朱雀と鳳凰
「容赦しないだと?笑わせる・・・お前の望み通りに創造神システムを完全に開放してやろう!喜べ、これが俺達の力だ!」
鳳凰朱雀タカヒトは両腕を頭上にあげるとほとばしる輝きに包まれた。同じ光をアルヒャイ・キャッスルの外で戦っているミカ達は見た。
「あの光は・・・タカちゃんの光だ!」
「いよいよ、創造神システムの開放じゃな!」
「創造神システムが開放されていくわ。私にはわかる・・・いよいよ、六道を私のモノとする瞬間が近づいている!」
両手をあげて喜ぶピサロ。だが、鳳凰朱雀タカヒトはニヤリと笑みをこぼすと床に両手を押し当てた。鳳凰朱雀タカヒトを北に西南北に神獣のインフェルノ、パラディーゾ、リッパーが配置された。三匹の神獣達は光を放つと姿を消していく。その光景にピサロの身体が震えていく。
「まっ、まさか・・・」
「朱雀、玄武、蒼龍、白虎の四神が陽とすれば、鳳凰、インフェルノ、パラディーゾ、リッパーは陰の四神。陽の四神が創造神システムを開放するのとは逆に陰の四神はそれを封印する者達。すでにお前の手から完全に創造神システムは切り離されている。」
「いやぁ~!私のシステムが・・・創造神システムが・・・」
頭を両手でおさえ、その場に座り込んでしまったピサロを鳳凰朱雀タカヒトが見下ろす。創造神システムの崩壊により、ピサロの描いていた世界は消滅していく。完全な敗北を受け入れた瞬間に見えた・・・。
「フフフ・・・ホッ、ホホホ・・・なんちゃって!」
「!!!」
「あなた方が創造神システムを私から取り除こうとしていたことなどすでに承知していましたわよ。もちろん対応したプログラムはすでに打ち込んであります。ご心配には及びません。それと・・・レインさんの対応も済んでおりますから。徳寿さんの切り札ですわよね。」
「・・・私がシステムの一部だといつ気付いた?」
「徳寿さんが忍び込んだあたりからですわ。十六善神の中であなただけが正体を隠してきました。それがかえって怪しかったものです。あなたがウィルスであることはすでに承知しております。邪魔はさせませんわよ。」
右手を差し出したピサロから一閃が飛ぶとレインはその場に片膝をついた。膝からは大量に血が流れ落ちる。鳳凰朱雀タカヒトの思惑は完全に崩壊、再び創造神システムを掌握したピサロを前に腰を落とし、身構えた。
「創造神として最初の仕事を始めましょうか。しかし場所がここでは物足りません。私に似合うステージをご用意いたしました。」
創造神ピサロは指をパチンと鳴らすと周囲の風景が変わっていく。周りを見渡すと小さな星と惑星が無数に広がるそこは宇宙であった。
「あそこに見えるのはフォトンベルトと呼ばれる極リング銀河です。私の納める六道のうち、フォトンベルトを通過する世界がいくつかあります。中には消滅する世界もあるでしょう。しかし生まれ出る世界もあります。私は創造神としてすべての生死をコントロールしなければなりません。どうです、最高のステージでありませんか。」
「たとえ消滅したとしても、お前にコントロールを任せたつもりはない。」
「・・・・」
両手を水平に伸ばし、神々しい光を放つピサロはまさに神そのもの。だとすれば三対の翼をもつ鳳凰朱雀タカヒトは神に逆らう・・・戦いは想像を絶していた。歴代の大戦に匹敵する、いやそれ以上の戦いであろう。歴代の大戦であっても創造神に逆らう者など誰一人いなかったはずである。今、その創造神に立ち向かう者がいる。
「創造神に逆らう愚か者・・・神の鉄槌を差し上げましょう。」
創造神ピサロから流星群が迫ってきた。鳳凰朱雀タカヒトはそれらを避けるように飛行していくとその両手から火炎玉が放たれた。創造神ピサロはそれを防ぐこともせず、目前に張ったシールドがそれらを弾き返した。鳳凰朱雀タカヒトは火炎粒子砲を放つ。だがそれすら弾き返されると創造神ピサロから波動砲が放たれた。波動砲をかいくぐりながら鳳凰朱雀タカヒトは創造神ピサロに接近していく。右拳を握り締めるとシールドを殴りつけた。
「フフフ、無駄なことを!その程度で破壊されるほど・・・!」
鳳凰朱雀タカヒトの右拳にシールドから亀裂が発生した。その亀裂は大きくなり裂けた瞬間、創造神ピサロの視界に鳳凰朱雀タカヒトが映った。すぐさま攻撃を回避した創造神ピサロは冷静さを保つのが精一杯であった。完全に回避したはずがその頬から血が流れ落ちた。創造神ピサロの冷静さはすぐに怒りへと変わっていく。
「この私に・・・この創造神に・・・傷を負わせることなど・・・あってはならない!」
純白の翼を羽ばたかせた創造神ピサロは槍とも斧ともとれるハルバートと呼ばれる武器を手にすると鳳凰朱雀タカヒトに襲い掛かる。