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未来のきみへ   作者: 安弘
餓鬼道編
30/253

新たなる敵

 紅リディーネは更に闘気を高めていく。今度は周囲の空気どころか地上までビリビリと揺れていく。それはリディーネが最高の技である紅玉上級闘気を繰り出そうとしているということだ。その行動に気付いた赤玉は意識の中に存在するもうひとつのソウルオブカラーに話しかけた。


 (紫玉、聞こえっか?ちょっとマズイことになった。俺様を助けろ!)(赤玉)


 (・・・・・)(紫玉)


 (おい、聞こえてんだろ?奴は上級でくるらしい。俺様の上級だけじゃあ、力が拮抗するだけだ。おまえの上級理力も必要だ!)(赤玉)


 (・・・・・そんなことは知らん。私はタカヒトの為に存在している。)(紫玉)


 (そのタカヒトに危険が迫ってるつうの!それにそのツレもヤバイ。

  どうすんだ?厖大なる力を持つ者。)(赤玉)


 (・・・・・好きにしろ。)(紫玉)


 紫玉の意向を聞き取った赤タカヒトは闘気を全開にすると紅リディーネと同様に周辺の空気がビリビリと揺れた。最高の闘気を放つ赤タカヒトは満足げな表情をして左手を紅リディーネに向けた。紅リディーネも両手を赤タカヒトに向けて標準を合わせる。拮抗する力に大地が、空気がビリビリと震えあがる。


 「紅玉上級闘気 朱玉!」 


 「赤玉上級闘気 メガフレア!」


 業火の火炎玉とは比べ物にならない位の巨大な大火炎玉の朱玉とそれに匹敵する巨大な赤色の大火炎柱のメガフレアが激突する。周辺の紙竹林が着火して燃え盛り、更に爆風で燃え広がる。目の前に広がる大火炎地獄に緑てんとの球体シールドと桜色ミカのサクラリーフの防御によりなんとか火炎と爆風の衝撃から皆の身を守ることが出来てはいる。紅リディーネの朱玉と赤タカヒトのメガフレアは同等の威力を持ち、それらは均衡を保っていた。


 「なかなかやるわね!私の朱玉と対等の威力を持っているなんて。」


 「対等?バカなこと言ってんじゃねえよ! だからバカ女って言ってんだよ。」


 「アンタ・・・・何言ってんの?」


 「おまえは両手で上級闘気を繰り出しているよな?俺様は左手のみで上級闘気を繰り出しているんだぜ。つ・ま・り、右手は空いているってわけ・・・タカヒトとの潜在能力に差が出たな!」


 「あっ!・・・ああぁぁ!!」


 「やっと気づいたか、バカヤロウが!喰らいやがれ! 

  紫玉上級理力 アルティメットキャノン!」


 赤紫タカヒトは紫色に輝く右手を空高くあげると厖大な数のアレストが現れた。アレストは円形に集結すると列を成して巨大な砲筒を形成した。その砲筒から紫色の波動砲がリディーネに向けて発射された。拮抗していた朱玉とメガフレアの均衡がアルティメットキャノンによって崩壊される。赤色の大火炎柱と紫色の大波動砲が混ざり合い、ほとばしる赤紫色の大火炎波動砲が巨大な球体の朱玉を貫き紅リディーネに襲い掛かる。


 「おまえの負けだ!赤紫玉上級複合技、紫炎キャノン!!」


 「ひぎゃああああああああ~~~!」


 赤紫色の大火炎波動砲は紅リディーネの身体に突き刺さると激しく燃え上空へと押し上げていく。苦しみ悶えながらリディーネの身体はどんどん上空に飛ばされていく。次の瞬間、赤紫色の大火炎波動砲にエネルギー体が衝突すると軌道が強引に変えられた。上空へ飛ばされていたリディーネは勢いを失い、地上へ向かって落ちていくとひとつの人影がそれを受け止めた。

 肩まで伸びた黒髪に腰には太刀をさげている。その姿は人道の世界で西洋の騎士を思わせるが眼は恐ろしく黄色く光っている。頭には角が生えてその風貌は正に鬼そのものだ。紫炎キャノンのダメージによりリディーネは気を失っていたがその身体をしっかり受け止めていた。その人物は赤紫タカヒトを上空より睨みつけている。


