カルロスの秘密
「えぇ~・・・そんなんでうまくいく?」
ドレイク老人は首を縦に振る。半信半疑ながらもアレスに考えはなく、ドレイク老人の指示に従った。ムタイケイトが行軍してきたルートへと歩を進めていくが老人になったとはいえ、ドレイクを支えながら歩いていくことは困難であった。
「もう少し早く歩けないかな?」
「馬鹿者!老人をいたわらんか!!」
「イテッ!」
杖代わりの斬神刀でアレスの頭を叩いた。ムタイケイトの歩行速度はそれほど速くはなかったがそれでもドレイク老人がいては追いつかれるのも時間の問題であった。
「う~~・・・仕方ない。アレをやるか・・・白虎」
(アレって・・・アレの事か?)(白虎)
「うん、このままだとムタイケイトに追いつかれるからね。」
(責任はとらねえぞ。)(白虎)
「大丈夫、なんとかなるさ。」
白虎が顎を開くとアレス達の前に空間が歪んだ穴が現れた。驚愕するドレイク老人をポンッその中に押し込むとアレスと白虎も中に入った。中に入った瞬間、別の場所へと出てきたことにドレイク老人は言葉が出なかった。
「え~と・・・ここは・・・?」
(てめぇは運がいいよな、実際。)(白虎)
そう言い残すと白虎は姿を消した。喜ぶアレスにドレイク老人は語りかけた。白虎は時間的空間を操ることが出来る。ドレイク老人が入った穴は時間を歪めた空間だった。
「でもうまくいくとは思わなかったよ。いままで試したけど、まったく関係がない場所や危険な場所にばっかり行っていたからね。今回は運が良かったんだ。」
「・・・まあ、よいわい。目前にはカルロスの城があるしの。」
「いよいよ作戦決行ってかんじだね。でも・・・」
「うむ、わかっておる。どうやらリナ達もあの城にいるらしいの。」
「捕まっちゃったのかな?」
「じゃろうな・・・戦闘の気配がないところをみると、そう考えるのが妥当じゃ。」
「人質とは卑怯な連中だね。どうする?」
「お仕置きが必要じゃ・・・玄武」
(・・・どれ、いくかいの)(玄武)
「えぇ~~・・・わかってはいたけど、玄武も老いてる!」
驚くアレスを無視してドレイク老人は闘気を高めた。それに反応するかのように地面が小刻みに揺れていく。その揺れに反応したのは城内のカルロス達だった。右往左往する彼らは大地が揺れるなど初めての体験だった。
「なんだ、この揺れは?神の怒りか?カーペント、なんとかしろ!」
「おそれながら・・・私もどうしてよいのか。」
動揺しているカルロス達のもとにリナ達がやってきた。顔面蒼白なカルロスに冷静な判断でリナが言った。
「まずは避難が先決よ。揺れがおさまったら、城から出るのよ。」
「避難か。よし、わかった!カーペント、避難準備だ!」
しばらくして揺れがおさまるとカルロス達は一目散に城を脱出した。リナ達以外には誰もおらず、騒がしかったホールも今では静まり返っていた。マイコが周辺を捜索したが誰一人として城には残ってはいない。
「本当に臆病な人達だね。あんな揺れくらいで城から逃げるなんてね。」
「そのおかげで入ることが出来なかった部屋へ入れるようになったわ。」
リナが言うと皆が頷いた。毎日行われていたパーティーの合間を縫って城内を探っていたがどうしても入ることが出来ない場所があった。それはカルロスの部屋である。常に部屋の前には数名の兵士が配置されていた。リナやミカが部屋に入ろうとカルロスに声をかけたがそれだけは拒み続けた。
「きっと、とんでもない秘密があるんだわ。
ミカだけでなく、私まで拒まれたわけだし。」
「・・・・いっ、今なら部屋に入れるよ。行ってみましょう。」
ミカ達は慎重に階段をあがっていくと赤い絨毯で覆われた廊下が見えてきた。いつもなら一番奥の部屋に兵士が数名いたのだがさすがに今は誰もいない。
「チャンスね・・・でも罠とか仕掛けてあるかも?」
