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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
206/253

キングダムシティ

 「いよいよかしらね。」


 「ピサロ様?」


 「彼らが来る・・・感じるわ。私を殺しにやってくるわ。」


 「ピサロ様を?許せませんわ!」


 アリシアは声をあげた。現在、ピサロを中心にアリシア、ビックボスの三名は会議を行っている。内容はやはり徳寿の死刑執行についてである。


 「徳寿が死ねば六道分権派を唱える者がいなくなる。我らが推進する天道集権派がすべてを掌握する日も近いのじゃな。」


 「六道分権はあなたが一番嫌っていらしたわよね。」


 「天道以外の者が権利を主張しようなど不届き千万じゃ。」


 「あなたがすべての権利を掌握したいのではなくて?」


 「若き肉体を手に入れ、野望をも手に入れたいと思うことは罪かの?」


 「ビックボス!ピサロ様に代わり天道を支配したいとは許せませんわ!」


 「アリシアさん、いいのです。私はかまいませんわよ。ビックボスさんが天道のトップに立とうとアリシアさんが立とうとかまわないのですから。」


 「・・・メリットはおぬしにあるのかの?」


 「メリット?おかしなことをおっしゃるのですね。メリットもなにも私は創造神なのですよ。つまりビックボスさんが天道を掌握したとしても私とは対等ではないということです。」


 「かなわんわい。ワシはこうべを垂れることにするわい。」


 「良い選択ですわ。反逆者徳寿の執行日は明朝と決定します。」


 徳寿死刑執行日が決定して各部署へと通達された。その情報はすぐにてんと達にも伝わった。徳寿の死刑執行に一番驚いたのはてんとである。捕まっている可能性は否定できなかったがまさか死刑執行が決まっているとは考えてもいなかった。そのてんと達はすでにキングダムシティの都市部にまで到着していた。


 「ダメよ!これはきっと罠に決まってる。みんなと合流するまで動いちゃダメ!」


 「それでは遅すぎる。執行日は明朝なのだぞ。」


 「・・・行ってみる?」


 「タカちゃん?何言っているの?」


 「てんとの気持ちもわかるしそれに朱雀が行けって。」


 「朱雀・・・タカヒト、朱雀と話せるのか?」


 「うん・・・」


 (我の力を得たいのか?)(朱雀)


 タカヒトの背後から赤い炎の翼を広げた朱雀が現れたが朱雀はそれ以上語ることもなくタカヒトの背後に浮遊しているだけであった。タカヒトによれば朱雀は他の四神も徳寿の情報を聞きつけ明朝、死刑執行場へと向っているらしい。


 「そうか、ならばやはり徳寿様の救出に向う。」


 「・・・どうしたの、ミカちゃん?」


 「ちょっと胸騒ぎがして・・・」


 ミカはかなり動揺した様子でタカヒトは心配した。いままでミカがこんなにも動揺した姿を見たことがなかったからだ。現在、タカヒト達は都市部にある宿泊施設に身を寄せているがどういうわけかタカヒト達を天道軍兵士達は捜索していなかった。そのおかげで宿泊施設にも泊まれたのだが・・・たしかに罠と疑う必要があった。


 「陽が昇る前にここを出るぞ。」


 タカヒトとミカを休ませるとてんとは天道兵士の襲撃に備えて周囲の偵察に出かけた。陽が昇り始めた頃、ドレイク達もキングダムシティ駅に到着した。


 「ふぅ~、やっと着いたか。長い列車の旅だったぜ。」


 「そうね。でも新婚旅行にしては満足だったわよ。」


 「そうか?おい、お前達にもつきあわせて悪かったな。地獄道に行くんだろ?気をつけて行ってこいよ。」


 怨霊達は愛想笑いを浮かべながら列車は一路地獄道へと出発していく。ここにくる途中でドレイクとリナは徳寿死刑執行の情報を聞いた。タカヒト達も執行場に向かっていると玄武から聞きこのまま執行場へと向っていく。


 「ねぇ、本当にミカ達はここに来るの?」


 「間違いない。ドレイクもタカヒトもすぐに来る。蒼龍がそう言っている。」


 「俺の白虎も言ってるよ。」


 死刑執行場に一番早く到着したのはジェイドとアレス、マイコとリディーネだった。執行場広場にはすでに天道兵士達が準備に取り掛かっており、マイコ達は広場を見下ろす時計台の屋根にのぼっていた。


 「なあ、ジェイドちゃん。徳寿って大切な人なのかい?」


 「俺とてんとの恩師だ。」


 「ふう~ん・・・じゃあ助けないとな。なっ、白虎」


 (喰っていいのか?)(白虎)


