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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編
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選ばれし者

 「あら? あなた達もパーティーの参加者かしら?」


 ギガスの足元を見るとタカヒトとその近くにミカが気を失っていた。それを確認したてんとは緑色の球体を移動させるとタカヒトとミカを球体に乗せてウンディーネのいる共鳴石の部屋へと運んでいく。それを阻止すべくアレスの中級闘気イレイザーとカオスの衝撃波が二人を乗せている球体に襲い掛かった。


 「ハイエレメント インドラ!」


 「翡翠玉中級理力 跳ね返し!」


 リナの雷撃とポンマンの跳ね返しが阻止した。タカヒト達を無事ウンディーネのもとへ送るとてんと、リナそれにポンマンはフロアに立ち並び余裕を見せている三獣士に視線をぶつけた。


 「三獣士って言っても大したことないようね。」


 「待たせたな、ショータイムの始まりだ! 赤玉らしく言えばな。」


 てんと、リナ、ポンマンとアレス、カオス、ギガスの三対三の戦いは今、火ぶたを切って落された。森の方へと移動したカオスが連続衝撃波を放つとポンマンは跳ね返しで対抗する。トレブシェル内のフロアではアレスがレイザーランスを手にするとリナへ襲い掛かる。てんとは上空へと浮上すると優雅に浮かんでいるギガスと対峙する。


 「うおっ、わおっ!」


 森林での戦いとなったポンマンは上空からくるカオスの衝撃波をなんとか凌いではいるが威力が増していく衝撃波を抑えることが出来なくなっていった。カオスはバースト率をあげると両手に衝撃波を溜め込み地上にいるポンマンに接近してきた。

 ポンマンの跳ね返しは衝撃波・粒子砲系の飛ばし技のみに対して有効ではあるが接近戦による肉弾戦は効果がない。ポンマンの懐にいとも簡単に潜り込んだカオスは衝撃波を溜めこんだ右拳を振りあげるとポンマンの身体が九の字に折れ曲がった。


 「ゲガッ・・・・」


 呼吸が出来ず苦悶の表情を浮かべるポンマンの顔面にカオスは衝撃波を溜め込んだ左拳押し当てた。ポンマンは自らの顔が歪む感じを覚えながらそのまま顔面から地面に倒れ込んだ。追撃を与えるカオスの左右の衝撃波連撃がポンマンの身体をさらに地中へとめり込ませていく。カオスが攻撃を止めるとポンマンは意識もなく沈黙している。


 「・・・破壊行為完了・・・援護行動開始・・・?」


 カオスはリナとアレスの交戦状況を見定めアレスの援護に向かおうとその場を去ろうとした。だがそのカオスの片足を掴む手があった。カオスはその手を振り払おうとするがポンマンは抵抗している。泥まみれのポンマンが苦悶の表情を浮かべ地面に這いつくばりながらもその足を決して離さなかった。


 「致命傷率・・・・・98パーセント・・・瀕死状態・・・」


 「はっ、は・・・ゴホッ、君の言う通りだ。これが最後の・・・攻撃かな?」


 カオスはポンマンに向けて衝撃波を溜めていく。左腕に溜めた衝撃波を放とうとした瞬間、それと同等の衝撃波をポンマンが右腕に溜めている事に気がついた。 


 「同種エネルギー体・・・感知・・・?」


 何故ポンマンが衝撃波を溜め込む事が出来るのか?わからず、一瞬状況が読めなくなったカオスから自ら溜め込んだ衝撃波が消えていった。次の瞬間、ポンマンが力のかぎり理力を高めると右腕をカオスに向けた。


 「ハアハアハア・・・翡翠玉最大理力 なんちゃってバースト状況最大衝撃波!」


 ポンマンの右腕から翡翠色の衝撃波が放たれるとそれはカオスの胸部に直撃した。これが翡翠玉最大理力モノマネである。ポンマンはモノマネを発動すると相手の攻撃を憶えて自らの攻撃とすることができる。つまり攻撃を受ける度にポンマンの技が増えていくのである。

 しかしたとえ技を憶えてもその技を使うのにポンマンの身体が耐えられるのかは別の話。バースト状況の最大衝撃波を放つとポンマンの右肩はその衝撃により脱臼、右腕は粉砕骨折となった。自らの最大衝撃波を胸部に浴びたカオスの身体は九の字に折れ曲がる。衝撃波は強じんなカオスの胸部をえぐると内臓をくり貫きそのまま上空へと消えていった。


 「損傷率99パーセント・・・キノウテイカ・・・シコウ・・テイ・シ」


 カオスの胸部に大きな穴が開くと機能を停止して地面に落ちていった。しかしポンマンはそれを確認出来ない。すでに意識を失っていた。

 一方、傷ついたタカヒトとミカはトレブシェルに収容されてウンディーネのいる共鳴石の部屋にいた。ミカはすぐにてんと達と同様に共鳴石の元へ寝かされて桜玉の能力アップが施されていた。しかしタカヒトは違う。すでに活魂水によりその能力を最大まであげられている。たとえ共鳴石の力を使ったとしてももはや能力をあげることは期待出来なかった。ウンディーネはタカヒト達を巻き込み彼らの生命を危険に追い込んでいる事を後悔していた。 


