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未来のきみへ   作者: 安弘
人道編
251/253

地獄の王

 「ちょっと、東にある小国で紛争が起こったって本当なの!」


 「ああ、それってたぶんジェイドじゃない。ちょっと前に連絡あったし。」


 「・・・なんであんたが知ってるのよ?」


 「だって俺って破壊神だし!」


 「破壊神はアタシでしょ!ふざけたこと言ってると焼き殺すわよ!!」


 地獄道に戻ったリディーネとアレスは地獄の統一に成功していた。アレスの強さに地獄道乗っ取りを企んでいた破壊神七十二布武は完全平伏した。そのアレスに大して絶対の力を誇るリディーネを真の破壊神と呼ぶ者も少なくない。そんなふたりだが子供には恵まれて、アレスは25人目の末っ子のオムツを代えていた。


 「もう何回もやっているはずなのに満足にオムツも代えられない。まったく情けない。」


 「ゴメンよ、リディーネ・・・」


 額に汗をかきながらアレスは必死にオムツを代えていると破壊神七十二布武のアモンがやってきた。地獄道を統一し七十二布武には領地を分け与えたのだがその当時から七十二布武のベリトとザガンとでトラブルが起きていた。そのトラブルが表面化し、戦闘が行われているらしくそれを収めてほしいというのがアモンからの嘆願であった。その嘆願に激怒したリディーネは火炎を全身に出現させた。


 「アレスは今、オムツを代えてんのよ。アタシのやりかたが気に入らない輩は焼き殺してやるわ!」


 「リディーネ、仕事が終わったらコンビ二で離乳食を買ってきてね。」


 「フン、アンタこそちゃんとオムツ代えるのよ。アタシが帰って来た時に終わってなかったらアンタも焼き殺すわよ!」


 リディーネの喝により地獄道は平和?な時代が数千年ほど続くのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 「天川係長!例の物件について現場監督から問い合わせがきてます。」


 「わかった。すぐに行くよ。」


 隆人は図面を手にすると急いで会社を出た。タクシーに乗り込み一路、現場へと向う。高層ビルの立ち並ぶ開発地の一角に建設中のビルがある。隆人の勤める建設会社が請け負った物件だ。大学を卒業して建設設計士として社会に出てから3年の月日が経っていた。設計能力を買われた隆人は若輩者でありながらも大手建設会社の設計部係長になっていた。異例の出世ではあるが、腰の低いところは大人になっても変わってはいなかった。現場に到着した隆人は急いで二階建ての現場仮設事務所に走るとドアを開ける。中では腕組みをした後藤が待っていた。後藤は現場の監督達をまとめる統括責任者であり、今回の図面に対してクレームを言ってきた本人だ。


 「おいおい、係長さん。こんな図面でわかるわけねぇだろ!」


 当初、図面に関しては隆人が一任され、まとめてきたのだが諸事情により隆人に代わり別の設計士が担当していた。その図面に対して、「解かり難い」と現場内で不満が出てきたので今回のクレームになったと後藤は説明した。隆人が図面に目を通すと細かい部分の説明を始めていく。


 「すみません・・・・えっと、ここはですね・・・」


 「おっ、そういうことか!やっぱり天川さんだな。なぁ、ここの担当に戻ってくれねぇか?ほかの奴だと役不足なんだよな。」


 鬼の形相からすっかり仏の顔になった後藤に隆人は頭を下げるしかなかった。それでも引き下がらない後藤に隆人は口をひらいた。


 「すみません・・・実は・・・」


 「なんだ、そうだったのか!それなら仕方ねぇな。よし、それまで俺達でなんとか頑張ってみるよ。」


 「お願いします。必ず戻ってきます。」


 頭を下げ、隆人が現場仮設事務所から出ていくと職人達が手を振って見送ってくれた。図面の細かい部分を訂正するように担当設計士に携帯電話で伝え終えると携帯電話が鳴った。


 「えっ、生まれる!わかりました。すぐに行きます。」


 母親からの電話を受け隆人は通りかかったタクシーに乗り込むと病院へと向う。しかし渋滞につかまり、車が動かなくなった。「ここで降ります」とタクシーを降りた隆人は歩道を全速力で走っていく。走っていく最中、隆人の脳裏にはあの時の出来事が蘇っていた。


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