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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編
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門の鍵

 「ふぅ~~、やっと着いたわね。デュポンのヤツ、ちゃんと留守番してたかしら?」


 タカヒトやリナに敗北を喫したリディーネは破壊神によりその能力を高められ大手を振ってデュポンの待つ住処へ戻ってきた。もちろんここまで戻ってくるのにいくつもの魔物を相手にしてきたのだが力を得たリディーネの敵ではなかった。以前にも増して態度のデカくなったリディーネが住処のドアを開けるとディポンが驚いた。


 「あっ、姉さん!お勤めご苦労様でやした!」


 「あのさぁ~、別に出所してきた極道じゃあないんだからね。

  長旅で腹が減ったわ。」


 「へい、姉さん!」


 デュポンはすぐに料理の仕度を始めた。ひっそりしていたデュポンの住処からモクモクと煙が上がり始める。しばらくしてテーブルの上には沢山の皿が並べられてリディーネは美味しさそうに食べている。


 「ちょっと、アンタ!腕上げたんじゃない?」


 「へい、姉さんのお勤め中に料理の勉強をさせていただきやした。」


 「お勤め中って・・・・ま、まあいいわ。」


 「ところで姉さん!姉さんのお勤め中にギガスの使いなる者がやってきてこの手紙を渡してほしいとのことでやした。」


 デュポンから手紙を手渡されると目を通した。その手紙にはタカヒトと呼ばれる少年と決闘をして敗れ去ったギガスの事が書かれていた。ギガスを失ったことによりヘルズ軍団は解体、屋敷も競売にかけられたらしい。この手紙を読んでいたリディーネの姿を見たデュポンはあの時をこう振り返った。


 「あの時の姉さんは悲しむ表情もなく、いつものように感情を表さず・・・

  いったいお勤め中に何があったのだろうと心配しやした。」


 リディーネは立ちあがると手紙を燃え盛っている暖炉の中に投げ捨てた。燃えていく手紙をジッと見つめているリディーネの横顔は笑みを浮かべているようにも見えたともデュポンは語っていた。その日のリディーネは風呂に入って長旅の疲れを落すとすぐに就寝した。そして次の日、リディーネはデュポンに旅立ちの用意を言い付けた。


 「旅支度でやすか?」


 「そうよ!奴らは破壊神を倒し、地獄の支配を狙っている。奴らを止められるのはこの私だけよ!」


 「姉さんひとりを行かせる訳には行きやせん。

  今度はこのあっしもついて行きやす!」


 「ふん・・・好きにすれば。」


 デュポンは自ら火をつけて住処を燃やした。二度と戻らない、戻れないという覚悟を胸に一路大焦熱地獄目指して歩き始めた。



 「ねぇ、てんと。どうやって大焦熱地獄に行くの?」


 「大焦熱地獄へ行くには門があるのだが鍵が必要らしい。」


 「ふぅ~ん・・・それでその門の鍵ってどこにあるの?」


 「わからない。」


 「・・・えっ、知らないの?」


 タカヒト達が驚くのは無理もなかった。しかしてんとにも門の鍵がどこにあるのかわからなかった。ただ、大体の見当はついているらしい。 


 「一つ目は大叫喚地獄城、二つ目は蒸気の国、三つ目は大叫喚地獄海底の三箇所のどこかにあるらしいのだ。」


 「三箇所・・・やはり、十六善神が関わっている可能性がありそうね。」


 「大叫喚地獄城を支配しているのは十六善神のひとり豪傑のジャンス、蒸気の国を支配しているのは同じく十六善神のガル、そして大叫喚地獄海底を支配しているのはもちろん十六善神の化鯨となっている。」


 「簡単に渡してくれそうにないわね。」


 「ねぇ、どうして門の鍵を天道の十六善神が持っているの?

  破壊神を警護しているの?」


 「警護しているわけではない。」


 てんとは徳寿の話を思い返していた。それは地獄道を治めていた閻魔大王が敗れ破壊神に支配された時のことだ。当時、閻魔大王は天道より派遣され地獄道を治めていた。閻魔大王は圧倒的な力を誇示しており地獄道で逆らう者は誰一人といなかった。しかし破壊神は違った。地獄道の何処に存在していたのかは分かっていないが突然現れた破壊神は地獄道を攻撃すると閻魔大王を討ち取り完全に掌握した。


 「閻魔は何をしていたのよ!ジャンスとガル、化鯨を呼びなさい!・・・早く!」


 天道最高協議委員会で協議の最中だったピサロは激しい口調で配下の者を呼びつけた。指示を受けると配下の者は走って部屋を出ていった。それは天道最高機密機関で統括者達が集まっている一室での出来事だった。統括者は五名なのだが二名の欠員を出している上、ハデスは参加せずピサロと徳寿のふたりだけが部屋にいた。


 「何をする気じゃ?」


 「あの憎たらしい破壊神を地獄道の奥底に閉じ込めるのよ!」


 「ピサロ様!ジャンス様、ガル様、化鯨様が到着されました。」


 しばらくして、配下の者がジャンスとガル、化鯨の三名を連れてくるとピサロは大焦熱地獄の上に大叫喚地獄を造り、そして二つの地獄の間に門を設置するように命令した。大叫喚地獄の門はこうして出来あがったのだった。破壊神を天道や外敵から守る為ではなく破壊神を閉じ込めておくための門なのである。


 「まあ、こんなものでしょう。上々だわ。」


 地獄道の最深部である大焦熱地獄は乗っ取られたものの何とか全地獄支配を免れたことに快くしたピサロ。配下の者から受け取った門の竣工図と書類を眺めながらニヤリと笑みを浮かべた。門ができた理由など知るわけもなくタカヒトは納得したようにてんとに聞いた。


 「門を通り抜けるにはやっぱり鍵が必要なんだね。

  ところで何処から行くつもりなの?」


 「何処からでもいいのだが・・・そうだな、大叫喚地獄城から捜索する。

  今回は別行動をせずに四名で行く!」


 「何で大叫喚地獄城からなの?」


 「・・・特に意味はない。」


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