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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
199/253

天道最終兵器 その名はプルガトーリオ

 「さてとそろそろ休憩にしょうか。」


 セシルの言葉に神獣達はテーブルとイスを用意していく。その足元にはネオギガントスとアーマーサウルスの焼死体が絨毯のように敷き詰められていた。死臭を嫌ったセシルはパラディーゾに命ずると大きな口をあけて次々と焼死体を飲み込んでいく。丁度その頃、紅茶ができあがりセシルは香りを楽しむと一口飲んだ。


 「う~ん・・・紅茶はアールグレイに限るね。

  柑橘系の香りが一番好きなんだよね。」


 セシルとタカヒトがいる場所は司令室が近いようで防衛戦線の張られ方が凄まじかった。もちろんセシルの火炎にすべてひれ伏せているがさすがに疲れたようだ。恐ろしいのはセシルの能力でここに来るまでタカヒトはおろか神獣すら攻撃には参加してはいない。セシルのみの単独攻撃で天道軍を壊滅にまで追い込んでいる。


 「休憩ももういいかな。

  そろそろ司令室に着くと思うし・・・最終兵器も見れるかもね。」


 「最終兵器って?」


 「行けばわかるよ。」


 タカヒトの肩をポンッと叩くと笑顔でセシルは歩いていく。最終兵器がなんなのか全くわからないタカヒトだがリッパーに促されて他の神獣とともに後を追う。セシル接近の情報を聞いたピサロは目前のプルガトーリオを見つめていた。


 「なにもここにくる必要性はなかったのではないかな?」


 「いいえ、これをセシルに奪われるわけにはいかないわ。」


 「大丈夫ですわ、私がプルガトーリオを守ってみせますから。」


 ピサロの手を握りアリシアはウットリしている。要塞内の司令室よりさらに高いエリアにプルガトーリオは設置されていた。天道軍の研究所で偶然発見された物質により生み出されたプルガトーリオはここにある一基のみである。この兵器をセシルに奪われることはピサロにとって大打撃となることは間違いない。どうあっても死守しなければならないピサロの想いはビックボスにも伝わっている。


 「我らが終結すればセシルとて敵ではないわい。」


 プルガトーリオを取り囲むようにビックボスとアリシア、ピサロがいる。そんなことなどまったく知る由もないセシル達は順調にエリアを登っていく。司令室に辿り着いたセシル達であったがそこには兵士独りいなかった。セシルはパネルを操作してモニターの確認をするがプルガトーリオはさらに上のエリアに設置されていることだけしかわからなかった。


 「情報やデータの類はロックされている。プルガトーリオの設置位置が記されていることがなんかキナ臭いね。」


 「どうするの?」


 「もちろん行くよ。進まなければ未来は開けないからね。」


 セシルが言った未来とはどういうものなのだろうか・・・タカヒトには理解出来なかった。タカヒトにとってもピサロは倒さなければならない相手ではある。しかしセシルのピサロへの執着心は異常とも言えた。そこまで執着するほど誰かを思ったことなどタカヒトにはなかっただけにセシルに対して恐怖すら芽生えていた。小さな階段をのぼっていくと鉄扉が目の前に迫ってくる。鉄扉は重量感もあり存在感もある。完全にセキュリティ・ロックされたその扉の向こうには間違いなくプルガトーリオがあるのだろう。すでにセキュリティ・ロックはセシルにより解除されてゆっくりとその鉄扉をセシルが開けた。広い空間の中央には変わった形の機械と三人の兵士らしき者達がいた。


 「ピサロ・・・」


 「アラ、セシルさん。私がここにいることがそんなに不思議なのかしら?」


 「いや、丁度よかった。手間も省けたし・・・」


 「なんの手間が省けたのかしら?」


 「決まってるだろ・・・殺す手間だよ!ターゲットロック・・・緋色極限闘気 ゼタウアジェトギガスト!!」


 セシルの手に緋色の水晶が出現するとそれにピサロとアリシアそれにビックボスが映された。そしてセシルの背後に鳳凰が大きく翼を広げて現れると膨大な数の火炎砲が放たれた。 逃げることすら叶わないほど火炎砲は凄まじくその炎にピサロ達は飲み込まれていく。姿が確認できないほど火炎砲は放たれタカヒトから見てもピサロの死は確実、いや死ななくとも致命傷は明らかであった。


 「案外呆気なかったね・・・!」


 セシルは自らの目を疑った。火炎が消えかけるとそこには無傷のピサロが立っていた。いや無傷というのはおかしいかもしれない。正確にはピサロ以外のアリシアとビックボスがダメージを負っていた。


 「ぐっ、さすがにノーダメージというわけにはいかんかの。」


 「はぁぅ・・・ピサロ様より頂いたこの紐がなければ死んでいましたわ。」


 「安心なさい。今のあなた方はセシルにも匹敵する力を得ているのよ。」


 火炎により焼かれたビックボスの服の下からは黄金に輝く鎧が見えて焼けたアリシアは一糸まとわぬ姿・・・いや紐らしき物を身にまとっていた。笑みを浮かべるピサロは平然とセシルを見つめていた。


