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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編 Ⅱ
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破壊神の決断

 「レイ様、戦況をご報告します。作戦通り引き付けを完了致しました。第十二・十三師団はデスサイド付近を展開、第十四・十五・十六師団も進行中!」


 「上出来だ。これよりシナリオ2に移行する。第十二・十三師団突撃!」


 マグマの海を乗り越えた第十二・十三師団だがデスサイドを守る絶壁の崖は想像を絶した。デスサイド周囲には異常なほどの重力が発生している為、翼がある者の飛行能力を完全に奪ってしまう。第十二・十三師団の兵士達は手足を使い絶壁の崖を登るしか手段がない。それでもゆっくりと確実に破壊神襲撃の時が近づいていく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「タカちゃん、早く歩かないと間に合わないよ!」


 「ぜぇ、ぜぇ・・・」


 「タカヒトって体力ないのね。・・・そんな事でミカを守れるの?」


 リナの一言にタカヒトはムキになって立ちあがると歩き始めた。岩場のゴツゴツした足場は歩きづらくタカヒト達の体力を著しく奪っていく。上空を見あげると地獄軍らしき魔物が飛び交っていた。闘気の温存となるべく目立たない行動をするというてんとの考えで歩いてデスサイドを目指すこととなったのだが一番先に疲れたのはタカヒトだったようだ。今より数時間前のことである。


 「ピサロの戦略だと?」


 てんとは作戦指令官のアスラにピサロの考えているシナリオを伝えた。アスラは真剣に耳を傾けたが後退は考えていないと言った。戦況は五分五分であり自軍の撤退は天道軍の進行を許してしまう結果になってしまうからだ。


 「そこでお前達に頼みがある。この事を我が主に伝えてほしい。聞いてくれるか?」


 頭を下げるアスラにてんとは承諾する。こうしてタカヒト達はデスサイド目指して歩いているわけだ。当初、破壊神に戦術や戦略の分析能力を買われて作戦司令官アスラの補佐を頼まれたてんとはタカヒト、ミカ、リナにポンマンと共に最前線作戦本部にいた。リディーネとデュポンは破壊神のいるデスサイドに残っている。

 アスラとてんとは戦術を細かく打ち合わせしていたが赤タカヒトの暴走行為により一時危険な状況に追い込まれていた。今回は赤玉によく言い聞かせた上でミカとリナ、ポンマンとてんとのチームでデスサイドへと歩を進めていく。


 「リディーネとデュポンが心配だね。何もないといいけど・・・。」


 ミカはリディーネのことが心配だった。しかも天道軍がデスサイドを攻撃すると聞いてその心配は更に増した。デスサイドに辿り着いた頃にはタカヒトはかなりグッタリしていた。 


 「天道軍の攻撃を受けてはいないな・・・どうやら間に合ったようだ。」


 正門を潜り抜けて石畳の廊下を歩いて破壊神のいる部屋へと向かった。部屋に入るとリディーネがひとり破壊神の椅子に座っていた。キョトンとするリディーネが口を開いた。


 「どしたの?血相変えて・・・」


 現在の戦況と迫り来る脅威について、てんとはリディーネに説明した。しかしそれらの言葉をリディーネは一切受け付けなかった。


 「デスサイドを襲う?アッハハハ・・・ハァァ~ア、バカ言ってんじゃないわよ!パパが作った最強の城よ。そんなことあるわけないじゃない!!」


 リディーネの激しい口調で叫ぶ声は石畳の廊下の隅々まで広がった。その声は破壊神の耳にも届いた。その後、てんとがどんなに説得しても聞こうとしないリディーネが癇癪を起こしていると破壊神が部屋に入ってきた。


 「どうしたんだ、リディーネ?」


 「パァ~パァ~~、聞いてよ!てんとがね・・・」


 甘えながら破壊神にベッタリのリディーネを傍らに座らせ、てんとの話を真剣に聞こうと破壊神は王座に腰を下ろした。話を聞き終えてからしばらくの間、破壊神は顎に手をやりながら考え込んでいた。てんともタカヒトもリディーネすら声を掛けられないほどの重く冷たい空気が流れている。


 「オババはおるか?」


 「お呼びでしょうか?」


 部屋の一角の暗闇からメイドババアが姿を現した。破壊神は指示をするとメイドババアはうなずき、部屋を出ていく。しばらく考え込んだ破壊神は言霊を取り出すとそれをてんとに渡した。


 「この言霊を持ってアスラの元へ・・・

  今度はリディーネとデュポンも連れて行ってくれ。」


 「えっ!なっ、何でよ?」


 これにはリディーネも強く反発した。だが破壊神のいつにない真剣な眼差しにリディーネは涙を流しながら渋々、指示に従った。破壊神は最後の別れにもなるかもしれない状況であるにも関わらずリディーネの別れの言葉に反応も示さずにただ玉座に座っていた。リディーネは涙を流しながら諦めたようにミカに支えられるとその場を悲しい表情を浮かべながら歩いて出て行った。誰もいなくなった部屋で破壊神は悲しい表情を浮かべているも次第に何かを決意した表情に変わっていく。


 「リディーネ、もう泣かないの!」


 「だって・・・ふえぇぇぇ~~ん。」


 泣きじゃくるリディーネをミカは慰めている。いつも優しい破壊神の急激な態度の変化にリディーネの心はついていかなかった。


 「パパはアタシの事が嫌いになったんだ!」


 「違うよ、リディーネ。そんなことは絶対にないよ。」


 「だって、だって・・・」


 涙涙のリディーネにミカはハンカチを手渡すとすぐにそれはグッショリと濡れた。デスサイドの正門を潜り抜けてまたアスラのいる作戦本部へと向かっていくてんと達の姿をデスサイド内から見つめる二つの人影があった・・・。


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