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未来のきみへ   作者: 安弘
修羅道編
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守るべきもの

 「なんたる醜態だ!貴様、責任の取り方はわかっておるのじゃろうな?」


 チモネガの罵声がリナのいる王座の間に響き渡る。近衛兵に囲まれたチモネガは王座より大理石の階段をコツコツと音を立てながら降りてくる。王座の間に並んでいる大臣達は身の引き締まる思いで額からは冷や汗が流れ落ちていく。ドレイクとリナはタカヒト達の捜索を諦めて城に戻っていたのだ。理由は腹が減ったからだとドレイクは豪語した。

 だが多くの部下を失い散々な戦果となったリナへの責任追及をチモネガは緩めなかった。リナはチモネガの罵声を甘んじて受け入れてはいたが更にチモネガは責任を取り自害するよう強要した。沈黙を続けているリナは短刀を取り出し自ら刃を首元に突きつけた。すると王座の間にドレイクが勢いよく入ってきた。


 「リナ、やめておけ。」


 「何を言っておる?このわしが命令したのじゃぞ!」


 激怒したチモネガの命令にリナは再び短刀を首元に近づけたがその短刀をドレイクが取り上げへし折った。大理石の床に折れた短刀が落ちると王座の間に鳴り響いた。ドレイクの身体が茶色の輝きを放っていくとチモネガの顔が蒼ざめていく。

 近衛兵はチモネガを守るべく茶ドレイクを包囲したが槍を持つその手はガタガタと震えている。雇用する側のチモネガと雇用される側のドレイクという関係なのだがチモネガは常にドレイクを恐れていた。近衛兵の後ろに隠れながらもチモネガは生きた心地がしなかった。


 「リナに命令したのはこの俺だ!すべての責任は俺にある。

  バーカーサーの全滅とシルフの奪取は命にかけて約束しよう。」


 「わっ、わかった。でっ、ではおまえにすべてを・・・任せよう。」


 「リナも連れていくぞ。必要な人材だからな!」


 蒼ざめた表情を浮かべるチモネガにドレイクは一礼するとリナを連れて出て行った。近衛兵の背に隠れていたチモネガはホッと胸をなでおろす。大臣達もホッとした表情を隠せずに穏やかな空気が流れていた。

 部屋に戻ったドレイクはドサッと椅子に座るとグラスに注いだ酒を飲み干した。リナはしばらく黙ってドレイクを見つめていたが拳を握り締めると感情を一気に爆発させた。


 「なんでチモネガにあんな馬鹿な約束したの?」


 「言ったろ。すべては俺に責任がある!」


 「でっ、でも・・・だからってあんな約束をするなんて!」


 リナは涙を拭いてゆっくりと座っているドレイクに近づいていくと肩に手をそっと押し当てる。その悲しげな表情をするリナの横顔を見つめながらドレイクはポツリと言った。


 「なんでだろうな。軍隊を率いて国を創ろうとして・・・その為たくさんの命を、すべてを奪い取ってきた。自分が傷つくのならほかの奴を殺せばいいと思っていままでやってきた・・・だがおまえに出逢って変わったみたいだ。」


 真っ直ぐ見つめてくるドレイクにリナは顔を赤らめうつむいているとその身体を押し寄せて抱きしめた。沈黙の時間が二人の間にゆっくりと流れて耳まで真っ赤にしたリナはただドレイクの温もりを感じていた。

 それから数日後、ドレイクはリナのみを連れてバーカーサー討伐作戦を実行すべく出立した。敵がソウルオブカラーの使い手であるかぎり、こちらもソウルオブカラーの使い手で対応しなければならない。故にそれ以外はすべて足手まといになるとバルキリー精鋭部隊の討伐作戦への投入を拒んだ。


 「力の在りすぎる存在は・・・危険じゃ。」


 ドレイクとリナが討伐へ向かった次の日、ドレイクに疑念を感じていたチモネガは自らバルキリー精鋭部隊全勢力を率いてドレイク達の後を追った。


 「てんとぉ~~、なにやってるの?」


 ドレイクの襲撃に怯えながらもなんとかノームの森から脱出することが出来たタカヒト達はバーカーサーの避難先である湖の畔に戻ってきた。ヘイパイスとフーウは他のバーカーサーと共に湖の畔に残してタカヒト達は来た道を戻る。てんとの考えで以前リナに破壊されたコテージ跡地に新たなコテージを設置してここでタカヒトとミカ、ポンマンの四名はドレイクに対峙することにした。

