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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編 Ⅱ
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やっぱり、俺は負けねぇよ!

 ハープを破壊されたことで我を忘れ、発狂しているアリシアが放出した闘気の量は想像を絶した。アリシアの菫玉 音を操る者は巨大な球体を創り、その球体内の誰もが音波による急激な頭痛でその場を動くことが出来なくなっていた。無論アリシアも発狂している為に攻撃は出来ず操っているリナとリディーネもそのコントロールから外れ、意識を失い倒れていた。このままでは大焦熱地獄へ行くどころか生きてここから出られるかどうかも分からない。この地獄道に来てから何度目かの死の恐怖を憶えたタカヒト。 


 「もう・・・だめ・・・・だ・・・」


 タカヒトが諦めかけた瞬間、一寸の強烈な衝撃波がアリシアの球体にブチ当たった。それにより球体はガラスのように粉々に割れた。球体がなくなったことでタカヒト達を苦しめていた頭痛は解消されてなんとか命を取り留めることができた。それと同時にアリシアは我に返ったがリナとリディーネは倒れこんだままだった。タカヒトが衝撃波の打ち込まれた方向に視線を向けるとそこにはガルとジャンスが立っていた。


 「・・・久しいな。」


 「おう、俺は負けねぇよ!」


 「ガル!・・・それにジャンスも!」


 タカヒトは驚きを隠せなかった。飛行しているガルとジャンスは降下してくるとタカヒトの隣に着地した。ふたりはアリシアの様子を伺っていたがその表情はかなり険しい。同じ十六善神とはいえ十六善神の中でも最強と謳われている四天王のひとりであるアリシアをかなり警戒しているようだった。


 「門を警護しているのがアリシアだったとはな。」


 「アリシアだろうが、誰だろうが俺は負けねぇよ!」


 「お見苦しいところをお見せしてしまったわ。

  あら?おふたりが揃ってどうしましたの?」


 「どうしましたのって余裕だな。さすがは四天王。実はおまえの排除に来たんだ。」


 「許せませんね、そのセリフ・・・。」


 「おし、久しぶりに動物拳法を見せてやるか!」


 「・・・・」


 ジャンスは右拳に力を込めて腰を落とすと拳を突き出した。熊の手をした衝撃波がアリシア目掛けて飛ばされた。だが、アリシアが目を見開くと巨大な球体を作り出した。その球体で防御を試みるがそれは熊の手をした衝撃波により粉々に粉砕された。地面に散らばる球体の欠片を眺めながら静かに冷静な表情でガルとジャンスを見据えている。


 「どうでい、俺のくまパンチの威力は!」


 「ちょっと、ジャンス!僕らが戦った時より強くなってない?」


 タカヒトから主格を強引に奪い変わっていた白タカヒトは驚愕した。たしかに赤紫白タカヒトはジャンスに一度勝利をしている。だが同じ熊パンチであるにも関わらずあの時と今とではその大きさも破壊力も段違いだった。腰を落としてジャンスはニヤリと笑みを浮かべると得意になって語りだした。


 「がっはっはっ、これが俺の力よ!

  あの時はギックリ腰でな、本調子ではなかったのだ。」


 「そっ、そうなんだ・・・アッハハハ・・・」


 白タカヒトや赤玉も紫玉もあの時ジャンスがギックリ腰であったことにこっそり感謝している。しかし今はこれほど頼もしい存在はない。ジャンスが連続熊パンチを繰り出していくのに対しアリシアは防戦一方だった。誰もがその戦いを見つめている中、ガルが白タカヒトに近づいてきた。


 「今のうちに門を潜り抜けるんだ。アリシアには俺達では勝てない。俺達は十六善神だが四天王とでは力に差がありすぎる。それはジャンスも分かっているはず。だから俺達がアリシアを引き付けている間に逃げるんだ。」


 「でもそれじゃあ・・・」


 「心配するな・・・俺達も隙を見て逃げる。

  お前達は門を潜り抜ける事だけを考えろ!」


 白タカヒトはミカ達の姿を確認すると瞬時にそこへ飛んでいった。ガルに言われたことをてんとに伝えるとしばらく考えた。


 「ミカ、このクリスタル持ってポンマンと一緒に門に向かうのだ。白タカヒトは私と共にリナとリディーネの救出に向かう。」


 「また襲ってこないかな?」


 「気絶しているがアリシアの支配下から開放されればかならず戻るだろう。」


 アリシアはジャンスが引き付けていたのでてんと達の行動には全く気づいていない。万が一を考えてミカは理力を開放しながら門へ向かって走り出した。一方、白タカヒトとてんとは気絶しているリナとリディーネの位置を確認すると飛んでいく。ふたりを背負ってミカ達の向かっている門に視線を向けた。ジャンスと対峙しているアリシアが微笑みを浮かべながらミカ達を見つめていた。


