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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
195/253

上層エリアの戦い

 「やはり簡単には行かせてくれないようだな。」


 「それはそうだろ。俺達は天道にしてみればおたずね者だぜ。」


 (せやかて、この数は多すぎるやろ。見てみい!あれはネオギガントスとアーマーサウルスやで。)(玄武)


 (・・・・絶滅種でおじゃる。)(蒼龍)


 細い谷を抜けた先は広大な荒野が視界に入ってきた。その荒野には絶滅したはずの巨人兵ネオギガントスと魔物では最強と謳われていたやはり絶滅種のアーマーサウルスが群れをなしていた。あまりにも強大な力故に絶滅したネオギガントスとアーマーサウルスがドレイクとジェイドを敵視して迫ってきた。


 「フルパワーで蹴散らすか、

  あるいは牽制して突破口を切り開くか・・・どうする?」


 「アドバイスを受け入れるだけの器があったとは驚きだ。」


 「茶化すな・・・俺的にはフルパワーで蹴散らしたいがその後に控えている気配も気になるところだ。」


 「同感だ。気配からしてビックボスか。ここは協力して切り抜けることにする。根暗な奴らだが協力してくれ。」


 「おまえって結構、根に持つタイプだな・・・・まあ、いいや。そんじゃあ、いっちょ、やってみるか!」


 玄武ドレイクは両手を地面に押し当てると荒野をばかデカい壁を作り上げた。壁と壁の間を駆け抜けていくと前方に数匹のアーマーサウルスがこちらを睨みつけていた。蒼龍ジェイドは指をパチンッと鳴らすと後から大津波が押し寄せてきた。


 「おい、俺達も溺れるだろうが!」


 「・・・・」


 タメ息をついた蒼龍ジェイドが再び指をパチンッと鳴らすと氷の板が玄武ドレイクの目前に造られた。蒼龍ジェイドはそれに乗ると玄武ドレイクもすぐさま氷の板の乗る。勢い良く迫ってくる大津波になんとか乗った玄武ドレイクはバランスを保つのに精一杯だった。蒼龍ジェイドは慣れた様子で波乗りを楽しんでいると大津波にのまれていくアーマーサウルスが視界に入った。馬鹿デカい壁と壁の間を流れていく大津波は蒼龍ジェイドと玄武ドレイク以外にすべてを飲み込んでいく。


 「アーマーサウルスは退治できてもアレは無理だろ?」


 波乗りしているふたりの目前にネオギガントスが立ち塞がった。大津波にも動じずギガスはその巨大な両腕で獲物に掴みかかろうとしている。蒼龍ジェイドと玄武ドレイクは瞬時に氷のサーフボードから上空へ飛んだ。二枚のサーフボードが激突するがそれを噛み砕いたギガスは上空に浮かぶ二人を見つめた。天光の眩しさに眼を細めながら落ちてくる二人の姿を確認した。天光によりネオギガントスからは影しか見えない状態で何かを仕掛けてくるとは想像が出来なかった。上空より落ちてきた蒼龍ジェイドがネオギガントスの額に着地すると右手を押し付けた。ネオギガントスの額から白い煙がたちあがると次第に氷づいていく。


 「氷のオブジェは嫌いか?」


 氷漬けになったネオギガントスには蒼龍ジェイドの問いかけに答えることはできなかった。大津波も凍りギガスの胸元まで氷ついたアイスロードを蒼龍ジェイドと玄武ドレイクは歩いていく。壁と壁の間は完全に凍りつき氷のオブジェと化したネオギガントスを眺めながら進んでいく。玄武ドレイクの築いた壁にネオギガントスとアーマーサウルスが激突するが無駄な努力にすぎなかった。


