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未来のきみへ   作者: 安弘
新天道編
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ピサロの世界

 「これが・・・ピサロの世界。」


 タカヒトは呆然と目の前に広がる光景を見つめていた。花畑が広がりとてもいい匂いがする。なんとなく和んだタカヒトは振り返るとそこには誰もいなかった・・・。


 「あれ・・・ミカちゃん・・・てんと・・・」


 タカヒトはキョロキョロと辺りを見渡すが花畑しかなかった。すでにブラックホールは消えており、ただ独りタカヒトだけが立っている。


 「どうしょう・・・皆、何処に・・・」


 独り残されたタカヒトは不安に押し潰されそうになる。動くことも出来ずにしばらくその場に立ちすくんでいると真っ赤な炎の塊が出現した。


 (何をしている。貴様はピサロを倒すのではないのか。)(朱雀)


 「うん・・・でも・・・どうすればいいのか・・・わからなくて・・・」


 (情けない奴め!主が貴様であることが我の恥部じゃ。)(朱雀)


 「・・・ごめんなさい・・・」


 (・・・状況だけでも貴様に説明してやる。)(朱雀)


 このピサロの世界は天道に創られた新たな世界。新天道といい、創造神となったピサロが初めて創った世界。タカヒト達が通ってきたブラックホールは時間と空間が歪んで、他の者もこの世界のどこかにいる。ピサロの城はこの花畑から近い場所にあるらしい。


 (このくらいで説明も良かろう。後は貴様が判断するがいい。)(朱雀)


 「判断って・・・」


 (他の四神を集めよ。貴様だけでは勝てぬ。)(朱雀)


 朱雀が姿を消すとタカヒトはトボトボと歩き始めた。花畑はどこまでも続き華やかな光景だったがタカヒトの心はドンヨリ沈んでいた。正直、いままで本当に独りっきりになったことなどタカヒトにはない。イジメられている時も目の前に現れた強敵達と戦っている時もタカヒトのまわりには誰かが必ずいた。だが今はてんとのアドバイスもなければ、ミカの優しい笑顔もない。タカヒト自身が決断して行動しなければならない。それがとても不安だった。


 「能力を手に入れても僕は弱いままだったんだね。」


 弱音を吐いたタカヒトはタメ息をつきながら歩いていると花畑の先に泉が見えて、なんとなく泉に近づいていく。透き通った泉は水底までよく見えてたくさんの魚が泳いでいた。その魚たちをじっと眺めていると何故か背後が気になって振り返った。もちろんそこにはタカヒトの背中を押して泉に突き落とそうとするイジメッ子がいるわけもなく、タカヒトはホッと胸をなでおろすとまた泉の魚を眺めている。


 「はぁ~・・・どうしょう・・・」


 タメ息をついたタカヒトは何かが割れる音に周囲を見渡した。注意深く観察したがどこにもなにもなく、タカヒトの服が破れたわけでもなかった。次第に恐怖を感じてきたタカヒトは朱雀を呼ぶが・・・まったく反応がなかった。不安になったタカヒトはオドオドしながら周囲を警戒していると黒いなにかが花畑から飛び出してきた。驚いたタカヒトは腰を抜かしてその場に座り込んだ。目を閉じて恐怖に怯えるタカヒトの肩になにかがのっていた。恐る恐る瞳をひらくとリッパーの姿が映った。ほかにパラディーゾが花を食べて、インフェルノは浮遊していた。


 「リッパー、インフェルノそれにパラディーゾ!」


 タカヒトは嬉しそうに神獣を呼ぶと三匹がまとわりついた。羽化したばかりの三匹はまだ小さかったが今のタカヒトにはとても大きな存在に思えた。しばらく楽しいひとときを味わったタカヒトはいつもの笑顔を取り戻した。


 「さあ、皆を捜しに行こう!」


 (フン、調子のいい奴め!)(朱雀)


 神獣を肩にのせて遠足にでも行くかのようなタカヒトに朱雀が言った。同じ頃、ジェイドとてんともまた別の場所に導かれていた。


 「どうやらはぐれてしまったようだ。」


 「そのようだな。」


 その後、ふたりに会話はなく・・・どちらからというわけでもなく歩き始めた。ふたりのいる場所は大樹木が周囲を取り囲んで薄暗く、地面には苔が生えていた。ひんやりとした涼しさと静けさがあった。近くを小川が流れて、聞こえる音といえばそれくらいだろう。ジェイドが小川に近づいていくと座り込みじっと眺めていた。


 「小川を眺めていると昔を思い出すとでも言いたいのか?おまえが捨てた過去を!」


 「・・・俺にはそれすら許されない。」


 そう言い残すとジェイドは立ちあがり再び歩き始めた。てんとも自らが感情をむき出しした事に動揺していた。いまさらそんな事を言っても何も解決はしない・・・協力していかなければならないジェイドとの間に溝を作ってしまった。理性的に行動しなければならないてんとだがまだどこかでジェイドを許せないのかもしれない。


 「さっきは・・・言い過ぎた・・・」


 「・・・俺はそれだけのことをふたりにしたのだから。」


 てんともジェイドももう昔のようには戻れないのだとこの時に察した。再び沈黙の時間が流れていると大樹木が倒れて地面がむき出しになっている場所に辿り着いた。眩しいくらいの光が彼らの目を細めさせた。地面には苔ではなく、土がむき出しになっている。


 「異質な気配を感じる。」


 「これは風の属性?」


 異質な気配に警戒していると遠方から竜巻のようなものが近づいてきた。それは砂煙をあげて近づいてくる。ジェイドは蒼龍を出現させるとエネルギー体が放たれた。すべての物質を溶かす蒼龍のエネルギー体だが竜巻には効かなかった。迫る竜巻をかわすとジェイドは再びエネルギー体を放った。


 「蒼龍の攻撃が効かないだと!」


 「四神だと思って調子に乗るなよ!」


 「ほう、話ができるとは変わった竜巻だな。」


 「その余裕が気に入らないんだよ!」


 竜巻は大きさを増して蒼龍ジェイドに襲い掛かるが簡単にかわすとエネルギー体を放つ。しかし竜巻にはダメージは見られない。次に緑てんとが理力を高めると風神が出現した。風神は両腕から風の衝撃とともに鋭い風刃が放たれたがやはり竜巻には効果がない。


 「どアホ!同じ属性の攻撃が効くわけないだろ。まあ、属性が同じでもお前達の上をいく存在だけど!」


 竜巻はさらに高速回転していくと光る刃を飛ばしてきた。緑てんとが風のシールドを形成したがそれを貫いた。蒼龍ジェイドが氷の盾で受け止めたがその表情は険しいものだった。


 「水?・・・風と水を操るのか?」


 「ふっ、ははは!やっと気づいたか、バカどもめ!我はゼカメアレインド!風の精霊シルフと水の精霊ウンディーネの親にして主人である。貴様等の上位に立つこの我に逆らおうとは笑止千万!」


 「ゼカメアレインド・・・台風の虫が何のようだ?」


 「台風の虫?貴様、口のきき方をしらんな?」


 「口のきき方か・・・俺の上位に立つと言ったな。」


 「無論だ!」


 「そうか・・・蒼龍、どうする?」


 (万死に値する者でおじゃる。)(蒼龍)


 「だそうだ・・・見えてきたな、死が!」


 「おのれぇ~、黙って聞いておれば殺してくれる!」


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