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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
201/253

セブンブロック

 「タカヒトの様子はどう?」


 「なにも話してくれないからわからないけど・・・セシルと一緒だったみたい。」


 「セシルって四天王の?」


 リナが確認するとミカは黙ったまま頷いた。バベルの塔最上部の要塞はすでにドレイク達が掌握していた。ミカとリナは食堂で料理を作っているがあまりにも大きな設備に少し使いこなせないほどだ。どうしてセシルと共にいたのかはわからないがタカヒトの様子を見るとかなり親しい関係だったようだ。


 「今は話さなくてもいずれ話すと思うわ。」


 「そうね。今は心の整理がつかないのかもしれない。タカちゃんが話してくれるのを待つことにする。」


 「ミカがいいならそれでいいんだけど・・・リディーネはここでなにをしているのかしら?」


 「アタシ?・・・つまみ食いに決まってるでしょ。察しなさいよね!」


 「まあ、呆れた。」


 リディーネの行動にリナが呆れているとミカがクスクスと笑っていた。そしてタカヒトのことを気にかけていた者がもうひとりいた。


 「ではセシルはピサロに敵対していたと解釈していいのだな?」


 「うん・・・すごく嫌っていたし・・・。」


 「そうか・・・ほかに情報はないのか?私達はこれからピサロのいるキングダムシティに潜入するのだ。できるだけ情報はほしい。」


 「うん・・・ほかには・・・ないよ。」


 「そうか、疲れているところをすまなかった。」


 「・・・・」


 てんととの会話を終えたタカヒトはうつむいたまま部屋を出ていった。すると奥の部屋に隠れていたドレイクとジェイドがてんとの部屋に入ってきた。


 「タカヒトの奴、何か隠してやがるな。」


 「何故、追求しなかった?」


 「タカヒトが自ら話す時がくるだろう。」


 「そうか、信頼関係が出来ているのか・・・少し妬ける。」


 「・・・・ジェイド。」


 「まっ、俺もタカヒトの剣術の師匠として待つことに決めたぜ。」


 「いままで疑っていた奴がよく言う。」


 「うっ、疑ってなんかねぇって・・・おっ、俺はだな・・・。」


 「ジェイド、同じ四神としてタカヒトを信じてほしい。」


 「同じ四神か・・・ここはてんとの言葉を信じるとする。」


 「ああ、そうだな。タカヒトも・・・ついでにジェイドも俺は信じるぜ。」


 「あっ、こんなところにいたんだ。ご飯の仕度が出来たよ。」


 急にドアが開くとアレスが笑顔でそう言った。ドレイクにジェイドそしててんとは顔を見合わせると笑った。大声で笑った。アレスは何が起こったのかわからずにつられて笑った。


 「そうだった、アレスがいたんだよな。同じ四神の。」


 「アレス、もしかしたらお前がタカヒトを救ってくれるかもしれないな。」


 「えっ?・・・何々?なんの話?」


 「タカヒトを頼む。」


 「えっ?ジェイド?頼むって・・・」


 ドレイクがアレスの肩に手をまわすと一緒に食堂へと歩いた。天道軍兵士の胃袋を支えるだけに食堂にはテーブルとイスがどこまでの並んで設置されている。遥か遠くまでテーブルが設置され、リディーネとアレスはどのテーブルに座るか悩んでいた。


 「ちょっと、これは悩むわね・・・アレスはどのイスに座るのよ。」


 「僕は一番遠くがいいな。リディーネの顔を見なくてすむから。」


 「はぁ~!この美貌が見れないなんてアンタ大きな損をしてるわね。」


 「損っていうか・・・得ってかんじ?」


 「殺す!」


 火炎を投げつけながらアレスを追いかけていくリディーネ。そんなふたりを相手にすることもなくほかの者達はイスに座ると用意された料理に手を伸ばしていく。箸を持たないタカヒトを心配してミカが皿におかずをよそるとタカヒトに差し出した。


