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未来のきみへ   作者: 安弘
新天道編
212/253

若さを奪う悪魔

 「カーペント、取立てできないとはどういうこと?」


 「おそれながら申し上げます。反政府軍の抵抗が思いのほか激しく我らの手に負えない状況が続いております。」


 「皇族に逆らうとは・・・ムタイケイトを放て!」


 こうして反政府軍のいる部落にムタイケイトが放たれたが、すでにそれを察知していたドレイクは対ムタイケイト戦略を組んでいた。何も知らないアレスはドレイクに質問する。


 「なあ、ドレイクちゃん。そのなんとかっての倒し方は考えてあんの?」


 「なんとか?・・・ムタイケイトのことか?」


 「ムタイ・・・何?」


 「ムタイケイトだ。人型でヒラヒラした紙のような姿をしているがこれが結構厄介な相手なんだよな。」


 「紙切れがなんて厄介なんだ?」


 「ムタイケイトの能力は時の流れを変えることにある。まあ、時の流れといっても過去に戻れるとか未来に行けるってもんじゃないんだがな。」


 「光か何かを出すのか?その光を浴びると年をとるとか?」


 「だったらよかったんだがな。一切、そういうものを発しない。ムタイケイトの能力が解明できれば勝てるんだけどな。」


 「ちょっと待て・・・もしかして解明できてないとか?」


 「ああ、まだだ。まあ、安心しろ。ぶっつけ本番ってやつだ。」


 「・・・・かんべんしてよ。」


 アレスは声をあげて部屋で騒いでいるアレスに子供達が食事を持ってきた。年貢を納めずに荒れ果てた農地を懸命に耕したおかげで作物の恵みを得ることができた。だがその一方でカルロスの逆鱗に触れたことも確かである。すでにムタイケイトは放たれこの部落が壊滅するのは時間の問題であった。しかし誰もここから逃げようとはしなかった。老人も子供達もドレイクとアレスにすがるしか生き抜くことが出来ない事は理解していた。


 「おまえさん達のおかげで子供達に腹いっぱい飯を食わせてやることができたで。ワシは満足しとる・・・できることなら子供達が自立できるまでカルロス様には見逃してほしかったで。」


 「おいおい、何言ってやがる。敗戦色に染まるには早すぎるぜ。」


 ドレイクは斬神刀を手に立ちあがった。何も語らずに部屋を出ていく姿を子供達は見つめていた。その顔からは楽しい場所に行くかのような表情だったらしい。アレスも立ちあがると部屋を出ていく。子供達が見たアレスの表情は口をへの字に不平不満を言っているように見えたらしい。


 「はぁ~・・・年とったらどうしよう・・・」


 (年とったら飯が喰えなくなるのか?)(白虎)


 「違うったら・・・彼女もいないのにじいさんになったら結婚も出来ないだろ。」


 (結婚?・・・旨いのか、それ?)


 「・・・・」


 「なんだ、アレス。お前、結婚したかったのか?」


 「なんだよ・・・悪いかよ・・・。」


 「いや、悪くはないぜ。だがな、お前は勘違いしている。」


 「何を?」


 「若いから結婚できるんじゃねえ。いい男だから結婚できるんだ。俺がそれを証明してやる。」


 カルロス城まで続く一本道を歩きながらドレイクは言った。その後、アレスは何も語らなかったがドレイクにはその気持ちが手にとるようにわかった。男二人何も言わずに歩いていると遠くのほうに黒い塊が接近してくる様子が視界に映った。


 「アレス、ムタイケイトご一行様の登場だぜ。」


 「楽しそうなんだな、ドレイクちゃんは。」


 「ああ、戦いってのは生き甲斐を感じるぜ。

  若さの秘訣といっても過言ではないな。」


 「・・・んじゃあ、いっちょ、やったるか!」


 「おい、アレス!それは俺のセリフだぜ。」


 まるでピクニックにでも行くようにドレイクとアレスはムタイケイトの集団に向っていく。ドレイクの背後に玄武が出現すると口を開いた。


 (どないするつもりや?アレは厄介やで!)(玄武)


 「どないもこないもやるしかねぇだろ。」


 (相変わらず行き当たりバッタリなやつやで、ホンマに・・・)(玄武)



 「無駄口叩いていないで行くぜ!茶玉極限闘気 クル・ヌ・ギアス!!」


 ゆっくり向ってくるムタイケイトの集団の足元から茶色の透明な液体が浮きあがってくるとすべて包み込んだ。だが消えてなくなったものは茶色の透明な液体のほうだった。


 「くそったれ、時間を戻しやがったか!」


 ドレイクとアレスを確認したムタイケイトは速度をあげることもなく迫ってくる。続いてアレスが白虎を出現させるとメテオボールを放った。数体のムタイケイトは消滅したが、その周囲にいたムタイケイトが不思議な踊りをすると消滅したはずのムタイケイト再び姿を現した。


 「やっぱり・・・白虎、なんとかならない?」


 (貴様は自分でなんとかすることはないのか!

  報酬ナシで働かせやがって!)(白虎)


 「報酬はあのムタイケイトでどう?」


 (たわけ!あんなのが喰えるか!)(白虎)


 「だよね・・・どうしょう・・・」


 どんな攻撃でも時間を変化させることで無効化するムタイケイト相手に苦戦は必然である。容赦なく近づいてくるムタイケイトの数体がその場から姿を消した。全く気配を感じないムタイケイトに周囲を警戒するドレイクとアレス。アレスに視界に空間に亀裂が入る現象が映った。その亀裂からムタイケイトが出てくるとドレイクの背後に近づく。


 「ドレイク!」


 「むっ、ぐあっ!」


 取り囲んだムタイケイトは不思議な踊りをするとドレイクはその場に膝をつく。メテオボールを放つとムタイケイトは消滅し、ドレイクに近づいたアレスはその目を疑った。


 「ドレイク・・・」


 「どうした・・・むっ、脚が動かん。」


 筋肉隆々としたドレイクの脚は痩せこけ、白髪の顔はシワだらけ。ふらつきながらもアレスに肩を借り、立ちあがるのもやっとで斬神刀を杖代わりにするが動くことはできない。


 「斬神刀は・・・こんなに重かったかの。」


 「え~~~、喋り方まで老人!」


 驚愕するアレスはドレイク老人を抱えながらムタイケイトから距離をとった。メテオボールはムタイケイトに致命傷を与えることこそできないがそれでも抵抗する技にはなった。消滅したムタイケイトが修復復元するまで時間稼ぎが出来た。距離をとったものの、これ以上の後退は部落の子供達に被害が及ぶ。勝機すらないアレスはただドレイク老人と身を隠すことしかできない。


 「う~~・・・ジリ貧だよ。どうすればいいんだ。」


 「アレスよ、ワシに考えがある。」


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