 「まさに城壁の道だな。無傷で最上部エリアまで行けるとはラッキーだな。」


 「喜んでいるところを申し訳ないがそう簡単にはいかないようだ。」


 「何を言って・・・おい、嘘だろ?」


 城壁の道を見下ろすように大きな崖が双方にそびえたっていた。そこから巨大な黒い影が落ちてくると蒼龍ジェイドと玄武ドレイクの前にネオギガントスが現れた。雄叫びをあげたネオギガントスは巨大な拳を握り締めると蒼龍ジェイドに振り下ろした。しかし蒼龍ジェイドが左手を差し出すとネオギガントスの腕が凍り付いていく。激痛に悲鳴をあげるネオギガントス。蒼龍ジェイドは氷気を集めるとネオギガントスに投げつけると凍った腕を切断した。


 「ゴギャアァァァ~~!」


 悲鳴をあげたネオギガントスはそのまま凍り付いていく。玄武ドレイクが両手を地面に押し当てると激しい地震が発生して凍りついたネオギガントスの身体が割れ落ちた。玄武ドレイクに襲い掛かったネオギガントスも痩せ細って砂と化した。脅威の力にネオギガントスは恐れていたが次から次へと崖から落ちてくるネオギガントスに勢いは止まらない。


 「いつまで続くんだ。さすがに堪えるぜ。」


 すでに数時間以上は経過していた。玄武ドレイクの目の前に立つギガスの身体は乾燥して砂と化し、崩れた。依然、崖からはネオギガントスが飛び降りてきてはふたりに襲い掛かる。力の差は歴然としているが後を絶たないネオギガントスに精神的に追い込まれていくふたり。撤退も視野に入れた玄武ドレイクだが時すでに遅く歩いてきた城壁の道にもネオギガントスが立ち塞がり挟み討ちの隊形をとられていた。背中合わせの玄武ドレイクと蒼龍ジェイドは劣勢を強いられていく。


 「やばくなってきたぜ。いい考えはあるか?」


 「活路が見出せていればここにはいない!」


 「だろうな。おい、玄武!あとどれくらいもちそうだ?」


 (せやな・・・ぼちぼち弾切れってとこやな。)(玄武)


 玄武ドレイクは両手をネオギガントスが降りて来る崖に向けると砂化していく。ボロボロになった崖から墜落していくネオギガントスは城壁の道から外れ地面に激突して悶絶死した。しかしもう片方の崖までは破壊できなかった。すると蒼龍ジェイドが両腕を上空に向けた。次の瞬間、崖そのものが凍りついていくとネオギガントスも氷のオブジェと化した。


 「おうい!最初からそれやれってんだ!」


 「おまえもだろ。極限零度を広範囲に植えつけるにはかなり負担がかかる。」


 (そなたの宿主は相当足りない頭脳を持っているようじゃ。)(蒼龍)


 (そこがドレイクのいいところやろ。なあ、ドレイク)(玄武)


 「・・・・・」


 玄武ドレイクも蒼龍ジェイドも疲労はピークに達していた。ネオギガントスはすべて排除したが次に魔物が来たら闘うことどころか逃げることすら叶わないだろう。だが最悪の事態は最悪のタイミングでやってくる。


 「前座の試合を堪能してくれたようじゃな。

  そろそろメインイベントといこうかの。」


 「ビックボス。」


 「相手の都合は考えないようだな、老いぼれ。」


 「老いぼれとは言い草じゃな。お仕置きが必要じゃ!」


 ビックボスは凍りついた崖にいた。しかし玄武ドレイクが声に反応した時にはすでに背後にいたのだ。ビックボスの姿を確認した玄武ドレイクはその姿が小さくなっていくことに驚いた。いや、小さくなったのではない。自らが吹き飛ばされていったのだ。体勢を整えながらも地面に着地した玄武ドレイクは胸部に激痛を憶えた。


 「どうじゃな、老いぼれの拳は?」


 「老いぼれにしてはいい拳をもってやがる。何、食えばそうなるんだ?」


 「企業秘密じゃな・・・ジェイドも覚悟はできておるか?」


 「覚悟?年寄りは縁側でお茶でも飲んでいたほうが似合う。」


 「ほっ、ほほほ、若造が言い寄るわい。」


 ビックボスの目が光ると蒼龍ジェイドとの死闘が繰り広げられていく。蒼龍は四神の中で最も素早い属性を持つ。その能力をフルに生かしてもビックボスは蒼龍ジェイドの攻撃についてくる。