 「私を出し抜こうとしていません?甘いですわよ!」


 ジャンスのくまパンチを弾き返すとその衝撃波がジャンスの巨漢にブチ当たった。自ら撃ち込んだ熊パンチをくらったジャンスは膝をつきその場にうずくまってしまった。その隙をついてアリシアは闘気を高めた。


 「菫玉最大闘気 サウンドイリュージョン」


 巨大な音符の形をした衝撃波が門に辿り着いたミカ達に襲い掛かる。瞬時にレインボーウォールを放ち防ごうとするが巨大な音符に粉々に破壊されていく。近づいてくる巨大な音符の衝撃波にミカは目を覆ったがそれがミカに当たることはなかった。アリシアの巨大な音符をガルが両手で受け止めていた。


 「ミカ、早くクリスタルを・・・門を開けるんだ!」


 ミカはクリスタルを取り出すと門に向けた。するとクリスタルから眩しい光が放たれると門はゆっくりと少しずつ開いていく。ガルは強引に巨大な音符を地面に押し付けた。激しい衝撃が周囲に伝わるがなんとか衝撃波を消滅させた。再びサウンドイリュージョンを放たれることを警戒したガルはアリシアに向かって肉弾戦を仕掛けた。ガルの連続攻撃を簡単にヒラリヒラリとかわしていくアリシアからは笑みすら見えた。


 「これほど差があるとは・・・」


 ガルとアリシアの戦闘を門から見つめているてんとは驚愕していた。今のままでは確実に勝てないと、そう感じたてんとは一刻も早くこの場から逃れることを第一に考えた。白タカヒトはガルとアリシアが戦闘を開始したのを確認するとリナとリディーネを担いでてんとと共に門に向かっていく。門に辿り着いた白タカヒトが振り返るとガルがアリシアの足元に這い蹲り苦しんでいた。アリシアは白タカヒト達のいる門に近づこうするとジャンスが後ろから羽交い絞めして行く手を阻んだ。


 「早く門を閉めろ!!」


 アリシアを命懸けで足止めしているジャンスの姿は門が閉まり少しずつ見えなくなっていく。そして門は完全に閉まった。閉まった門の扉を前にタカヒト達はなかなかその場を動こうとはしなかった。


 「タカヒト・・・先を急ごう。

  ガルとジャンスの為にも我々は行かなくてはならない。」


 てんとは球体に気絶したリナとリディーネを乗せてタカヒト達と共にデスサイドを目指した。一方、門を見つめながらアリシアは少し不機嫌な表情をしていた。ピサロから門を守るように言い渡されていたのだがその使命を果たすことが出来なかったからだ。足元にはガルとジャンスが倒れていたがピクリとも動かない。


 「イライラするわ・・・」


 アリシアは足元のジャンスの顔を蹴飛ばすと意識のないその頭はグラングランと壊れた操り人形のように振りまわっていた。


 「雑魚どもめ・・・」


 それでも苛立ちを押さえきれないアリシアは倒れているガルの腹部を踏みつけると鈍い骨の折れる音がした。何度もアリシアはガルの腹部を踏みつけてはその鈍い音を楽しみ、ストレス発散をしていた。少し気持ちが収まったらしく左手のひらに闘気のボールと創り出すと誰かと喋り始めた。


 「ピサロ様、申し訳ありませんでした。

  私としたことがつい取り乱してしまい・・・」


 「そう気にすることはない。それより次の指令がある・・・・」


 「承ります・・・今回の失態で私のことをお嫌いに・・・」


 「私のアリシア・・・この言葉では不足か?」


 「有難き、お言葉・・・」


 ピサロとの交信を終えたアリシアはしばらくの間、会話の余韻を楽しみ笑みを浮かべていた。そのアリシアがその場を去ってからどれ位の時間が経っただろうか・・・ガルが意識を取り戻すと周囲を警戒しながら立ちあがった。


 「アリシアのヤツ、酷いことしやがるぜ・・・ジャンスは・・・!!」


 アリシアはガルの蘇生能力を知らなかったらしい。アリシアの拷問は凄まじくガルは蘇生するまでかなりの時間が必要だった。しかしジャンスは違った。首の骨は粉砕骨折を起こしていた為に起こすことも出来ない。ガルは地面から少ないエネルギーを、時間をかけながら集めてジャンスの首の骨の修復を懸命に行った。丸一日費やして粉砕骨折は修復できたものの依然、意識はなくガルはジャンスを背負うとその場を離れた。


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