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未来のきみへ   作者: 安弘
新天道編
227/253

ミゲールの遺作

 「マイコちゃん!しっかりして!」


ミカの声はロードギア内のマイコには聞こえなかった。頭を強打し、流れる血で意識が朦朧とした中、マイコは聞き覚えのある声が耳に入ってきた。


 「・・・イコ・・・マ・・イコ・・・」


 「ミゲ・・・じい・・・?」


 「マイコ・・・・聞こえてるね!」


 「はっ!ミゲじい?」


 意識を取り戻したマイコはハッと我に帰った。しかしすでにミゲールは死んでいる。この場にいるわけがない。しかしミゲールの声は音声となってマイコに聞こえてきた。


 「・・・この音声が流れるってことはロードギアが致命的障害を受けたってことね。まったく、最後の最後まで世話が焼ける娘ね、マイコは・・・」


 「ミゲじいぃ~~~・・・ウゥ~~・・・グスンッ!」


 「この声を聞いて懐かしくなって泣いてないね?泣いてるマイコはマイコらしくないね。」


 「べっ、べつに・・・泣いてなんかないよ。」


 「もう長くは生きれないね・・・・でも、マイコと暮らしていたことがなにより嬉しかったね。そんなマイコが悲しまないように内緒で新システムをロードギアに取り付けておいたね。」


 「新システム?」


 「新システムは五行の印に反応するね・・・今、なんで知ってるの?って顔したね?まったく、嫁にいけないからやめるように言ったはずね。それを無視して・・・タカヒト達に協力したいって言った時点ですでにわかっていたね。しょうがない子ね、マイコは・・・それでもそんなマイコが好きね。」


 「ミゲじい・・・・ロードギア・・・壊れちゃったよ。」


 「話が長くなったね。新システムはロードギア自体が破壊されても問題ないね。もしマイコが誰かを守りたいと願うならその想いだけで起動するね。」


 「誰かを守りたい?」


 「大切なマイコに捧げる新システム、名をマスターミゲールと言うね!かっこいい名前ね!そのシステムで勝利を手にするね。じゃ、この辺でテープが切れるから終わるね。大好きね、マイ・・・プチッ!」


 「もう・・・名前かっこわるいよ・・・私も大好きだよ、ミゲじい。」


 ロードギアは両腕、左脚部を切断破損、すでに動くことはできない。それでもロードギアの身体を起こしたミカは五行の印を唱え始めた。五つの印を唱え終えると五つの輝きが放たれたコクピット内ですべてのモニターが突然光だした。


 「新システム・・・マスターミゲール起動!」


 音声が流れると急にマイコを座せているバケットシートが下に向って落ちていく。驚いたマイコは身動きも取れずにただ固まっていると今度は上に向って急上昇していく。急に青空が見えるとマイコは驚きを隠せない。


 「えっ、えっ?外?・・・外に出ちゃったの?」


 地面を見渡すとミカ、アレスがスマイル部隊兵に取り囲まれていた。マイコの頭には彼らを助けることしかない。マイコは急降下するとスマイル部隊兵とミカの間に着地した。スマイル部隊兵は手にした小太刀型ナイフを突き刺してきたが流れるようにマイコはそれらをかわす。


 「アレ?動きが軽やか・・・この機動性なら、いける!」


 スマイル部隊兵による四方八方からの同時攻撃すらマイコは流れる水のようにかわすと鋭い刃を振り回す。再び地面に着地したマイコの周りには動かないスマイル部隊兵が倒れている。


 「マイコちゃん?」


 「ミカ・・・どうかした?」


 「うっ、ううん・・・」


 「へんなの・・・・あっ、アレスは?」


 マイコがアレスの姿を捜した。地面に倒れているスマイル部隊兵を後にしてアレスはこちらに近づいてきた。アレスは目を真丸くして驚いていた。


 「どうしたの、アレス。そんなに驚くことないでしょ。アタシだって結構やるんだよ。」


 「いっ、いや・・・そうじゃなくて・・・」


 「そうじゃなくて?」


 「その姿・・・」


 「えっ、姿って・・・何、コレ!」


 ミカは鏡を取り出すとマイコに手渡した。それを見たマイコは驚愕した。その瞬間、やっと自分の姿を確認することができた。それはロードギアのような機械ではなく、マイコ自身が強化された姿であった。鋭い牙、野太い尾、手足は筋肉隆々だった。ハンターとしては当然の姿であるが、今までのマイコと比べると恐ろしく見えた。


 「ミゲじじい、お嫁どころかこんな姿だと・・・正義の味方に見えないじゃん。」


 「あっ、マイコちゃん・・・ちょっと、待って・・・背中にスイッチがあるよ。」

 

 ミカがスイッチらしきボタンを押すと次第にマイコはいままでの姿へと変わった。これにはマイコ自身驚いたが、ミカとアレスは少しホッとした様子だった。


 「良かった、元の姿に戻れて・・・危うくミゲじいを恨むところだったよ。このシステムって電気刺激による単なる肉体強化ってわけか。まあ、それも一時的なものみたいだけど・・・皆は先に行って。アタシはロードギアを直してから行くから。」


 「よし、わかった。ミカちゃん、先に行こう!」


 アレスは白虎を出現させると空間を歪ませてその場から消えた。そしてミカとアレスが空間から出てきた場所にはドレイクとリナ、リディーネがいた。


 「なんとか合流できたね。」


 「ちょっと、なんなの、アンタ!」


 「いや・・・助けに来たんだけ・・・必要なかった?」


 「このリディーネ様がいるのよ!必要ないに決まってるでしょ!」

 

 「・・・・」

 

 「まあ、仲間は多いほうがいい。ありがとな、ミカ、アレス。」


 ドレイク達の目前にはアルヒャイ・キャッスルがそびえたっていた。警戒しながらも内部への潜入に成功すると意外に豪華で明るいことに驚いた。ドレイク達は周囲を警戒しながら先へと進んでいくと研究所らしきフロアに辿り着いた。ドアが急に開き、研究者らしき者達が突然の訪問者に驚いていた。研究者を押し入れて、部屋に入ったドレイクが言った。


 「白衣を着ているようだが・・・アレを造った研究者達か?」


 「いかにも・・・」


 「天道人のお前達が天道人を兵器として扱うのだな・・・恐れ入るぜ!」


 「私達が望んだ結果ではない。」


 「フン、どの世界でも研究者はそう言うものだな。」


 「私を、私達をどうするつもりだ?」


 「別に・・・邪魔さえしなければ用はない。」


 「・・・・」


 研究者達に殺意はない。ドレイクはそれを察すると部屋から去ろうとしたが、それを許さない者がひとり現れた。


 「貴様らはここで死ぬのだ!」


 「・・・いきなり現れて、ここで死ぬのだって言われても、なぁ~・・・どうする?」


 「そうね・・・とりあえず、言い分でも聞いてみたらどうかしら。」


 「そうだな。誰かは知らんが、何か用か?」


 「うぬぬぬ、バカにしおって・・・目に物を見せてくれるわい!」


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