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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編
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音速の先へ

 デビット・ビーの優勝は確実なものと感じたタカヒトは雄大な大海原をただ独りカイトボードをゆっくり進ませながら楽しんでいる。


 「勝つだけがすべてじゃないし、参加する事に意味があるんだ・・・たぶん。」


 タカヒトは自分に言い聞かせてノホホンと走行している。するといきなり紫玉がタカヒトの意識の中に入ってきた。


 (タカヒト、のんびりしているところを悪いがちょっと身体を借りる。)(紫玉)


 「えっ?・・・紫玉?・・・何で?」


 戸惑っているタカヒトの意識を紫玉があっさりと乗っ取るとタカヒトの瞳と髪の毛が紫色に輝く。しかし今のままではどう足掻いてもデビット・ビーには勝てるワケもない。それほどデビット・ビーとの差は大きいものだった。だが紫タカヒトには作戦があった・・・一発逆転の方法が!紫タカヒトはカイトを手放すとコントロールを失ったカイトが上空へと飛んでいく。


 「紫玉理力アルティメットアタック」


 紫色のアレストが紫タカヒトのボードの周りに集まっていく。アレストが粒子砲を一斉に放つとボードが推進力により押し出されていく。ボードは水しぶきをあげながら加速していったが、それでもデビット・ビーには到底追いつけはしない。だがそれすら紫タカヒトの想定内の事だった。紫タカヒトは両手を広げると更に理力を高めた。


 「紫玉上級理力アルティメットキャノン!」


 複数のアレスト砲筒を創り紫タカヒトの両腕に装着された。紫色の巨大な粒子砲を発射させると急激に推進力があがった。アルティメットアタックとアルティメットキャノンの推進力がボードの加速を更にあげていく。海面に波しぶきをあげながら加速していく。紫タカヒトは加速を強めると音の壁に衝突していく現象が始まった。いくつもの音の壁を越えて音速の領域に達した紫タカヒトの視界にデビット・ビーの姿が映った。


 「ギッギッギッ、今回も賞金は俺のモノだ!・・・・なんだ?この音は?」


 ゴール目前のデビット・ビーの横を激しい爆音と共に紫タカヒトが追い抜いた。デビット・ビーは一瞬何が起こったのか?理解出来なかった。そんなデビット・ビーを差し置いて紫タカヒトはミカ達の待つ砂浜に到着した。


 「アンビリーバボォー!優勝は最下位だったタカヒトだぁ~!!」


 タカヒト優勝のアナウンスが流れると紫タカヒトのまわりには祝福しようとミカや沢山の観客が集まってきた。しばらく経ってからデビット・ビーがゴールしたが紫タカヒトの勝利に納得がいかないようで罵声をあげて大会主催者に食って掛かっていた。


 「おい、あの野郎はなんなんだ!あんなの反則だ!」


 「デビット・ビー様・・・

  レースに不正はなく彼の勝利に主催者側の異論はございません。」


 主催者の態度に怒り狂ったデビット・ビーは羽根を激しく震わせる。デビット・ビーは以前に行われた大会でも自分勝手な怒りを振りまいて羽根を激しく震わせカマイタチを発生させて優勝者と主催者を殺したことがあった。

 主催者と観客は再びあの悪夢が襲い掛かると脅えその場から叫び声と共に逃げ去っていく。その場に残ったのはミカ達だけであった。恐怖のカマイタチを一掃するかのように紫タカヒトが口を開いた。


 「やれやれ、なんでもアリのレースで反則を主張するとは紳士的ではないな。」


 「なっ、おんどりゃぁ~~・・・生きてここから出られると思うなや!」


 デビット・ビーが羽根を高速振動させると周囲の砂浜が共鳴していく。カマイタチを発生させたことにより複数の風刃が紫タカヒトに襲い掛かる。冷静沈着に状況を把握した紫タカヒトは理力を開放するまでもなく風に流れる柳のようにゆらりゆらりとカマイタチをかわしていく。

 圧倒的な力の差にデビット・ビーはその場に膝まずいた。紫タカヒトはその場を後にしてミカ達の方へと歩いていく。


 「この瞬間を待っていたんや・・・いてまえ!」


 眼を光らせたデビット・ビーは紫タカヒトに狙いを定めて毒針を撃ち込んだ。鋭い毒針が紫タカヒトの背中目掛けて放たれる。


 「待っていたのはおまえだけではないぞ。」


 「なっ、なんじゃ?」


 勢い良く飛んできた鋭い毒針とデビット・ビーにはすでに膨大な数のアレストが狙いを定めて配置されていた。


 「紫玉上級理力アルティメットキャノン!」


 毒針を紫色の粒子波が消し去るとその先にいるデビット・ビーも上空の遥か彼方に飛ばされていった。すると逃げていたはずの観客が一斉に歓喜の声をあげて、戻ってきた。紫タカヒトは瞳を閉じると紫色の輝きはおさまりタカヒトは意識を取り戻した。突然、タカヒトは観客に持ち上げられて胴上げをされた。タカヒトはいきなり紫玉に意識を乗っ取られたので状況が全く理解できていない。それでもミカやポンマン、リナが喜んでいる姿を見て紫玉がうまくやったのだと理解して素直に胴上げを楽しむことにした。その後アイザックやほかの選手達の競技も終了して表彰式が終わると笑顔と余韻を愉しみながら観客達は帰路につく。


「勝者のタカヒトを称えて、乾杯!」


 グラスの鳴り響く音が聞こえる。大会を終えたタカヒト達はアイザックの招待で優勝祝福会に招かれていた。アイザックはタカヒトの優勝を喜んでいた。


 「それにしてもあのデビット・ビーに勝つなんて凄いよ。

  タカヒトは本当にスーパーグレイトボーダーだよ。」


 アイザックに褒められて照れているタカヒトだがこの勝利は紫玉の活躍の結果だと考えるとなんとも複雑な心境だった。そんな表情を見抜いたのかポンマンが沢山のパンが入ったバスケットを持って近づいてきた。タカヒトはポンマンの笑顔とパンをもらうとゆっくり食べ始めた。


 「うごっ、・・・ふぐ・・・」


 パンを急いで頬張っていたポンマンが喉に詰まらせながら苦しんでいるとミカが急いでグラスを渡す。ポンマンは勢いよくそれを飲み干した。騒ぎは夜遅くまで続いた。

 その頃、タカヒト達が地獄病院のある孤島にいる情報を手に入れたアレスはギガスと共に修理を終えた飛行艇に乗り込み孤島へと進路を向けていた。司令室ではアレスの隣でギガスが凄まじいほどの闘気を出している。


 「フッ、それにしてもどういう風の吹き回しだ。

  物事に無関心なおまえが参戦するとは。」


 「・・・・」


 「まあいい・・・束の間の遊覧飛行を愉しむがよい。」


 ギガスの怒りはタカヒトのみに向けられていた。初めて恐怖を味あわせたタカヒトの存在が許せなかったのだ。そんなギガスの恨みを買ったことも知らずにタカヒトはミカ達と愉しんでいた。


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