 「なんだぁ~、てめえは?」


 「我が名はアレス!破壊神に仕える三獣士のひとり。

  いずれお前ともあいまみえることもあろう・・・その時は容赦するつもりはない。」


 「はあぁぁ~ん・・・なに言ってやがんだ、バカ野郎が!」


 赤紫タカヒトを無視するとアレスはリディーネと共に姿を消した。炎で包まれていた紙竹林は燃え尽き灰と化した大地は静まりかえっていた。大火炎地獄の戦いが起きたのだから当然なのかもしれないが大地のほぼ全域を焼き尽くした赤タカヒトの力にてんとはリディーネに匹敵する脅威に感じた。もちろん脅威はそれだけではないのだが・・・。

 てんと達のいる場所に赤紫タカヒトは笑顔を浮かべながら戻ってくるとてんとが第一声を放った。


 「赤玉、意識と身体をタカヒトに明け返すのだ。」


 「・・・助けてもらったのにごめんなさい。私も元のタカちゃんに戻ってほしい。」


 「チェッ、・・・分かったよ。でもな、また俺様の力が必要になるぜ。さっきのアレスとかいう奴はかなり強い。俺様と紫玉の複合技を跳ね飛ばすほどの力を持ってるくらいだからな。まっ、その時はまたこの俺様が力を貸してやるぜ。あっ!そうそう意識をタカヒトに明け渡したらコイツ気絶するぜ。なんたってタカヒトの潜在能力を一気に限界まであげたんだからな。まっ、死んだりしないから安心しな。じゃっ、またな!」

 

 フッと赤色と紫色の輝きがなくなるといつものタカヒトの姿に戻った。身体をふらつかせながらミカ達の様子を伺っている。


 「ミカちゃん、てんと。皆、無事だった・・・んだね。良かった・・・バタッ!」


 「タカちゃん!タカちゃん!しっかりして!・・・タカちゃん!!」


 タカヒトは皆が無事なのを確認するとニッコリしてそのまま気絶して倒れ込んだ。必死のミカの叫び声にも反応しないタカヒトは深い意識の底へ向かっていた。てんと達が駆け寄り気絶しているタカヒトの周りに集まった。



 「ミカ、タカヒトの容態はどうだ?」


 部屋に入ってきたてんとはミカに問いかけた。リディーネに辛くも勝利する事が出来たタカヒトであるが身体への負担は予想以上に大きく近代独立国家、いや崩壊後のオメガに戻ってから三日間タカヒトはずっと眠り続けていた。オメガに戻った時には発熱と大量の汗で苦しんでいたタカヒトだったがミカの献身的な看病のおかげで少しずつではあるが回復へと向かっていた。


 「うん・・・もう熱もないし大丈夫だよ。」


 「私にはこういうことが出来ない。ミカが居てくれたお陰で助かった。礼を言おう。」


 「礼だなんて・・・当たり前のことだよ。」


 「そうか・・・私の見てきた世界ではミカのような考えを持った者がいなかった。

  誰に対してもミカはそのように行動するのか?」


 「困った人がいたら手を貸すのは当たり前だよ・・・でもタカちゃんは特別かな。」


 「特別・・・・?」


 少し顔を赤らめてミカは汗ばんだタカヒトの顔をタオルで優しく拭った。ミカはタカヒトと出会った頃のことをてんとに話した。それはミカがまだ幼稚園に通っていた時にタカヒト達が引っ越してきた頃の事だ。タカヒトは父親と母親の三人家族だった。父親の仕事の関係で地方への引越しが多かったらしいが、子供の教育の為にと仕事を変えて一戸建てを建て家族でこの地で暮らすことになった。

 その頃のタカヒトは人見知りが激しくミカが話し掛けても母親のうしろに隠れてしまうような子供だった。小学校へ入学した時にはミカと話せるくらいにはなっていたが、タカヒトの人見知りは直らずにほかの児童からイジメられるようになっていく。そんなタカヒトをイジメから守ったのがミカだった。ミカは明るく活発な女の子でクラスの男子や女子からも人気があった。タカヒトをかばうミカに対して「イジメに巻き込まれるからやめたほうがいい。」と言う女の子達がいたがそれでもミカはタカヒトを見捨てはしなかった。


 「そう、特別・・・なんかタカちゃんって心配なんだ。なんか守ってあげなきゃってそんな気持ちになるの。でもこの前の戦いで私、タカちゃんに守られた。赤玉や紫玉の助けがあったのはわかってるけどタカちゃんに守ってもらって・・・すごく嬉しかった。」


 ミカは顔を赤らめながらまたタカヒトの額の汗を拭った。タカヒトを守るとは言っても守ってもらうのは嬉しいらしく笑顔でタカヒトの看病をしている。

 しかし今回のようにタカヒトに負担が掛かるようでは先を乗り越えてはいけない。やはり自分達の能力を高めてタカヒトに負担が掛からないような戦い方をしていかなくてはならない。てんとはこの時そう考えていた。


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