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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
207/253

徳寿救出

 「徳寿さん、時間ですよ。」


 ピサロの言葉に両腕を取り押さえられた徳寿が部屋から出てきた。ピサロの背後にはアリシアに薄っすらと笑みを浮かべるビックボス、それに・・・。


 「まさかおまえまでもが・・・恐れ入るわい。」


 「・・・・」


「話は無用にしてほしいですわよ。さあ、死刑台まで連れていって頂戴!」


 兵士達は徳寿を取り囲むように配置すると廊下を進んでいく。薄暗い廊下を進んでいくと眩しい光が突然徳寿の目に襲い掛かった。まぶしさに目を細め、それが慣れた頃、徳寿の目前に想像を絶する光景が広がっていた。


 「どうです、徳寿さん!見事な死刑台でしょう?特別な日なので丹精込めて仕上げました。」


 「フォフォフォ・・・実に見事じゃわい。最後を飾るには相応しい舞台じゃな。」


 「その余裕・・・少し腹が立ちますね!何かを期待されているようで。」


 「生きることを諦めたことなどありわせんわい。希望は最後まで持ち続けよと皆に言ってきただけにの!」


 死刑台へと向う徳寿のまわりは兵士達が取り囲んでいる。ピサロ達は死刑台が一番見える観覧席へと移動した。死刑台の設置された広場には徳寿の最後を見つめる人々がいる。その誰もが悲しい表情で徳寿との別れを悔やんで反乱が起きては一大事とビックボスは周囲を兵士に取り囲ませ人々との距離を保っている。死刑台にあがった徳寿の手足は柱に固定され身動きが取れないようになっている。その両脇にいた兵士達が死刑台から降りると全身が黒ずくめの衣装をまとった執行人が台にあがってきた。執行人の手には大きな人斬り包丁が握られている。執行人は低く重い声で言った。


 「最後に言い残すことは?」


 「最後・・・ワシは老いてはおるがまだ死ぬわけにはいかんのじゃ。ほれ、すぐそこにまで希望が近づいておるではないか!」


 「フン、こざかしいジジイだ。」


 大きな人斬り包丁を振り被った執行人は腰を落とし徳寿の首を斬りおとす体勢をとる。徳寿は瞳を閉じることもなくただ一点をジッと見つめていた。執行人の目をカッと見開くとその鋭い刃が徳寿に近づいてきた。刃を振り切った執行人は手応えをまったく感じてはいなかった。手にした人斬り包丁は柄だけを残し刃が溶けてなくなっている。徳寿の首も落ちてはいない。


 「貴様・・・何を!」


 動揺する執行人に徳寿から光が放たれると白目をむき、執行人はその場に倒れ込んだ。一瞬の間をおいて異常に気付いた兵士達が死刑台を取り囲む。その光景にビックボスは声をあげた。


 「黄玉じゃと?共鳴亀裂を発生させておらなんだのか?」


 「想定外だったわね。このタイミングで助けにくると思っていたのに・・・嬉しい裏切りだわ。」


 「ふん!遊んでる場合じゃなかろう。黄玉は厄介じゃぞ!」


 ピサロの戯れにビックボスは共鳴亀裂発生装置の使用許可を出した。兵士達はすぐにそれを起動させると周囲に共鳴亀裂が発生する。輝きがなくなったが笑みを浮かべる徳寿に兵士達は恐れ捕らえることができない。


 「ええい、もはや黄玉は使えん!斬り捨てるのじゃ!!」


 ビックボスの言葉に兵士達は手にした槍で徳寿を貫こうとした瞬間、兵士達の足元に茶色の透明な液体のようなものがまとわりつくと包み込んでいく。悲鳴をあげながら兵士達の身体は乾燥して粉と化した。徳寿を取り囲む数十名の兵士が一瞬にして消えてしまった。


 「やっときましたか、玄武のドレイク。」


 笑みを浮かべるピサロの視線の先には死刑台に現れたドレイクが映っていた。そして共鳴亀裂装置が次々と原因不明の故障を起こしていくとその隣にリナも現れた。共鳴亀裂はなくなり、再び徳寿から輝きが放たれていく。


 「ふぅ~、一番乗りだったか。ほかの連中は遅いな!」


 「いいえ、ドレイク。すでに到着しているようよ。」


 リナが指さした方角にはジェイドとアレス、リディーネそしてロードギアが見えた。


 「あ~あ、先越されちゃった。」(リディーネとマイコ)


 「ジェイドちゃん、マイコちゃん、リディーネちゃん、行ってみる?」


 「派手な演出で登場するほうがいいだろう・・・蒼龍」


 ジェイドの背後から蒼龍が出現する。ビックボスの命令に広場に集結してくる砲台に対して巨大化した蒼龍は両手に持つ宝玉から蒼色のエネルギー体を放った。それは的確に砲台と砲撃手のみを狙ったもので周囲を逃げ惑う人々には当たりはしなかった。アレスの指示を待ちきれずに白虎も巨大化すると兵士達を次々と喰らっていく。