皆をその場に残すとリディーネは廊下を警戒しながら歩いていく。時に伏せて、時にジャンプして緊張感のある素早い身のこなしにミカ達は固唾を呑んで見守った。カルロスの部屋に辿り着いたリディーネはドアノブを回すとゆっくりドアを開けた。そのまま部屋の中に入ったリディーネは悲鳴にも近い声をあげた。
「うぎゃあぁぁぁ~~~~!」
「リディーネ!」
ミカが、リナが、マイコが廊下を走り、ドアノブをまわして部屋に入った。彼女達が見たものは・・・。
「これって人形?あっ!」
腰を抜かしたリディーネの前にはマネキン人形が置かれていた。マネキン人形は真っ赤なドレスを身にまとい、その表情はミカ達がよく知っている人物だった。
「アリシア・・・だよね?」
ミカが確認するように言うとその場に誰もが首を縦に振った。驚いたことはそれだけではない。マネキン人形のほかに部屋の壁を埋め尽くすほどのアリシアの絵や写真が貼られていた。ベッドにはアリシアちゃん抱き枕まである。腰を抜かしていたリディーネが立ちあがると言った。
「ふぅ~、ビックリした・・・ドア開けたらいきなりアリシアって、馬鹿ぁ!」
アリシア人形を蹴飛ばすと倒れて頭が床をゴロゴロと転がっていた。なんとなくスッキリしたリディーネは部屋中の絵や写真をマイコと一緒に眺めていく。
「まったく・・・あの御坊っちゃんはアリシア命かよ。気色悪いなぁ~。」
リディーネは黒マジックを手にするとアリシアの写真に落書きを始めた。その落書きを見たマイコは腹をかかえて笑っていた。
「ファンではないみたいよ。これを見て。」
リナがぶ厚い本を開くと皆を集めた。どうやらアルバムのようで写真とともに簡単な文章も書かれていた。そこにはアリシアと弟のカルロスの成長記録が書かれていた。驚いたリディーネが声をあげた。
「あの御坊っちゃんがアリシアの弟?
・・・ってことはあいつも同じ能力を使えるってわけ?」
「それはないわね。ソウルオブカラー使いならわかるでしょ?特有の感覚というか、そういう類のものを一切感じなかったわ。」
「そっ、そんなことわかってたわよ!アタシの知りたかったことは・・・」
「アリシアも城のどこかにいるのかな?」
「そうよ、それそれ!」
「それはないわね、ミカ。アリシアの気配もソウルオブカラー使いの感覚も私達以外には感じられないわ。」
「・・・うん。」
「ねぇ、あそこに何かあるよ?なんだろ、アレ?」
マイコが指さした方向には小さなドアがあった。長身のカルロスが入るには小さすぎるドアだった。リディーネはそのドアに近づいていくといきなり開けた。下に降る階段があり、リディーネは慎重に降りていく。しばらくしてリディーネは戻ってきた。
「なんか紙切れがあるだけでほかには何もなかった。」
「紙切れ?・・・気になるわね。行ってみましょう。」
「ただの紙切れだってば!」
笑うリディーネだったが真剣な表情のリナは階段を降りていく。今回はミカもマイコも会談を降りていった。すると小さな部屋に辿り着いた。そこには確かに紙切れがひとつあるだけで窓らしきものなにもない。石積みの部屋に紙切れが床に置いてあるだけだった。
「ねっ、言ったでしょ!紙切れがあるだけだって!」
「リディーネ、これがただの紙切れだと思っているの?」
「何、顔蒼くしてんのよ!ただの紙切れでしょ!」
「ここは危険だわ!部屋を出るわよ!」
リナが階段をあがっていくとミカもマイコも走っていく。両手を返して平然としているリディーネは言った。
「何をビビッているんだか・・・
変わってるとは思ってたけどやっぱりだったわね。」
軽く笑ったリディーネは背後に気配を感じた。振り返るとさきほど床に落ちていた紙切れから人型の紙が何枚も出現してくる。あっという間に部屋中に人型の紙でいっぱいになった。
「やっぱりね・・・さて、私も用事が出来たから出ていこうかな。」
一目散にリディーネは階段を駆け上がり、リナ達の後を追った。