 戻った日からてんとはコテージの外に出ると毎日同じ場所で瞑想していた。いままでにないてんとの行動にタカヒトは困惑していた。タカヒトは思い切って問い掛けたのだが問い掛けを無視するかのようにてんとは黙ったまま瞑想を続けた。動揺するタカヒトにミカが近づいてきた。


 「タカちゃん、てんとには考えがあると思うの。だからそっとしておこうよ。」


 「・・・・うん」


 ミカに言われて少し寂しい想いをしながらもタカヒトはその場をミカと去ろうとしたその時、てんとが目を開けた。


 「タカヒト、ミカ!奴が、ドレイクが来るぞ!」


 「??? 何で分かるの?」


 「移動しながら説明する。ついて来るのだ!」


 ビックリして声をあげたミカにてんとはフーウより能力を高めてもらったことを伝えた。風を読むことで遠方の気配を感じ取る事が出来るようになった事を。風の知らせではドレイクがリナを連れてこの湖の近くまで向かって来ているらしい。迎え討つための準備を急いでするように指示するとタカヒト達は言われるまま行動した。

 てんとの予想ではドレイクとリナのふたりだけで攻めてくるらしい。ということはドレイクはバルキリー精鋭部隊を気にせず総攻撃をいきなり仕掛けるはずだ。こちらも最初から総攻撃を仕掛ける作戦を行う必要がある。コテージの護りを堅めているタカヒト達を見ながらてんとの心には少し不安が残った。ドレイク達の遥か遠く後方から多数の気配が揺れ動いていると風が伝えてきたからだ。その不穏な動きを気にしながらも今はドレイク戦にすべての力を出すと不安を振り払おうとしていた。


 「リナ・・・奴らの気配を感じるか?どうやら戦闘態勢は整っているらしい。」


 「どういう作戦でいくつもり?」


 「作戦などないさ。奴らもこちらの気配を感じているはずだ。ならば小細工など無用。

  一気にいくぞ!中級闘気 アースクエイク!」


 馬上から闘気を高めるとドレイクの身体が茶色に輝き始める。それと同時にタカヒト達のいる地面が急にしかも立てないくらいに激しく揺れだした。タカヒト達は立っていることが出来ずに地面に膝をつきながら身動きが取れないでいるとそこに雷獣が迫ってきた。


 「うわぁぁあああ、来るよ、来るよ。てんとぉぉおお~~!」


 「安心しろ、タカヒト。予想はしていた。静かなる力を持つ者よ。我に力を!

  緑玉理力 浮遊フワフワ!」


 目前まで迫ってくる数匹の雷獣にタカヒトが身動きを取れずに慌てふためいていると緑てんとがタカヒトの目前に来た。タカヒトとミカそれにポンマンの身体がふわりと浮きあがり雷獣をかわしていく。 


 「あわわゎゎゎ~~~!」


 タカヒトが声をあげて慌てたが次第にその環境になれていく。足元には何もないがフワフワして雲にでも乗っているような感じだった。依然にもこれにより危機を免れた事もあり今回も地震からの衝撃は全く受けなくない。と同時に牡丹リナの雷獣からも身を守る事が出来ている。そんな頼りになるてんとにタカヒトがポツリと言った。


 「・・・・これって浮遊フワフワって言うんだね。」


 「うっ、うるさい!名などどうでもよい。とっ、とにかくこれで攻撃は防げる!」


 「ところがどっこい、そんなにうまくはいかないぜ!

  茶玉上級闘気 オーバークエイク!」


 浮遊しているてんと達の眼下に馬に乗った茶ドレイクと牡丹リナがいた。そして茶ドレイクの闘気が著しくあがると揺れていただけの地面が荒々しく陥没、突起を繰り返し地面の動きが激しくなっていく。そして亀裂からマグマが噴きあがってきた。マグマは火山弾とともに浮遊しているてんと達まで飛んできた。


 「桜玉理力 サクラリーフ」


 桜ミカの機転によりサクラリーフでなんとかマグマと火山岩は防ぐことが出来たが茶ドレイクの後ろではリナの牡丹色がさらに輝く。


 「牡丹玉ハイエレメント インドラ!」


 「えっ?あぁぁぁ~~ふっ、くっ!」


 黒雲が広がると無数の雷がタカヒト達に襲い掛かった。サクラリーフでなんとか凌いではいるが上から雷撃と下からマグマと火山弾に桜ミカの理力は消耗していく。タカヒトは桜ミカの苦しむ表情を身ながらも何も出来ない自分に嫌気がさした。そんなタカヒトの意識の中で赤玉が再びささやいた。


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