圧倒的力の差
「白虎と呼ばれる者・・・取るに足らない存在であった。四神の中で最も弱い存在かもしれん。残念だ・・・私は強者を望んでいる。」
「ぐう・・・まだだ!まだ、終わっちゃあいない!!」
白虎アレスは魔人のこん棒を支えに立ちあがるがその膝はガクガクしている。口から血を吐き出すと顔面は蒼白していた。対するデュミナスは両腕を組み余裕の表情すら伺える。
「力の支配者であるこのデュミナス相手では白虎とてこの程度のもの。恥じることなどない。他の者であっても同じ運命を辿っているであろう。」
「運命だって・・・あいにく俺ってそういうの信じないんだよな。信じられる者は己だけ・・・力だけですべてを乗り越えてきたんだ。」
「これは面白いことを言うもの・・・己が力のみで力の支配者を乗り越るつもりらしい。」
「そうさ・・・四神で最も破壊力を誇る白虎の力。見せてやる!」
魔人のこん棒を振り被るとデュミナスに振り落とす。だが全身を鎧で覆うデュミナスの頭部にこん棒が触れた瞬間、それは粉々に砕けた。こん棒の柄だけを見つめていた白虎アレスの瞳に黒い影が映ると衝撃と共に身体が九の字に折れ曲がる。デュミナスの拳は白虎アレスの胸部を貫き、背中から血だらけの腕が見えた。大量の吐血を地面に撒き散らした白虎アレスの視界は薄っすらと膜が張ったようにボヤけその場に倒れ込んだ。
「我が拳を受け、死なぬとは・・・耐久力だけはある。」
デュミナスの右肘まで血塗れとなり、その血は地面にポタリポタリとたれ落ちる。身動きもなく、足元に倒れているアレスを見下すデュミナス。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「我が疾風魔剣を前に死ななかった者はおまえだけだ。だがその抵抗も空しい。餓鬼道の王、鬼王・・・いや、氷水の戦士と呼ぶべきか。」
「ハァ、ハァ、ハァ・・・・」
優雅に立っているスローネとは逆に蒼龍ジェイドは氷刀流穿剣を両手に握りながらも身体中は斬り刻まれ、息もあがり、片膝をついた状態だ。スローネと蒼龍ジェイドの勝負はまさにスピード対決でもあった。全身が刃で出来たスローネは素早く移動すると蒼龍ジェイドに襲い掛かる。それを流穿剣の二刀で応戦する蒼龍ジェイドはスローネの斬風に全身を斬り刻まれていく。時間にして数分経った頃だろうか・・・息もあがり、片膝を地面につけた蒼龍ジェイドがそこにいた。地面につけた片膝から血が流れ、切断された右足はスローネの足元に落ちている。
「そう睨む事はない。どう足掻いても逃れられない恐怖は存在するものだ。貴様は生まれながらにして罪人。その罪を私が裁いてやろう。お前はここで死ぬべき者なのだから。」
「・・・・」
「おまえの心は手に取るようにわかる。何故と思っているのだろう。何故自分が罪人なのかと・・・おまえの魂が積み上げてきた罪はそれほど深いものということだ。」
「・・・たった一度の過ちで罪人まで堕ちるというのか。」
「理解力のあるお前ならばわかっているだろう。そういうことだ。」
「・・・罪人でもいい」
「・・・」
「どれほどの罪を重ね、地獄の奥底に堕ちようが・・・お前だけは倒す!」
「もう少し賢い者だと思っていたのだが・・・・愚かな者だ。」
「誰かの影響かもな!」
両手に持つ流穿剣を振り被るとそれをスローネに投げた。スローネはそれらを軽くあしらうとその視界に蒼龍が迫ってくるのが見えた。蒼龍が顎を開くとそこから神々しい蒼い輝きが放たれた。蒼い輝きにスローネは包まれていく。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「この地で玄武の力を完全に解放したと聞いたのだが・・・この程度なのか?」
「ぐぐぅ~~・・・なめんなよ、コラ!」
玄武ドレイクは握られた巨大な右手を両手で掴むとキュリオテスの顎を蹴り上げた。一瞬、怯んだキュリオテスの手が緩むと後方に身体を回転させながら地面に着地する。蹴られた顎を触りながらキュリオテスは口を開いた。
「唯一の武器を失った貴様に勝機があるとでも?」
「勘違いするなよ。剣術だけが俺のすべてじゃないぜ!」