 「どのような理由があろうとも三獣士に・・・破壊神に近づいてはいけなかった。」


 タカヒト達をこの地から逃す準備を始めようとウンディーネがふとタカヒトの胸元に視線を向けると驚き自分の目を疑った。


 「これは・・・暗黒色の共鳴石。まさか、この子が・・・選ばれし者?」


 共鳴石は無色透明な石であり精霊の特殊な儀式によってソウルオブカラーの能力をあげることが可能なのである。共鳴石の大きさや精霊達の能力とは関係がなくソウルオブカラーの能力アップには限界があることはウンディーネ自身知っている。 

 しかし暗黒色の共鳴石はそれとは違う。暗黒色の共鳴石はソウルオブカラーの能力を極限にまで昇華させる事が出来る。無論、精霊の負担も増すのだが・・・。ウンディーネも暗黒色の共鳴石を初めて目にした。その理由は暗黒色の共鳴石はその絶大なる力ゆえに天道にて厳重に保管されていたからである。しかし原因は定かではないが暗黒色の共鳴石は四つに割れて天道よりすべての世界に散らばってしまったといわれている。

 そして暗黒色の共鳴石は意志を持っているといわれ持ち主を選ぶという。暗黒色の共鳴石に選ばれた者は六道を治めるという言い伝えをウンディーネも聞いたことがある。


 「もし、選ばれし者なら私はこの子に希望を託す為に生きていた・・・

  これが私の生き永らえた意味なのかもしれない。」


 ウンディーネはタカヒトをミカの隣に寝かせるとタカヒトの持つ暗黒色の共鳴石を握り静かに目を閉じた。てんとやミカに施した精霊の儀式は共鳴石にウンディーネの生命エネルギーを少し送り込む事により共鳴させるものだ。しかし暗黒色の共鳴はそれでは足りない。必要なのは精霊の生命力つまり命である。


 「タカヒト・・・今は闇の中かもしれません。

  でもその闇を抜ければ希望が必ず見えてきます。あきらめないでください。」


 そう言い残すとウンディーネの姿は暗黒色の共鳴石に吸い取られるように消えていく。次第に暗黒色にタカヒトの身体は包まれると殻のようなものが出来あがりタカヒトはその殻の中で静かに再生の時を待つ・・・。

 トレブシェル内のアレスはレイザーランスを握りリナと対峙していた。リナが牡丹玉ミドルエレメント サンドラドックを放つと二匹の雷獣がリナを守るように現れた。ゆっくり円を描くように二人は歩を進めるとその円は次第に小さくなっていく。アレスが動きを止めると二匹の雷獣が一斉に襲い掛かっていく。顎を開き、牙を見せながら雷獣が飛び掛り、アレスに喰らいついた。次の瞬間、二匹の雷獣の胴体がふたつに割れて断末魔をあげながら消えていった。


 「ほう、断末魔をあげるのか。」


 襲い掛かった二匹の雷獣に気づかれずに残像を残すと同時に刃で切り裂いていたアレスの力。久しぶりにリナの背中に冷たいモノが流れた。レイザーランスを振り下ろし笑みを浮かべるアレスに次々と雷獣が襲い掛かるが鋭い斬撃によりすべてが断末魔をあげながら消えていった。


 「何度やってもムダだ!」


 「そうかしら?牡丹玉ハイエレメント インドラ!」


 複数の雷獣を召喚しながらもリナは更に牡丹色を輝かせていくとインドラを放った。迫り来る巨大な大雷撃玉を瞬時に認識したアレスはレイザーランスを高速回転させた。


 「槍術 大輪斬」


 アレスの槍術により大雷撃玉は破壊され四方に分散させて直撃を回避した。四方へ分散した雷撃はトレブシェル内の壁を破壊していく。アレスはレイザーランスの回転を止めて刃先をリナに向けた。


 「やはりムダだったな!」


 「そうかしら?」


 リナの余裕の表情を負け惜しみと感じたアレスがニヤリと笑みを浮かべた瞬間、手にしたレイザーランスが粉々に砕けた。


 「!・・・きっ、貴様?」


 リナの戦術にまんまとはまったアレスの表情は烈火の如く険しくなっていく。激怒したアレスは菜の花玉中級闘気イレイザーを放つと細長い菜の花色の粒子砲がリナに襲い掛かる。リナは瞬時に雷壁を構築すると粒子砲を防いだ。しかし雷壁によりリナはアレスの姿を確認出来なかった。雷壁に粒子砲を打ち込まれている時、リナはアレスがその方向にいるものだと思っていた。

 まさかリナの背後にアレスがいるとは夢にも思っていない。「ドスッ」と鈍い音が響き渡るとレイザーランスがリナの身体を貫いていた。アレスはゆっくりと刃をリナの身体から引き抜いた。


 「勝負あったな!」


 「・・・・そうかしら?」


 アレスが気づいた時はすでに遅く、リナの大雷撃玉が頭上から迫ってきた。激しい大雷撃玉にアレスは両手で受け止めるが押し潰す力は強力なもので両膝をつきながらも抵抗している。

 目の前に貫いたはずのリナは消えていた。リナは雷壁だけでなく自らの幻像も創りあげていたのだ。またしてもリナの戦術にしてやられたアレスは悔しがり両手で大雷撃玉を押し退けた。


 「くそったれめ!」


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