 「蒼龍のジェイド、そして白虎のアレス!」


 「何をのん気なことを!ええい、ワシ自ら消し去ってくれるわい!」


 激怒したビックボスは観覧席を出ていくと腰を落とし丹田に力をためていく。その闘気とも理力ともとれるエネルギーにジェイドもアレス、ドレイクですら驚愕した。


 「我が波動・・・受け止めてみるがよい!金剛砲!!」


 ビックボスが放った金剛砲は徳寿とドレイク、リナがいる死刑台目掛けて放たれた。恐ろしいほどのエネルギー体にドレイクは身構えた。だがそのエネルギー体にもうひとつのエネルギー体が激突すると二つとも消滅した。


 「ワシの金剛砲と同等の力じゃと!」


 困惑するビックボスだがピサロは歓喜の声をあげて喜んだ。待っていたとばかりに席を立ちあがると拍手しだした。


 「素晴らしい・・・素晴らしい力だわ。主役は最後に登場するって本当だったのね。嬉しいわ。朱雀のタカヒト!」


 てんとの球体に乗ってタカヒトとミカ、てんとの三名が死刑台に降りてきた。


 「徳寿様、遅れました。」


 「おお、てんと。皆、無事で何よりじゃ。」


 「チェッ!タカヒト、俺がビックボスと戦っていたんだぜ。

  邪魔する奴があるかよ。」


 「・・・すみません。」


 「まあ、いいや。皆、集まったわけだしどうするんだ、てんと?」


 「どうする?おかしなことを聞くのだな。

  私の考えなど聞くような奴ではなかろう?」


 「へっへへ・・・じゃあ、いっちょ、やったるか!」


 「待つのじゃ!」


 やる気満々のドレイクをとめたのは徳寿であった。ここでの戦闘は無駄に戦火を広げるだけとのことだった。悔しがるドレイクはビックボスに捨て台詞を吐いた。


 「今日のところは見逃してやる。」


 「面白いことを言うもの、ワシはいつでも挑戦を待っておるぞ。」


 「あら?どうしたのです。闘うのではないのですか?私はここにいるのですよ?」


 ビックボスとドレイクの会話に割って入るようにピサロは言った。


 「上等だ!今、やってやるぜ!」


 「待て!」


 徳寿の言葉も聞かずにドレイクはピサロに向っていく。玄武が現れ、ドレイクは闘気を極限まで高めていくと渾身の斬神刀をピサロの頭上に振り下ろした。だがそれがピサロに当たることはなかった。それどころかドレイクは膝をつき、口から血を吐き出した。


 「ゴハッ!なんだ・・・と・・・」


 「ホッホホホ、いかがいたしました?」


 「くそ、何しやがった?」


 斬神刀を手に立ち上がろうとしたが膝が震え思うように立てないドレイク。そこにリナが雷撃を放つがピサロを捕らえることができなかった。圧倒的な力は脅威になる。ドレイクはピサロを睨みつけながら勝機を必死に探していた。


 「私は創造神、すべては私の思うがままよ。」


 「その言い方だと貴様が未来のすべてを決めているみたいな言い方だな。」


 「ええ、そのとおりよ。私が描いたとおりにすべては動くのです。何故ならこの物語を書いているのは私なのですから!」


「ケッ、そんなのクソッ喰らえだ!貴様の言うとおりたしかに未来は決まっているのかもしれねえ・・・けどな、それでも抗うのが生きるって事だ。」


 「抗うね・・・そうだ!いいことを思いついたわ。」


 ピサロは指をパチンッと鳴らすと空間にブラックホールが出現した。その中にビックボスとアリシアそれにもうひとりの人物が入っていく。最後にピサロが入っていく。


 「この先は私の創った世界・・・新天道があるわ。私の集大成よ。抗ってみせるのよね?見せてくれるかしら。あなた達の抵抗ってやつを。」


 残されたタカヒト達はその場に座り込んでしまった。圧倒的な力を前にさすがの四神でも脅威を感じていた。ドレイクに近づくと徳寿は言った。


 「奴には誰も勝てんのじゃ・・・諦めて、頭を垂れるしかあるまい。」


 「徳寿様・・・」


 「てんと、ワシらの遠く及ばない世界にピサロは行ってしまったのじゃ。諦めねばなるまい。」


 誰もが限界を、諦めを感じているとタカヒトが口を開いた。


 「とくべえさん、僕は諦めないよ。だってセシルと約束したんだ。」


 そう言い残すとタカヒトはブラックホールに入っていく。ミカは何も語らずに徳寿に一礼するとタカヒトの後を追っていく。


 「ぐっ、リナ、肩を貸してくれ。タカヒトだけに任せておけないからな!」


 フラフラしながらもたちあがったドレイクはリナに肩を借りながらブラックホールに入っていく。


 「しょうがない奴らだ。朱雀と玄武が行く以上俺たちも行かねばなるまい。」


 「俺もそう思う。行くっきゃないね!」


 ジェイドとアレスもブラックホールへと進むとその後をマイコのロードギアとリディーネがついていった。その場に残されたてんとは徳寿に言った。


 「徳寿様・・・」


 「わかっておる・・・気をつけていくのじゃぞ。ワシも必ず向う!」


 てんとは徳寿に一礼するとブラックホールに消えていった。すると徳寿の隣にレインが現れた。


 「いよいよ最後の戦いになる。」


 「そうじゃの・・・レインよ、彼らに協力してくれぬか?」


 「どこまでできるか・・・システムはピサロが掌握している。私の存在もいつまで続くことか。」


 「彼らが・・・最後の希望なのかもしれんの。」


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