 「やりおるわい。このワシについてこれるとはさすがは蒼龍じゃ。」


 「年寄りに褒められても・・・な。」


 蒼龍ジェイドは右手を差し出すと冷気が集まってきた。その手には薄く鋭い刃が握られていた。鮮麗された直刃は日本刀にも近い形をしている。


 「氷刀・・・流穿剣とは恐れ入ったわい。

  どれ、ワシもそろそろ本気といこうかの。」


 ビックボスは両手に力を込めると突起した物質を作り上げていく。それほど刃は長くなく、かと言って短刀ほど短くもない。両手に持った剣を軽やかに振り回すと自信有り気な表情をした。


 「二本の小太刀、陰陽活殺術。」


 「ほっ、ほほほ、若いのによう知っておるわ。されど我が活殺術は一味違いぞい。頭脳だけでこの地位までのぼりつめたわけではないことを証明せねばな。」


 二本の小太刀の刃先を蒼龍ジェイドに向けると距離を一気につめてきた。左手の小太刀から繰り出される連続突きを紙一重でかわしていく蒼龍ジェイドは流穿剣で応戦していく。流穿剣は突きに特化した刀である。蒼龍の素早さと合わせればもっとも効果的な戦法である。その突き技をビックボスは右手の小太刀で受け止めた。いや、それだけではない。右手の小太刀で受け止めると同時に左手の小太刀を蒼龍ジェイドに突き刺した。左手の小太刀の軌道は蒼龍ジェイドにも見えていた。四神随一の素早さを持つ蒼龍ジェイドには簡単にかわせたはずだった。


 「ぐっ!」


 小太刀はスッと蒼龍ジェイドの右肩を突き刺した。瞬時に後方に回避した為に致命傷は免れたが右肩から血が止まることはなかった。左手に流穿剣を握り変えると呼吸を整えていく。


 「ほっ、ほほほ。動揺の色がよく見えるわい。主だけでは荷が重すぎろうて。玄武も同時に相手をしてやろう。かかってまいられよ。」


 「年寄り相手に卑怯な気もするがそうも言っていられない状況みたいだな。」


 玄武ドレイクは極刀 斬神刀を鞘から抜くとビックボスに振り下ろした。左手の小太刀でそれを受け流すと右手の小太刀を玄武ドレイクに振り下ろす。玄武ドレイクの目前で刃が止まった。


 「不用意に近づきすぎだ。いままでの相手とは違う。」


 「ああ、知ってるさ。お前ならこうすると思っていたよ。」


 「・・・ワシを相手に互いの確認とは余裕よな。」


 蒼龍ジェイドが小太刀を振り払うと玄武ドレイクと共にビックボスから距離を取った。激怒したのはビックボスである。両手に持った小太刀はその怒りと同調するかのように刃が長くなり太刀と姿を変えた。


 「我が陰陽活殺術奥義、月光輪を受けるがいいわい!」


 太刀を交差させたビックボスは両膝を曲げて腰を落とした。交差させた太刀を振り下ろすと巨大な斬撃が蒼流ジェイドと玄武ドレイクに襲い掛かる。受け止められるとふたりは手にした剣を構えた。次の瞬間、玄武ドレイクと蒼龍ジェイドの身体は吹き飛ばされていた。地面に叩きつけられた蒼龍ジェイドと玄武ドレイクは立ち上がるにもフラフラしている。


 「くそ、恐ろしいもん使いやがって。」


 「先の戦いの疲労が出てきている。ここは撤退する必要も・・・。」


 「おいおい、諦めることないだろ。奇跡ってやつは案外近くにあるもんだぜ!」


 「勝機はあるのか?」


 「さあな・・・まあ、こんな光景は以前にも経験したことがある。

  ジジイ違いだがな。」


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