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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編
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タカヒト救出劇

 「あれ、急にどうしたの?」


 白タカヒトはミカ達の行動にキョトンとしながらもその様子を伺っていた。それはミカが一番前に立ち、その後を赤玉と紫玉が平行に並んでいるからだ。


 「行くわよ、赤玉、紫玉!」


 その攻撃体勢のまま彼らは白タカヒトに向かって走っていく。走っている最中紫玉の作戦がミカの頭を駆け巡る。


 「ミカ、今の我々には白タカヒトに対抗する力はない!我々ソウルオブカラーはそれぞれが特殊な能力を持っているが使いこなす所有者がいなければその力は無に等しい。     

 高級なバイオリンであってもそれを扱う奏者がいなければその綺麗な音色を奏でられないように。私も赤玉も今は何も出来ない。だがミカが攻撃を仕掛けてくる白タカヒトの気をそらす事が出来れば赤玉と共にタカヒトの意識の中側に入れるかもしれない。 

 白玉を捕らえることが出来ればタカヒトの意識を取り戻せるはずだ!」


 ミカの桜玉には攻撃系のものは現在ない。しかも今のミカに使えるのはサクラリーフのみ。そこでミカは限界まで白タカヒトに近づきサクラリーフを放つ。防御系の技とはいえサクラリーフの出現時の前方への衝撃はかなりのものでありその衝撃力は白タカヒトの気をそらすには十分である。白タカヒトに近づくにつれて理力を高めていくミカ。それと対象的に無邪気に笑っている白タカヒト。ふたりの距離が縮んでいく。

 距離20m・・10m・・・

 無邪気に笑う白タカヒトは右手を差し向けると心力を高める。次の瞬間、白タカヒトの右手から衝撃波がミカ達に襲い掛かる。


 「桜玉理力 サクラリーフ!」


 ミカはサクラリーフを放つとなんとかその衝撃波を押さえ込んだがその威力は凄まじく防御するのが精一杯だった。ミカは赤玉と紫玉それにディーノを守る為に理力を最大まで高めて衝撃波を食い止めた。しかし衝撃波はミカの想像を超えるものですぐに体力と理力が限界に越した。

 ミカはその場に崩れるように倒れ込むとその姿を見下ろし白タカヒトは無邪気な笑顔を見せている。


 「あれ、もうおしまいなの?つまんないのぉ~。」


 白タカヒトは右手を倒れているミカに向けると白い輝きが高まっていく。


 「くそったれが!」


 「ミカ!」


 赤玉と紫玉が白タカヒトに向かっていくが衝撃波により吹き飛ばされ返り討ちとなった。恐怖に怯えるディーノ。そして傷つき意識を失いかけているミカに再び右手を向ける白タカヒト。


 「さようなら・・・んっ?・・・タカヒトなんか用?」


 「・・・タカ・・・ちゃん・・・」


 (ダ・・メだ!ミカちゃんを・・・傷つけることは・・・)(タカヒト)


 「タカヒト、何をする!!」


 白タカヒトが頭をおさえ苦しみ始めた。意識を失いかけているミカがゆっくり見上げると白タカヒトは膝をつき悶えるように地面をはいつくばっている。

 返り討ちにあったものの意識を取り戻した赤玉と紫玉は状況を把握出来ずに戸惑っていた。勝ち誇っていたはずの白タカヒトが苦しみ地面を這いずり回っていたからである。


 「やめろぉ~、やめてくれ!」


 (ミカちゃんだけは傷つけさせない!)(タカヒト)


 頭を抱える白タカヒトの身体が白色に激しく輝き、それが次第に収まっていくと白い炎がタカヒトの身体から弾き飛ばされた。


 「おい、出やがったぞ!捕まえろ!」


 白玉の存在に気づいた赤玉と紫玉は白玉を取り押さえる。するとタカヒトの身体から完全に白い輝きが無くなった。白玉を取り押さえた赤玉が意気込んだ。


 「このクソ白玉野郎が調子に乗りやがって!!どうしてくれようか?」


 「ちょっと待ってよ・・・マズいよ。タカヒトが大変なことになっちゃうよぉ~。」


 「てめぇ~、逃げようとして適当なこと言ってんじゃねえぞ!オラぁ!」


 赤玉達がそんなやりとりをしている時タカヒトの容態が急激に変化していることにミカが気づいた。


 「タカちゃん、どうしたの?」


 「ううぅ~~ん・・・あがっ・・・・!」


 急に苦しんだかと思うと次の瞬間には意識を失った。タカヒトは覚醒と気絶を交互に繰り返し苦しんでいる。


 「てめえ、タカヒトに何かしやがったな?てめえが原因だろ。白状しやがれ!」

 

 「違うよ、違うったら!タカヒトの中で封印された能力が解放されたんだ。それが原因でこの症状が起きているんだよ。」


 迫る赤玉に白玉は完全否定した。タカヒトの能力は相当なものらしく白玉の制御能力により封印されていた。白玉がタカヒトの意識に入ったのはかなり昔のことで白玉自体あまり覚えていない。しかし能力が異常に高かったことだけは憶えているらしい。

 誰が何の為にタカヒトの能力を封印したのかわからないが白玉の封印を解いたことにより抑えられていた能力がタカヒトの自我を壊すほどの勢いで開放されつつある。自我の崩壊をタカヒトの精神がなんとか保っていたが自我の崩壊は時間の問題であった。

 白玉も捕獲されて状況が沈静した事を確認したディーノがミカ達のいるところに近づいてきた。


 「とりあえず、ここを出てワスの家に戻るらよ!」


 「・・・そうね。」


 ディーノの言葉に従いミカ達はタカヒトを連れてタカヒトの意識の中を脱出して元の場所へ戻った。ディーノのベッドへタカヒトを寝かせたが異常なほどの高熱と大量の汗。目を覚ましたかと思うとまた意識を失う覚醒と気絶を再び繰り返す。


 「タカちゃん・・・」


 ミカは希望と絶望の間で苦しみながらも献身的な看病を続けた。


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