崩壊アルヒャイ・キャッスル
「なんじゃ、どうしたというのだ!」
目前にまで迫ってきたマスティアが急に動きを止めたことに徳寿は驚愕した。浮遊していたマスティアも地面に落下しながら消滅していく。それと同時にアルヒャイ・キャッスルも崩れ落ちていく。劣勢に追い込まれながらもなんとか生き残ることができた徳寿はその場に座り込むとミカもリナも膝をついた。
「どうやら、タカヒト達がやったようじゃ!皆、退避するんじゃ!」
「退避って言っても消耗しきった私達には・・・」
もはや立ちあがることすらできないほど疲れきったリナ達に崩れ落ちてくるアルヒャイ・キャッスルの残骸から身を守る術はなかった。遠くのほうからリナ達を呼ぶ声が聞こえると視線を向けた。あちらこちらから煙を噴きながら近づいてくるロードギアの姿が見えるとミカ達のもとに着陸した。到着するやロードギアの右脚部が折れて体勢を崩したが右腕で支えることでなんとか持ちこたえた。ハッチを蹴飛ばすと中からマイコが顔を出した。
「皆、乗って。早く!」
なだれ込むようにミカ達はせまいコクピットに乗り込むとふらつきならがもロードギアは上空へと浮遊していく。その直後、ミカ達のいた場所は残骸が降り瓦礫の山と化した。間一髪で難を逃れたミカの目には完全に崩れたアルヒャイ・キャッスルが映った。フラフラしているロードギアを操縦しているマイコが突然、声をあげるとモニターを見ながらレバーを引いた。
「緊急着陸するから掴まって!」
急な一言にミカ達は掴まるものを捜しそれに掴まるとロードギアが急降下していく。モニターに深い森に覆われた樹海が近づいてくるとマイコは左右のスロットをまわし、レバーを前にたおした。バリバリとロードギアが枝に当たる音がして着地寸前のところでフワッと浮き上がると地面に着地した。その際、左脚部は大破、胴体部までは潰れることはなかったが完全にロードギアは沈黙した。木の枝を退けながらマイコはコクピットから飛び降りると見るも無残な姿に肩を落とした。
「マイコちゃん・・・・」
落ち込んでいるマイコに声をかけられないミカは黙って近づく。マイコの頬からは涙が流れていた。その涙を拭くとマイコは言った。
「あ~あ、ミゲじいに叱られちゃうよね・・・でも、皆を守ってくれたんだもん。ミゲじいだって許してくれるよ。」
「マイコちゃんとロードギアのおかげで助かったんだよ。本当にありがとう。」
「あと、ミゲじいもね。」
「そうだね。ミゲールさんとマイコちゃんとロードギアのおかげだよ。」
マイコが歯を見せて笑うとミカも笑顔を見せた。そうこうしていると徳寿がコクピットの中からようやく出てきた。腰を打ったようでかなり痛そうな表情をしながらリナに介抱されている。周辺を偵察していたリディーネが戻ってきたがタカヒト達の情報はなにひとつなかった。心配したミカが徳寿に問い掛けてみた。
「とくべえさん、タカちゃん達はどうなったの?」
「わからん・・・アルヒャイ・キャッスルが消滅したということはピサロも消滅したと考えてよいじゃろう。あとは無事じゃと願うしかあるまい。」
「そんな・・・」
アルヒャイ・キャッスルから少し離れた樹海にロードギアは着陸した。ミカは樹木の割れ目から崩れたアルヒャイ・キャッスルを見つめているとリナがそっと肩に触れた。
「心配しないで、ミカ。大丈夫、あんなことで死ぬような人達ではないわ。」
「・・・・うん」