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未来のきみへ   作者: 安弘
地獄道編
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地獄道の猛者

 辿り着いた場所は紛れもなく地獄道だとてんとは言った。だがタカヒトが想像していた地獄道とはかなり違っていた。真っ暗な場所で隣にいたミカ達の姿ははっきり見えるが辺りは何も見えない。

 そこは以前タカヒトとミカが見たことがある狭間のような場所に見えた。


 「本当にここが地獄道なの?」


 「そうだ・・・地獄道とは言っても狭間に近い空間と言ってもいいだろうがな。地獄道でも最もはずれに位置する場所だ。」


 「そうなんだ・・・・。」


 急に不安を感じたミカはタカヒトの手をギュっと握った。そこへ見覚えのある一台の車が近づいて来た。それがすぐに徳寿の車とわかったのだが・・・様子が変だ。

 車からは黒い煙が出て、タイヤは一本取れていた。タカヒト達の前で止まると強引にドアを外して煙と共に徳寿が現れた。


 「ゴボッゴボッ・・・タカヒトではないか!こんな所で何をしておるのじゃ?」


 「業の水筒に運ばれて来たんだ・・・・それよりとくべえさん大丈夫?」


 「まあの。じゃが、奴らより先に見つけられて良かったわい。ここも安全というわけではない!着いて来るのじゃ・・・やれやれ、当分パン屋も休業じゃのぉ~。」


 徳寿が車から出てくると火は勢いよく燃えあがった。徳寿はタカヒト達を連れてその場を離れていく。燃えあがる車から少し離れた上空を二匹のデモンズが飛んできた。一匹のデモンズが燃えあがる炎を確認すると指さした。


 「おい、見つけたぞ!しかし・・・あれでは生きてはおるまい。」


 「死体確認との命令だ。」


 「確認は無理だ!」


 炎が消えフレームの一部だけが残っている程度で残りのすべてが灰になっているところにデモンズは到着した。デモンズの身の丈は180センチ位で背中には黒い翼が生えている。全身が黒くクチバシを持ちカラスのような姿をしていた。何も残っていない車の残骸を確認すると無言のまま二匹は飛び去っていった。


 「どうやら、気づかれなかったようじゃ。」


 独り徳寿はデモンズの様子を確認するとホッと一息ついた。天幕に戻ると徳寿は沸かしていたコーヒーを皆にご馳走した。黒色の天幕に入っていたタカヒト達の姿がデモンズに発見されることはなかった。予想だにしない出来事にてんとは徳寿に原因を聞こうとしていた。徳寿はコーヒーを一口飲むと話を始めた。

 今、現在地獄道の世界は破壊神と呼ばれる者が治めている。地獄道は最も罪深い者の行き着く先であるため、あらくれ者が多い。そのため天道より派遣されていた閻魔大王と地獄道屈指の鬼達がその強力な力であらくれ者達を抑え秩序を守っていた。しかし突然現れた破壊神の圧倒的な力に閻魔大王と鬼達は屈したのだ。

 破壊神には三獣士と呼ばれる者達がいる。陸地を制するギガスはヘルズなる兵士を率いる。水中を支配するカオス。そしてさきほど見たデモンズを率いて空を支配し、三獣士の中で最も強力な力を持つアレス。タカヒト達はリディーネを激波したときに現れた男がアレスだと徳寿の説明でわかった。赤紫タカヒトの最大級の攻撃を跳ね返したその力はまさに強力なものだった。


 「・・・・」


 話を聞き終えたタカヒトは沈黙していた。人道の世界へ、元の世界にミカと一緒に帰りたい!しかしこの地獄道で破壊神や三獣士とその軍団を相手に勝てるわけがなく、それどころか生き残る保障もない。戻る事も先にも進めない!そんな思いがタカヒトとミカを苦しめていた。てんとはほかにもジェイドがいつ襲い掛かってくるかも不安要素となっていた。ドンヨリした空気を払拭しようと徳寿はロールパンを用意した。


 「まあ、とりあえずロールパンでもどうじゃ?車をデモンズにやられてのぉ~。

  なんとかこれだけ持ってきたんじゃが・・・どうじゃ?」


 「へぇ~ うまそうだなぁ~。」


 ポンマンはロールパンに手をやるとムシャムシャ食べ始めた。ポンマンの笑顔を見たミカもロールパンを手にすると言った。


 「悩んでいてもなにも変わらない。今はとくべえさんのロールパンを食べよ。」


 「うん・・・そうだね。」


 ミカに促されてタカヒトも食べ始めた。笑顔でロールパンを食べ終えた彼らを見て徳寿はこれからのことを話し始めた・・・。



 「じゃあ、てんと・・・行ってくるね。」


 「あぁ・・・気をつけていくのだぞ。」


 タカヒトとミカは徳寿に借りた麒麟に乗り天道に向かうことになった。てんとと出会いずっと一緒にいられると思っていたタカヒトはまさかこんな別れがあることなど思いもしなかった。昨日徳寿に言われたこと。それは・・・・


 「おまえ達にはあることを頼みたいのだが今のままでは駄目じゃ・・・

  今のままでは地獄道で待っているのは確実な死だけじゃ!」


 徳寿はいままで見せたことのない厳しい表情をするとタカヒトの背中に冷たいものが流れた。しかしいままでいくつもの死の危険を乗り越えられたのはてんとをはじめ、たくさんの仲間の協力があったからである。この地獄道でも力を合わせればなんとかなるとタカヒトは徳寿に食ってかかった。少しの沈黙の後、徳寿は再び話だした。


 「ふむ・・・たしかにタカヒトにてんと、ミカそれにポンマンの能力を増し強くなってはいる。じゃが・・・この地獄道はいままでの世界とは異質なのじゃ。

 先の戦で修羅王と、いやドレイクと言ったかのぉ~。ドレイクの力を100としょう。赤紫タカヒトとなった力が105として先ほどのデモンズ一匹の力は・・・少なくみても80じゃ。しかも奴らは群れで行動をする。この意味がわかるかの?」


 この言葉にてんとも納得せざる得なかった。徳寿の判断は適切であり徳寿ほど能力を持った者がデモンズから逃げて隠れたのである。それだけこの地獄道が恐ろしく危険な世界であることだけはわかった。徳寿の話によればこの世界を乗り越えていくにはタカヒトやミカ、てんとにポンマンのソウルオブカラーの能力をあげるしかないらしい。

 そこで徳寿はタカヒトとミカに天道へ向かいある人物に逢うこと。そしててんとは地獄道の世界のどこかにいる水の精霊ウンディーネに逢うことを促した。


 「てんと達も気をつけてね。」


 麒麟はゆっくり歩き出すと少しずつ浮遊してそのまま駆けあがるように天空を目指していく。てんと達が遠く小さくなっていくのをタカヒトは涙を堪えながらずっと見つめていた。てんともまた、天空へと向かっていくタカヒトを眺めていた。見えなくなってもずっとその場を動こうとしないてんとにポンマンは声を掛けた。

           

 「てんと・・・なんか寂しくなるね。」


 「・・・いつか逢えるさ。」


 そう・・・また逢えると信じて・・・・


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