるがいままで散々な目に遭わされた敵でもある。


 「そんな目で見るなよ。今は味方だ・・・ところで何処に行くつもりだ?」


 「・・・・アスラへ伝言を預かってきた。」


 「ほう、それなら間に合ってよかった。作戦本部は戦況の悪化により

  位置を変えたんだ。すれ違いにならずによかったな。」


 「・・・・」


 てんとはその言葉を疑ったが破壊神の娘であるリディーネを陥れることもないだろうとアレスの言葉を信じた。教えられた方角へてんと達は向かっていくその後姿を見ながらアレスはニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。歩いていくと次第に戦闘も少なくなり、アレスの言った通りアスラのいる作戦本部は移動したのだろうと信じたくなるように辺りは静かになっていた。


 「いくらアレスといろいろ遭ったからって疑っちゃあ悪いよね!

  ・・・・ってあれ何?」


 「くっ、やはり罠か!」


 ポンマンが驚いて指をさした方向には天道軍の第一・第四・第六師団の大軍が周囲を取り囲んでいた。アレスの罠と動揺したてんとが理力を高めて臨戦体勢をとるが師団の大軍はどうやらてんと達には気づいていないようだ。


 「あれだけの師団が何に気を取られているのだ?・・・・・むっ、あれは!」


 大軍の中心にはケインとイブリースが対峙していてそれを見守るかのように師団の兵士達は微動だにしない。ふたりの戦いは少しではあるがイブリースが押しているようだ。か細い長剣を地面につけて苦悶の表情を浮かべているケイン。白いコートは血だらけになりケインの不利はあきらかだった。


 「どうやら、俺のほうが最強の称号に相応しいようだな!」


 「ハアハアハア・・・ガフッ!」


 疲労を隠せないケインは口から血を吐き出すと苦悶の表情を浮かべている。勝負は一瞬の出来事だった。イブリースはケインに近づきながら炎玉を放つとケインは紙一重でそれらをかわしていく。イブリースの鋭い右手の爪が襲い掛かるがそれすらケインは紙一重でかわした。驚愕するイブリースの胸にケインのか細い長剣が突き刺さる。笑みを浮かべるケインであったが次の瞬間それが幻影だと分かった。


 「くっ、幻影!!」


 ケインは後ろに殺気を感じて反応するがすでに遅くイブリースの鋭い右手の爪がケインの背中に突き刺さった。イブリースは突き刺した右手に火炎を出すと地獄の炎にまみれたケインは地面に落下していく。押し潰されるように激突したケインは地面にめり込んだ。


 「ぐうぅぅ~げほっ!」


 血を吐き、膝をガクガクさせながらも、か細い長剣を支えになんとか立ちあがることが出来たケインであるがもはや決着は着いている。


 「さて、トドメをさしてやろう。それが宿敵に対する礼儀だ。」


 「・・・イブリースよ。そんなに物事がうまくいくと思っているのか?」


 次の瞬間イブリースは自分の目を疑った。息を切らし白いコートを血だらけにした瀕死のケインはそこにはおらず右手にか細い長剣を持ったケインが白いコートを汚すこともなく立っていたのだ。ケインの姿に敗北感が漂っていた天道軍の師団も歓声をあげて喜んでいる。イブリースのみではならず師団の兵士達もケインの幻影に騙されていたのだった。烈火の如く激怒しているイブリースは薄色の炎を両腕に溜めると地上にいるケイン目掛けて一気に放つ。怒涛の火炎攻撃はケインのみならず周囲にいた師団の兵士達にも飛び火した。

 ミカの機転によりイブリースの飛び火をなんとか防ぐことが出来た。だが天道軍の第六・第四師団はほぼ壊滅状態であった。怒涛の火炎攻撃は黒い煙と砂埃を発生させ全てを覆い隠しケインがどうなったのかは全く分からない。黒い煙と砂埃が薄っすらと消えかかった頃、埃ひとつない白いコートを身にまとったケインがそこに立っていた。


 「なっ、何故だ?・・・・何故攻撃が効かない!」


 「何を驚いている?私に対して何かしたのか?」


 イブリースは奥歯を噛み締めた。ケインへの火炎攻撃は決して手を抜いたものではない。だが明らかになった事がひとつだけある。それはケインとの実力の差だ。


 「おまえにいいものを見せてやろう。」


 上空に浮遊しているイブリースにケインは剣先を地面に押し当てると自分を中心とした円を描き始めた。円を描き終えると自らの胸元に剣先を押し当てそれを押し込んでいく。自殺とも取れるその行為はイブリースを驚かせるのに十分すぎた。


 「フフフ・・・自殺したとでも思ったか?これは儀式だ。おまえと俺との差を冥土のみやげに見せてやろう。本当の恐怖を!」


 ケインの胸にどんどん長剣が突き刺さっていくがそれは背中から突き抜けることは不思議となかった。長剣の柄がケインの胸に入っていくと地面に描いた円から円柱状に向日葵色の光が放たれた。その光にイブリースが眩しさのあまり目を覆った。眩しさもおさまり目を開けた瞬間イブリースはいままで見たこともない光景を目の当りにすることとなる。イブリースの目に映ったものは巨大化したケインの姿だった。驚愕しているイブリースを瞬時にケインはその巨大な右手で捕まえるとそれを握り絞めた。


 「くそっ、離せ!グギャアア~!」


 イブリースの身体中の骨が折れる音が鳴り響くとケインは嬉しそうな表情を浮かべていた。イブリースも地獄の火炎を繰り出して必死の抵抗を試みるがケインにはダメージを与えることが出来ない。身体は粉々に砕かれ、口からは大量の血を吐き出したイブリースにもはや戦闘の意志はない。

 攻撃の手を緩めることもなくケインは右手を更に握り絞めるとその拳からなにかの塊が地面に落ちていった。地面にイブリースの頭がコロリと落ちるとケインは握り締めた拳を緩めた。緩めた拳から頭のないイブリースの胴体が地面に落ちていった。ケインが元の姿に戻ると足元にイブリースの頭が転がっていた。ケインはそれを踏み潰すとなんとも言えない表情を浮かべた。そんなケインがふと目を向けるとそこにはタカヒト達が恐怖の表情を浮かべて立っていた。


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