 「このクソ野郎が!ターゲットロック、緋色極限闘気 ゼタウアジェトギガスト!」


 再び襲い掛かる火炎砲に対してアリシアは身にまとった紐を伸ばすとらせん状に広がっていく。その中に吸い込まれるように火炎砲が吸収されていく。


 「残念でした。坊やの火炎なんか私には通用しなくてよ。」


 「ババア、言ってくれるじゃねぇか!」


 「バッ、ババア・・・ピサロ様の前で私に恥を!」


 激怒したアリシアの紐がセシルに襲い掛かるがそれを簡単にかわしていく。ピサロとビックボスに動く様子もなく、タカヒトと三匹の神獣もセシルとアリシアの攻防を見つめていた。


 「あのさぁ~、火炎だけが俺の攻撃だと思ってないかい、オバさん?」


 「まっ、またも!オバさんなんて・・・殺してやる!」


 「殺す?業の神である僕を?図に乗るなよ!」


 「はっ!・・・はぁ~・・・・あっ、ぐう・・・いっ、痛い!」


 アリシアは急に床に両膝をつけると頭をおさえながら激痛に悶絶していく。もちろんセシルはなんら攻撃を与えてはいないのだがアリシアは床に頭を押し当てると苦悶の表情を浮かべて悲鳴をあげだした。それを見ていたピサロはビックボスに何かを伝えた。するとビックボスは手にした機械のパネル操作を始めた。


 「はぁ、はぁ、はぁ・・・ピサロ様?」


 「アリシアさん、もう安心よ。セシルは業の力を失ったわ。」


 「何?・・・何を言って・・・!」


 セシルは右手をアリシアに差し出していた。それだけでアリシアは激痛に襲われていたはず・・・しかし今では何もなかったかのようにアリシアは平然と立っている。セシルは両手をアリシアに向けたが先ほどまでの激痛を与えられない。


 「なんで・・・僕は業の神なんだ・・・」


 「フッ、フフフ・・・業の神だなんて・・・バカなことを・・・。」


 「何!」


 「業の神なんて存在しないわ。残されたあなたの能力は緋色のみ!」


 困惑するセシルにピサロは淡々と話を進めた。それはセシルの出生の秘密。セシルは・・・。


 「絞りカス・・・」


 「フフフ、業の神と豪語するわりには動揺しているのね。あなたも四神の話くらい知っているでしょ?四神の朱雀は地獄のもっとも深い場所にある業の塊。それは燃え盛り、すべてを溶かす。自ら命を絶った者が集められそこから逃れる者はいない。その者達の塊から生まれたのは朱雀で鳳凰ではないわ。業の塊の中でもっとも優れた生命体が生まれたのよ。それが朱雀。そしてその絞りカスから生まれたのが鳳凰ってわけ。わかったかしら?」


 「ぼっ、僕が・・・絞りカス?」


 「そうよ!あなたはタカヒトと同格でもなんでもないわ。なんの役にもたたないカスよ。」


 甲高いピサロの声が響き渡るとセシルは両膝を床に落とした。するとピサロは歩み寄りセシルに対して話を始めた。創造神システムにより生まれた四神。業の塊から偶然にも二匹の火の鳥が生まれてしまう。それが朱雀と鳳凰である。困惑したシステムはプログラムを組み直すことを最優先に考え能力の統合を図った。だがすでに時遅く統合できぬまま二匹の火の鳥は巣立ってしまった。その際の急激なプログラムの変更により業の塊と鳳凰の一部が統合してしまった。


 「あなたは業の神だなんて言ってたけど実際はね、鳳凰の魂である緋色玉に業の能力が統合しただけなのよ。まあ、そうは言っても確かに業の能力は厄介だったわ。どんな小さな業の塊であっても急激に膨張させて破裂させてしまうのだから・・・これでわかったかしら?あなたは業の神でもなんでもないのよ。」


 「・・・・僕は業の神だ!」


 「まだ言ってるわ。ひつこい男は嫌われるわよ。あともうひとつ言っておくわね。この天道最終兵器プルガトーリオはね、ほかの誰でもない対セシル用なのよ。驚いたかしら。」


 ピサロはセシルの行動にはホトホト手を焼いていた。緋色玉の能力も凄まじいがそれ以上に業の能力はピサロ自身をも脅かす力である。故にピサロは対セシル用の兵器開発を急務とした。研究開発の際に偶然発見された物質により生み出されたプルガトーリオこそ業自体を無効にすることができる唯一セシルに対抗できる兵器なのである。


 「業の能力を失い、緋色玉の能力も私の開発した紐の衣とゴールデンアーマーには通用しない。どうしたものかしらね?」


 「へっ!・・・バカ言いやがる。俺には仲間がいるんだぜ。」


 「誰のことをおっしゃっているのかしら?お仲間さん・・・って誰?」


 うっすらと笑みを浮かべるピサロにセシルは後ろを振り返った。そこには身動きもとれない状態のタカヒトと三匹の神獣が床に倒れうずくまっている。ハッとして気づいた時にはすでに遅かった。


 「理解してくれたかしら?プルガトーリオは業の存在自体を無効にするものよ。業から生まれた者に有効なもの。」


 ウインクするピサロ。セシルは立ち上がろうとするがプルガトーリオにそれすら阻まれてしまっていた。額からは大量の汗を流しもはや業の神にはほど遠い表情をしている。


 「くそっ、なんでこうなるんだ!あと少しだってのに・・・。」


 「あと少し・・・図に乗るんじゃねぇぞ、小僧!」


 ピサロは両膝を床につけるセシルの顔面を思いっきり蹴りあげた。頭を床に強打したセシルは額から血が流れ落ちる。その頭をピサロは踏みつけると甲高い声で笑いだした。


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