 「徳寿はダメ。」


 アレスは白虎の頭を撫でると猫のようにジャレていた。それを冷たい眼差しで見つめていたのが蒼龍である。なにを語るわけでもなくジェイドの背後で浮遊していた。マイコもロードギアのチェックを念入りに行い徳寿救出準備が着々と進められていく。

 死刑台近くに一台の馬車が近づいてきた。荷台から兵士達が降りてくると手錠と足枷をされた徳寿が降りた。周囲を見渡しながら徳寿はレンガ造りの建物に入っていった。徳寿が建物に入っていくと続いてもう一台の馬車がやってきた。徳寿が乗ってきた馬車とは明らかに違い高級感あふれる造りをしている。荷台からはピサロとビックボスそしてアリシアともうひとりの人物が降りて建物へと消えていった。屋根の上から見ていたリディーネが苛立った様子で言った。


 「ねぇ、救出のチャンスだったんじゃないの?」


 「いや・・・まだだ。ピサロとビックボスにアリシア・・・もうひとりはおそらく奴らと対等の能力を持っているのだろう。戦力に差がありすぎる。」


 「俺もそう思う。焦る事ないよ、リディーネちゃん。タカヒトちゃんもドレイクちゃんもすぐ近くまで来てるからさ。」


 「焦らない、焦らない。」


 マイコはリディーネに微笑む。その建物に入っていったピサロは徳寿の捕らえられている部屋に入った。部屋にいた兵士に退室を命じると徳寿はピサロとふたりっきりとなった。


 「よいのか?老いたとはいえ、ワシの能力は衰えてはおらんぞ。」


 「ええ、大丈夫ですわ。

  どう足掻いたところでここからは逃れられないのですから。」


 「何故そこまで権力にこだわる?お主はすでに六道を治めておる。それ以上に何を求めておるのだ?」


「フフフ、いいでしょう。冥途の土産と言ってはなんですが教えて差し上げます。あなたのおっしゃるとおり私は六道をすでに治めておりますわ。アムルタート人との大戦の末に故郷と同胞を失い・・・それから懸命に働きました。一時は死にかけましたけどね。天道や他の世界を創り・・・まあ、今ではこうして頂点に立たせていただいております。」


 「頂点に立たせていただいておるとな?旧支配者達を・・・六亡星達を黄泉の国へと落とし、人道では潜水艦・飛行機と言った戦略的技術を与え、戦争を起こさせた。いや、それ以前にも天道技術により文明を発展させかけてては破壊しておったの!」


 「そうだったわね。まったく、人道の者達が一番低脳だったわ。次世代を考えず利権だけを考える奴ら・・・私は嘆き、仕方なく破壊したものですわ。」


 「仕方なく?天道の技術に近づくことを恐れたのじゃろ?各世界に文明を開花させておきながら天道を脅かすほどの大国になれば滅亡に追い込む。タミエル文明は大火災により絶滅、ペネム文明は疫病により消滅、サミネル文明は水害により水没、そしてグリモア文明は地殻変動により滅亡。絶対的は恐怖による支配こそがお主のやりかたじゃろう。」


 「絶対的な存在・・・しかし恐怖での支配には限界があるわ。そこで私は考えたわ。すべての事柄を私自身が決めてしまえばよいと。私はね、小説家になりたいのよ。私の書いた小説通りにすべてが動く。そうすれば皆が幸せに生きていけるとそう思わないかしら?」


 「ほう、皆が幸せとな。お主が幸せになるの間違いではないのか?システムを使い生きる者すべてを掌握しょうと誰もが幸不幸を背負いながら懸命に生きておるのじゃ。その者達を操作しょうとはおこがましいとは思わんか!」


 「フフフ、年長者に対して大した口の聞きようだわね。それも私の寛大な心で受け止めて差し上げます。この日の為に情報を操作してきたのですから。話もこれくらいでよろしいかしら。執行には私も立ち会いますから安心して死んでくださいませ。」


 そう言うとピサロは部屋を出ていく。ドアが閉まると鍵がかけられ兵士に監視される徳寿はてんと達の身を案じていた。部屋を出ていったピサロはアリシアやビックボスの待つ部屋へと入っていく。


 「どうですか?彼らは行動を開始しました?」


 「まだじゃ。本当に来ると思っておるのか?」


 「もちろんです。徳寿の死刑は天道中に聞き広がってます。必ず彼らは救出に来るはずです。私は信じていますわ。」


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