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未来のきみへ   作者: 安弘
新天道編
231/253

罠に落ちた者達

 「ねぇ、アレス。これからはミカのこと怒らせないようにしようね。」


 「そっ、そうね・・・タカヒトにも教えなくちゃね。」


 「うん?リディーネ、アレス、何か言った?」


 「ううん、なんでもない。こっちの話だよ。こっちの!」


 「そう?」


 ミカはリナとの会話を再び始めるとリディーネとアレスはホッとした。皆が和やかな雰囲気だがドレイクだけは違った。アリシアの逃走を許したことをドレイクはかなり後悔していた。すでにピサロには報告がなされているであろう。そうなれば必然的に総戦力をぶつけてくることは間違いがなかった。しかしそれはドレイクの考えすぎであった。アリシアはピサロに報告しなかったのだ。何故・・・


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 「ヒィィィ・・・アッ、アザが・・・」


 鏡をバラバラに砕くとアリシアはその場に座り込んでしまった。ここはアリシアの自室。顔の痛みを感じたアリシアは部屋に入るとすぐに鏡を取った。そこに映ったのは顔の半分が赤く腫れあがった姿だった。薬箱を手にするが何を手にしてもそれが治まることはなかった。化粧でアザを消すように誤魔化し、髪でアザを隠したアリシアの眼は鋭くなっていく。


 「ピサロ様に逢えない・・・殺してやる!私の幸せを奪いしあの者どもに死を与えてやる!!」


 唇を噛締めると血が流れ落ちた。その血を口紅代わりに指でなぞるとその場から姿を消した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 「ねえ、ここって闘技場っぽくない?」


 「そういえばそうかな。」


 リディーネとアレスはキョロキョロと辺りを見渡した。観客席らしきものが円を描くように配置されて、階段を降りたその中心には円状の石畳の床が敷き詰められている。階段をドレイクが降りていくと弦楽器を奏でる音が聞こえてきた。


 「アリシアか!」


 「ホッ、ホホホ・・・待っておりましたわよ。」


 「お前一人ってことはないだろう・・・んっ?髪形を変えたのか?」


 ドレイクの何気ない一言であったが髪型を変えた理由はリナとミカ、リディーネにだけにわかった。必要以上に濃いメイクに隠すようにセットされた髪形。彼女達だけにしかわからない理由を悟られたアリシアは唇を噛締めた。


 「髪形を変えた・・・私の幸せを奪いし者どもに耐え難い苦痛と死を与えてやる。」


 「やるってのか!だが俺達に勝てるか?ピサロもいねえのによ!」


 ドレイクの言葉は正しかった。四神のうち、玄武のドレイクと白虎のアレスがいる。火炎使いのリディーネと雷撃使いのリナ、そして絶対防御を誇るミカがいる。四天王のアリシアとはいえ、戦況は圧倒的に不利のはずであった。


 「ホッ、ホホホ 勝算なく、戦う者がいるとでも?」


 「いい覚悟だ!いっちょ、やってやるぜ!」


 ドレイクは飛び降りると闘技場に着地した。その後をアレス、リナ、リディーネそしてミカの順で降りてきた。アリシアを取り囲んだドレイク達が一歩前に進んだ瞬間、床が落ち、そのまま落下した。


 「くそっ、罠か!抜刀術奥義 戊の型、速連波!」


 斬神刀から斬撃が連続して放たれるとそれは落ちていく地面に激突した。地面からの逆風がドレイク達の落下速度を落とすと軽やかに着地した。着地と同時にドレイクは周囲を警戒したがアリシアの姿はなかった。


 「アリシアの奴、どこに行きやがった!皆、無事か?」


 「ええ、ミカも私も大丈夫よ。」


 「リディーネちゃんと俺も大丈夫だ!」


 「ここはどこなんだ・・・岩場が目立つようだが・・・」


 洞窟のようなその場には明かりはなく、岩を伝わって水滴がピシャンピシャンと落ちる音がする。静けさが漂う中、アリシアの声だけが聞こえてきた。


 「お待たせしましたわ。これよりこの私がプロデュースするショーをお楽しみくださいませ。御代はあなた方の命を頂きますわ。では、ご堪能あれ。」


 「何を言ってやがるんだ・・・んっ、なんだ、、アレ?」


 薄暗い洞窟の先からゆっくりと何かが近づいてくるのが見えた。ドレイクが目を細めるとそれは巨大な二足歩行のワニだった。


 「ワニか・・・アレ?」


 「違う!アレは恐竜よ!」


 ミカが叫んだ。ドレイクやリナ達は恐竜という動物を知らないがミカが人道の世界で絶滅した動物と説明した。なんとなく理解したドレイクだったがさほど警戒はしていない。


 「デカいだけのワニだよな。だったら俺の斬撃で十分だな。」


 ドレイクは斬神刀を鞘から抜くと刃先を地面に向けた。そのまま振り上げると一気に振り下ろした。ひとすじの斬撃風が恐竜に迫る。恐竜に斬撃が激突したがダメージがまるでない。


 「無傷だと!」


 「ホッ、ホホホ。おバカなものね。」


 「アリシアか!どこにいやがる?」


 「ウフフ、私はここよ。私の会いたかったらセベクさんを倒してくださらないかしら。言い忘れましてけど、セベクさんにはスマイルシステムを施しております。耐久力は先ほどあなたが証明いたしましたわよね?残忍性は・・・確かめてくださらないかしら。セベクさん、ゆっくり食べてさしあげてね。」


 アリシアの気配が消えると同時に三体のセベクが迫ってきた。近づいてくるにしたがってその巨大さがよくわかる。全長は十二メートルといったくらいであろう。その強固な皮膚と短い腕ではあるが鋭い爪は引っ掛ける形状になっている。さらに大きな顎からはなんでも噛み砕ける牙が並んでいた。


 「俺とアレスは一匹ずつ、リディーネとミカで一匹、ミカはサポートを頼む!」


 アレスとドレイクはセベクを一匹ずつひきつけるとその場に残された者達はリナ、ミカ、リディーネと一匹のセベクだけであった。セベクは彼女達を見下すと顎から涎を流した。


 「品の無さが浮き出てるわね。アンタ、このリディーネ様を喰らおうってわけ!いい度胸ね!紅玉上級闘気 朱玉!」


 「ドレイクに身を捧げてもワニに身を捧げるつもりはないわ。牡丹玉ハイエレメント インドラ!!」


 巨大な火炎玉と雷玉がセベクに放たれると激しくスパークした。黒煙が立ち上り、セベクに動きは見られず、リナとリディーネは勝利を確信していた。次の瞬間、黒煙の中から巨大な尻尾が突然、現れるとリナとリディーネに襲い掛かる。目を閉じたリディーネは目の前に止まっている尻尾にキョトンとしていた。桜色のシールドが尻尾を受け止めていたのだ。


 「大丈夫、リナ、リディーネ?」


 「だっ、大丈夫よ・・・アタシは反撃するつもりだったんだから!」


 「それにしても恐ろしく強固な皮膚ね。何を食べればあんなになるのかしら?」


 「もう一度、仕掛けるわよ!」


 リディーネとリナの火炎と雷による攻撃が続く。すると突然、後方支援を続けるミカの身体を無数の紐が縛りあげ、引き上げられるとその場から姿を消した。


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