 「タカちゃん・・・食べようよ。」


 「・・・・・」


 反応のあまりないタカヒトにミカは少し落ち込んでしまった。なんとか元気を取り戻してもらおうと努力するがまったく受け入れてもらえなかった。ミカが少し落ち込んだ時、タカヒトの隣にアレスが座った。


 「タカちゃん、うまそうだな。いただき!」


 アレスはタカヒトの皿からエビフライを奪うと美味しさそうにそれを食べた。「うまい、うまい」と連呼しながら皿によそられたおかずをすべてたいらげてしまった。するとアレスの姿を捜していたリディーネが近づいてきた。


 「オラ、なに飯なんか食ってんだよ!

  リディーネ様を怒らせた罪は死のみと思い知れ!」


 「うわぁ~、鬼のリディーネが来たぁ~!助けてぇ~。」


 笑いながらアレスは逃げてその後をリディーネが火炎を手に追いかけていく。その姿を見たタカヒトの口が少しほころんだ。


 「・・・どことなくポンマンに似てるね。」


 「そうね・・・なんか楽しそうね。」


 「ミカちゃん、お腹空いちゃった。」


 「待っててね。よそってくるから。」


 少し涙目のミカは皿を持つと嬉しそうでその表情を見たリナは笑みをこぼす。今までのことを忘れる勢いでタカヒトは皿に盛られた料理を平らげていく。食事を終えると最終目的地であるキングダムシティへの潜入について話がされた。潜入方法はこの要塞内にあるゲートを潜るのみ。すでにコントロールルームでのプログラムも済んでいた。四神も集結し、ピサロを倒す術は手に入れていたがここにきて問題点がいくつか浮上した。


 「ひとつは徳寿様の行方とそして捜索に出たレインの行方だ。」


 「ほかにもある。すでに創造神システムを掌握しているはずのピサロが何故システムを発動させないか。」


 「おいおい、ジェイドもてんともこんなところで考え込んでも先には進めないぜ。答えを知りたければ自分の足で確認しなきゃな!」


 「そうそう、ドレイクの言う通り。俺も師匠を早く見つけに行きたいんだ。」


 「皆で前に進もう!」


 「タカヒト・・・・そうだな。私達はその為にここまで来たのだ。」


 「よ~し、んじゃあ、いっちょ行ってみるか!」


 ドレイクの掛け声と共に最終目的地への出発を決めた。出発日は一週間後として準備に取り掛かることになった。ピサロとの直接対決が予想される為に準備は念入りに行われたがその中でも自由な時間が少しはあった。その時間を利用してミカは準備と称してタカヒトをデートに誘った。


 「ねぇ、ミカちゃん。てんとに頼まれたものってこれで全部?」


 「えっ!・・・えっと・・・あっ、あとは・・・ヤコブの尾が必要かな。」


 「ヤコブの尾?・・・聞いたことないけど・・・どこにあるの?」


 「えっと・・・あっちのほうかな。」


 しどろもどろのミカはタカヒトの手を強引に握ると歩いていく。こうして一緒に歩くのも久しぶりだった。タカヒトは少し鈍感なところがあるから嘘をついて強引に連れていかないとデートもできない。ミカはタカヒトの横顔を見つめた。ありもしないヤコブの尾を捜している真剣な表情に少しドキッとする。誰もいない要塞内をゆっくりと歩いているだけだったがミカにとってとても楽しいデートだった。結局、ヤコブの尾は見つからなかったがミカは「皆のところに戻ろう。」とタカヒトに伝えた。


 「ねぇ、てんと。ヤコブの尾が見つからなかったんだけど大丈夫?」


 「ヤコブの尾?なんだそれは?」


 「えっ・・・だってミカちゃんが・・・。」


 「いいのよ、タカちゃん!ねぇ、てんと!あれはいらなかったんだよね!」


 「・・・・・」


 「そうなんだ・・・ならいいけど。」


 なんとなく納得したようなタカヒトはミカとてんとを残してドレイクのほうへと歩いていった。ミカはヤコブの尾の件について謝るがてんとはさほど気にしてもいない様子だった。ドレイクと会話しているタカヒトのもとへ走っていくミカをリナが呼び止めた。


