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未来のきみへ   作者: 安弘
新天道編
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アルファGを探して

 腰を落としたドレイクに次々と研究者達が襲い掛かってきた。ドレイクが斬神刀を水平に振り研究者達との激突が開始された一方、アルファGを探しに向かったリナとミカは手にした地図をもとの研究室へと進んでいく。


 「皆、大丈夫かな?」


 「勝算のない戦いはしないものよ。それにしても静か過ぎるわ。」


 廊下を走るリナとミカの行動はすでにピサロにも筒抜けのはずだが、兵士ひとり現れないことがかえって不安要素である。不安を抱えたまま、リナとミカはアルファGが置いてあるであろう研究室に辿り着いた。ゆっくりドアを開けたふたりは警戒しながら中に入っていった。


 「誰も・・・いないようね。」


 「今のうちにアルファGを探しましょう。」


 研究者達のいた部屋とはまた違い、この研究室は研究所というよりは薬品庫といったほうが正解かもしれない。棚には沢山の薬品入り瓶が置かれて、どれがアルファGなのか、わからない。ミカが小瓶のひとつひとつを確認しているとリナが薬品のファイルリストを見つけた。そこにはアルファGの名が書かれてあった。


 「アルファGはあそこの棚にあるのね。」


 ファイルリストに書かれていた棚に歩いていくとそこにあるはずの小瓶が置かれていなかた。何度もファイルリストを確認したがやはりない。


 「おかしいわね・・・ここにあるはずなんだけど・・・。」


 「ホッ、ホホホ・・・お探しのものはコレですか?」


 「誰!・・・・アッ、アリシア!」


 棚の上に座ったアリシアは小さな瓶を手にニヤニヤ笑っていた。十六善神のしかも四天王であるアリシアを前にリナとミカは背中に冷たいものが流れた。アリシアは棚から飛び降りると棚の資料を取り出す。


 「こんなものが何かの役に立つとは思いませんがピサロ様には大切なもの。渡すわけにはいきませんわね。」


 「アラ、そう・・・私にも必要なものなの。貰っていくわね。」


 「この私から奪えるとお思い?」


 「ええ、好きな男への想いはあなた以上かしら。」


 「私がピサロ様を想うお気持ちよりあなたが殿方を想う気持ちのほうが強い?イライラしますわ、その物言い・・・殺してさしあげましょう。」


 すみれ色に輝くアリシアは手の平を口元に近づけると息を吹きかけた。すると小さな音符が空中を漂い、それらは部屋中を覆っていく。フワリフワリと浮かんでいる小さな音符は棚に触れると跳ね返っていく。ひとつの音符がミカの肩に触れるとそれは激しい衝撃となった。


 「きゃあ!なっ、何これ?」


 「ホホホ、驚かれました?特定の者をターゲットとする菫玉を操る美しい技の名は音美。逃げ場などありませんことよ。久しぶりに聞きたいものですわ。あなた方の悲鳴は何オクターブかしら?」


 小さな音符はミカとリナを取り囲むとゆっくりと迫ってきた。ビッシリと隙間がなく、逃げ道はアリシアの言う通りなさそうだ。勝利を確信したアリシアはアルファGを眺め、ほおずりしている。それはピサロが大切にしていた小瓶であり、ピサロのぬくもりを感じているのであろう。


 「この程度のことで勝利を確信しないでほしいわ。私達もいくつもの試練を乗り越えてきた。行くわよ、ミカ!」


 牡丹色に輝くリナは雷に姿を変えると音符の隙間をすり抜けていく。ミカの身体を桜吹雪が舞うとその場から姿を消した。小さな音符はぶつかり合い、消滅していく。再びリナとミカが姿を現すとアリシアは棚にもたれかかりながら言った。


 「少しはやるようですわね。されど、次なる技には対処できなくてよ。」


 「もうここには用がないわ。貰うものは貰ったわけだし。」


 「何を・・・・はっ!ピサロ様の小瓶が!」


 アリシアの持っていたアルファG入り小瓶はリナの手にあった。そしてリナとミカはドアの前に立っているとアリシアに言った。


 「言ったでしょ?好きな男への想いはあなた以上って。私も手段を選ばないのよ。」


 リナとミカはドアを開けて走り去った。それをポカンと見つめていたアリシアの表情は次第に険しいものに変わっていく。リナとミカは廊下をひた走り、ドレイクのいる研究室へと向っているが前方から人影が見えた。


 「敵?・・・ドレイク!」


 「おっ、リナにミカ。意外と早かったな!」


 「どうしたの?」


 「どうしたの、こうしたのもないぜ。後を見てみな。」


 ミカがドレイクに言われたとおりに後を見るとそこには鬼の形相をした研究者達が這いながら近づいてきている光景だった。


 「まっ、そんなとこだ。とりあえず、逃げるぜ!」


 一目散に逃げるドレイク、リディーネ、アレスの後をリナとミカがついていく。研究者達は這いながら追ってきてる為、速度はそれほど速くない。完全に逃げ切れたと悟ったドレイクだったが・・・。


 「吹っ切れたか・・・って、おい、何だ!アリシアがいやがる!」


 「アラ、ごめんなさいね。言っておくのを忘れたわ。」


 「後の化け物に前のバケモンか!・・・むっ!ここに入るぞ!」


 ドレイクとリナ、ミカが入った部屋はなにもなくただ広い空間だった。その後からリディーネとアレスが部屋へと入ってきた。誰もが鼻をおさえるほど鉄製の壁に覆われた部屋内には死臭が漂っていた。完全に逃げ場を失ったドレイク達の前にアリシアがやってきた。


 「ホッ、ホホホ・・・死場にここを選ぶとは愚かな者達。ここは人体実験を行う部屋よ。もっとも生きてここを出た実験体などおりませんけどね。」


 「ぐっ、アリシア・・・」


 「えっ!何々?リディーネちゃんの知り合い?」


 「バカね!そんなわけないでしょ!」


 「ホッ、ホホホ!」


 甲高い声で笑っているアリシアが背後の気配に気付くとドアを開けて研究者達が入ってきた。這いながら近づいてくる研究者達はアリシアの背後でピタリと止まった。


 「生き残る確率はないですわね。せっかく手に入れた小瓶も台無しといったところかしら。」


 笑みを浮かべるアリシアに背後から迫る研究者達。斬神刀を手に身構えるドレイクとマテリアルフォースを全開にして与一の弓矢を引くミカ、床に大地の鞭を打ち込むリナ。魔人のこん棒を構えるアレスに火炎を出現させたリディーネ。双方対峙したまま、動きはまだない。


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