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未来のきみへ   作者: 安弘
新天道編
214/253

ムタイケイトの巣窟

 「なぜだ?キングムタイケイトが部屋から出てくるなんて有得ない!」


 城の外では両膝を地面に落とし、肩を落としたカルロスが愕然としていた。カルロス達のもとに逃げてきたリナ達は息を切らせながら城を見つめがっかりしているカルロスに気付いたリナは声をかけた。


 「何故、ムタイケイトがいるの?」


 「・・・詳しい事はわからない。」


 「わからないですって?あなたはアレの脅威を知らないの?」


 「ねぇ、リナ。ムタイ・・・何なの、アレ?」


 「あれはムタイケイトという魔物よ。でもただの魔物じゃないの。ムタイケイトは時間を奪う魔物・・・つまり、老化を進めるってことよ。アレに触れたら若いミカも瞬時にお婆ちゃんになっちゃうってわけ。」


 「えっ!お婆ちゃんになっちゃうの?」


 驚くミカやマイコ。そうとは知らずに恐怖に包まれたリディーネ。リナはカルロスへの追求を緩めることはなかった。最初はダンマリを決め込んでいたカルロスであったが事が事だけにしばらくすると口を開いた。


 「アレは・・・姉さんからプレゼントされたんだ。」


 「姉さん・・・アリシアから?」


 「姉さんを知っているのかい?」


 「えっ!・・・ええ、もちろんよ。何故プレゼントされたのかしら?」


 「持っているとお守りになるからって・・・たしかにムタイケイトは無敵の兵士だった。アレに勝てる者などどこにもいないからね。でも・・・」


 「・・・でも?」


 「姉さんから絶対守るように言われたことがあるんだ。キングムタイケイトだけは部屋から出すなって・・・。」


 「出したらどうなるのかしら?」


 「それは知らない。ただ、出すなって言われた・・・どうしょう・・・姉さんに怒られる・・・」


 「・・・・」


 「そんな事情があったのじゃな!」


 聞き憶えのある声を聞いたリナは振り返ると白髪の老人とアレスが立っていた。白髪の老人が誰なのか?ミカもマイコもリディーネもわからなかった。唖然とした彼女達の表情に気付いたアレスは額に汗をかきながら説明しょうとした瞬間、リナが老人に近づいた。


 「ドレイク、渋みを増したわね。素敵よ。」


 そう言うとリナは老人に抱きついた。その場にいた誰もがその光景に驚いた。老人がドレイクとは誰も思わなかった。ミカでさえ、気付かなかったほどだ。アレスはその後、ミカ達にことに成り行きを説明してやっと理解してもらった。しかしリナだけはそんなことは関係なかったようだ。


 「悪かったの、リナ。こんなに老いてしまったわい。」


 「ドレイクはドレイクよ。若々しいドレイクもいいけど、渋いドレイクも素敵だわ。」


 「じゃが・・・キングムタイケイトが出てきてしまったわい。」


 顎を擦りながらドレイクは城を見つめた。だがこの時、ドレイクにはすでに勝算があった。その表情からリナもそれを察した。


 「やるのね、ドレイク。」


 「もちろんじゃわい・・・キングだろうが、へちまだろうが俺の障害になる者は打ち倒すのみじゃわい。」


 「さすがだわ、ドレイク。」


 「なんにせよ、ここにいても危険だしの!」


 「えっ、どういうこと?」


 「うしろを見てみろ。」


 リナはドレイクの指差した方向を見つめるとそこにはムタイケイトの大群がこちらに迫っていた。ふたりの会話を理解できないミカ達はただ呆然としていたが、いきなり城に向って歩き始めたリナとドレイクに驚き、急いで後をついていった。ドレイクに考えがあるとはいうものの、不安を隠せないアレスが口をひらいた。


 「あのさ、ドレイクちゃん。考えがあるって言ってたけど、どんな作戦なんだ?」


 アレスの言葉はその場にいたミカ達にも興味があった。触れただけで歳をとってしまうムタイケイト相手に勝算などあるのか?誰もが聞きたかった言葉をアレスが言ってくれたことに感謝しながらもドレイクの言葉を待つ。ドレイクは急に立ち止まるとリナ達も立ち止まる。


 「内緒じゃ!」


 「内緒?おら、ジジイ!いい加減にしねえと俺も怒るぜ!」


 キレたアレスは白虎を出現させるとドレイク相手に闘気を高めていく。リナが止めようにもアレスの闘気は恐ろしく巨大なもので誰も止められない。


 「このたわけが!」


 ドレイクの激にアレスはキョトンとすると白虎も怯えてしまった。その背後には年老いた玄武が睨みをきかせている。


 「年長者の言葉はありがたく受け入れるものじゃぞ!」


 「悪かったよ。でも、不安じゃねえか・・・なあ?」


 アレスに同意を求められたミカだったが・・・


 「アレスも悪いと思うけど・・・私も不安かな・・・」


 「ほらぁ~、たぶん皆同じだと思うぜ。いい加減教えてくれよ。」


 アレスやミカ達が見つめる中、しばらく黙り込んでいたドレイクは歩いてきた道を見つめた。その先にはムタイケイトの大群がいて、カルロス達は成す術もなく老化し、歩く事すらできない老人になっていた。そしてその大群はこちらにゆっくりと向っている。


 「教えるものではない。おまえの眼で見て、そして感じることが大切なのじゃ。ひとつだけ教えておいてやろう。白虎の役割はなんぞ?それを知ることがムタイケイトに勝てる方法となろう。」


 「なんだよ・・・なぞかけか?わかんねぇ~よ。」


 「城まで少し時間がある。考えることじゃな。」


 そう言い残すと再び歩き始めたドレイクにリナはついていった。その後をミカ、マイコ、リディーネがついていくとその場にはアレスだけが取り残された。


 「白虎なんだよ、役割って?」


 (・・・喰らうこと。)(白虎)


 「喰らう事が役割なわけねぇだろ!」


 (ほかには・・・安定させること。いや、たぶん違うな。)(白虎)


 「おい、なんだ、それ?安定ってなんだよ?」


 (ああ、俺たち四神の力のことさ。)(白虎)


   朱雀は輝ける未来に向かう力を


   青龍は失いし過去取り戻す力を


   白虎は現在を安定させる力を


   玄武はすべての時間を束ねる力を


 (四神にはそれぞれ持つ力があってそれらを組み合わせることで新たな力を生む。でも、それってたぶん関係ないと思うぞ!)(白虎)


 「馬鹿!それだよ、それ!」


 (なあ、そんなことよりもヤバイことがあるぞ。)(白虎)


 「そんなことってなんだよ。その力があればなんとかなるんだろ?」


 (じゃなくてよ・・・うしろ見てみろ。)(白虎)


 「うしろ・・・おい、早く言えよ!」


 背後に迫るムタイケイトの大群にアレスと白虎は一目散に逃げていく。速度の遅いムタイケイトと距離をとることは簡単だったがそれでもドレイク達に追いついた頃には息切れするアレスだった。


 「ドレイクちゃん、言っていることがわかったぜ!四神の・・・玄武と白虎の力の組合せだろ?」


 「雑魚のムタイケイトは無視するのじゃ。本命はキングのみ!」


 「おっし!そうとわかったら、いっちょ、やったるか!」


 「ワシの決めセリフじゃぞ!」


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