 「どうだった、久しぶりのデートは?」


 「うん・・・楽しかったよ。ただ歩いていただけだけどね。」


 「フフフ、最愛の人といられるだけで女は幸せなのよ。」


 リナの言葉にミカは顔を赤らめた。最愛の人といられるだけで幸せなんてこと考えてもいなかった。ミカはただタカヒトと一緒に居られればよかった。でもそれが幸せなんだとリナに言われて気づいた。ミカは気づいたのかもしれない。タカヒトが自分にとってかけがえのない存在ということに。準備の終えた彼らは食堂に集まるとドレイクが神妙な面持ちで口を開いた。


 「皆の準備も整った。いよいよ明日、セブンブロックに潜入する。ピサロのいるキングダムシティだ。警備も厳重だろう。強敵もいる。それでも先へ進むかどうかよく考えてほしい。明日にこの場に集まろう。誰が欠けたとしても恨むことはしない。それほど危険で過酷な戦場へと向うのだからな。それじゃあ、解散だ。」


 ドレイクが席を離れると皆部屋に戻った。皆に考える時間が与えられた。創造神システムを手にしたピサロに勝てる要素は見当たらない。アリシアの技も攻略したわけでもない。ビックボスは全盛期の力を取り戻した。ほかにもまだ見たこともない強敵がどれくらいいるのだろうかわからない。徳寿もレインも依然消息が不明だ。勝てるどころか生きていられることすら叶わないだろう。部屋に戻ったタカヒトは布団に入ると早めの就寝を取った。隣のベッドにはてんとが寝ている。


 「てんと、僕達どうなっちゃうんのかな・・・あれ、てんと?・・・寝ちゃった?」


 「起きている。どうなるかは行けばわかることだ。恐くなったのか?」


 「恐くは・・・そうだね。恐い。恐いよ。」


 「逃げてもいいんだぞ。誰も責めはしない。」


 「違うんだ。恐いんだけど・・・僕の中にあるなにかがそれを許さないんだ。」


 「何を許さないんだ?」


 「わからない。僕自身は恐いのに闘えって心が叫んでいる。」


 「・・・明日は早いぞ。もう眠るんだ。」


 「うん・・・おやすみ。」


 夜遅く、誰もが寝静まった要塞内でタカヒトは眠れない夜を過ごしていた。すでにてんとは眠っており心臓の鼓動が激しく体内を血の流れる速度が速くなるのを感じ取っていた。そしてタカヒト以外にも眠れる夜を過ごしていた者達がいた。ドレイク、アレスそれにジェイドの四神達は来たるべき大戦に鼓動の高まりを抑え切れなかった。


 「皆、揃っているか・・・そんじゃあ、いっちょ、行ってみるか!」


 食堂には誰も欠けることなく皆が集まった。すでにセブンブロックへのゲートは開かれてドレイクの合図と共に警戒しながらもゲートを潜り抜けるとそこは薄暗い部屋だった。


 「ようこそ、セブンブロックへ。お待ちしておりましたわよ。」


 「ピサロ!」


 薄暗い部屋の中心にはピサロが立っていた。その隣には全身が黒ずくめのマントで覆われた者がひとりだけいる。ジェイドは右手をピサロに差し向けると氷柱を放った。だがそれはピサロの目前で止まると粉々に砕かれた。


 「マテリアルフォースは俺と同じらしい。」


 「同種のよしみでジェイドさんに私からもプレゼントがあるわ。」


 「・・・・・」


 ピサロの隣にいた黒ずくめの者がマントを脱ぎ捨てた。色白の肌にサラサラした黒髪にジェイドは見覚えがあった。




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