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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
189/253

二匹の神獣との遭遇

 「ご苦労だった、アレス。」


 「師匠!」


 レインの姿に笑顔のアレスはニンマリした。レインの隣には車椅子のリディーネがおり、ミカ達の姿に驚いていた。


 「下層エリアの戦闘ってミカ達も関わっていたとはね!」


 「リディーネ!」


 ミカは走ってリディーネに近づくと車椅子に乗っている理由を問い掛けた。心配するミカにリディーネは元気に答えた。


 「大丈夫よ、これくらい。どうってことはないわ!」


 「そうか、ならば私達への謝罪をしてもらおうか!」


 「謝罪?アンタ何言ってんの?」


 てんとはリディーネにキツイ口調で言った。リディーネはてんとの指示に従わずに自分勝手に行動した。その結果、自らも傷つき、そしててんと達はアレスの助けがなければ確実に死んでいた。タカヒト達とも別れて今も消息がわかっていない。すべてリディーネが原因というわけではないがキッカケを作った張本人にであることはたしかである。


 「何よ!追いかけて来いなんて言ってないでしょ!」


 「先代破壊神の遺言もある。私達はおまえを守る約束もしたのだ!」


 「知らないわよ!そんなの・・・謝らないからね!」


 「う~ん・・・話を聞く限りでは・・・リディーネちゃんが悪いね。」


 「うっ、うるさいわね!アンタは黙ってて!」


 「ちぇっ、ちぇっ!」


 アレスは少しふてくされるとレインと共に家に入った。リディーネも入ろうと車椅子を押すがリナが立ち塞がった。


 「まだ、話は終わってないわよ。謝るまで家には入れないわ!」


 「なによ・・・どきなさいよ!アタシは怪我人よ!」


 「自業自得よ・・・さあ、謝るか謝らないか。決めてちょうだい。」


 車椅子に座るリディーネを見下ろしながらリナは仁王立ちになって言った。ミカは止めに入ろうとするがてんとがそれを制止する。睨み合うリディーネとリナは一触即発寸前である。


 「あなたが何をしようが私には関係がないこと。でもそれにより私の大切な仲間が傷つくことは許せないわ!」


 牡丹色の輝きが放たれるとリナは雷の帯びた右腕をリディーネに向けた。戦慄を感じるリディーネは額から汗が流れ落ちる。てんとに止められたミカもマイコも固唾を呑んで見守っているとリディーネが口を開いた。


 「・・・・悪かったわよ・・・アタシだって・・・。」


 「リナ、もういいでしょ?リディーネ、私が車椅子を押すね。」


 リディーネの言葉を聞いたミカはふたりの間に割って入ると車椅子を押して家に入っていった。リナはポツリとてんとに言った。


 「・・・私って嫌な女ね。」


 「いや、あれでいい。」 


 「そうよ。リディーネはあのくらい言わないとわからない残念な子だからね。気にすることないよ、リナ。」


 そう言うとマイコとてんとはリナを連れて家に入った。レインの家は平屋であるがかなり広くて部屋数も多い。ダイニングテーブルにはアレスの用意した紅茶やクッキーが置かれていた。気配りも細かいアレスは一輪のバラが入った花瓶も用意していた。リディーネを部屋に寝かせてミカが戻ってきた。


 「少し休みたいって・・・。」


 「まあ、気にすることはない。リディーネも心の成長が必要だろう。さあ、アレスの用意した紅茶で一休みするとしょう。」


 レインはカップを手にすると香りを楽しみながら一口飲んだ。マイコに促されてミカもチェアに座った。皆でアレスの用意した紅茶を飲むとあまりの美味しさに驚いた。レインからアレスは記憶を失っていることをこの時に知らされた。


 「レインさん・・・以前に会ったことありますよね?」


 ミカの問いかけにレインは紅茶を飲むのをやめた。しばらく沈黙が流れるとレインは何も語らずに立ち上がるとダイニングルームから去っていった。


 「私・・・変な事聞いたのかな?」


 「気にすることないよ、ミカちゃん。師匠は物思いにふけることがあってね。ああいう感じでどこかに行ってしまうのってしょっちゅうのことだし。」


 笑顔のアレスは皆に部屋を案内するとゆっくり休むように言った。正直、てんともミカもリナもアレスの変貌ぶりに少し戸惑っていたが疲れもかなり溜まっていたらしくグッスリと眠ってしまった。タカヒト達がいなくなった修道院では修道者の遺体の上をモゾモゾと動く影があった。セシルの操る神獣のインフェルノとパラディーゾは遺体に近づくと喰らいついていく。食事を終えた二匹の神獣は新たな獲物の臭いを嗅ぐとその方向へ移動を開始していく。


 「さあ、今日も頑張るわよ!」


 朝から元気にリディーネは声をあげた。傷もすっかり治ったリディーネは鈍った身体をほぐすように走る。車椅子を降りた時に比べるとかなりスムーズに手足が動くようにはなっていたがそれでも以前のようにはいかない。額から汗が流れるとリディーネはその場に座り込んでしまった。するとミカが近づいてタオルを手渡した。笑顔でリディーネはそれを受け取ると汗を拭いていく。その光景をリナとマイコがバルコニーから見つめていた。


 「ミカって本当に優しいんだね。

  あのリディーネにもあんな態度取れるなんて凄いよ。」


 「私も今のリディーネと同様にミカに救われた。あの子には何か・・・言葉には言い表せないけど心を救う力があるのよね。」


 「そうかもしれないね。私も・・・たぶんリディーネもそう思っていると思うよ。」


 リディーネとミカの姿を、紅茶を飲みながらリナとマイコが眺めている頃、部屋の一室でレインはアレスとてんとに話をしていた。


 「四神?白虎?・・・師匠、オレね・・・あまりよくわからないんだけど。」


 「今はわからずともよい。その時は必ず訪れる。」


 「オレのほかにもいるんだろ・・・えっと・・・」


 「朱雀のタカヒト、蒼龍のジェイドそして玄武のドレイクだ。」


 「そうそうそれ・・・でも変な感じだね。彼らはオレのことを知っててオレは憶えてない。そんなんでピサロっていう奴倒せるのかな?」


 「それは私にもわからない・・・しかしお前達が唯一の希望であることは確かだ。協力してくれぬか?」


 「しっ、師匠!頭なんか下げないでよ。わかってるって!弟子として一生懸命頑張るから。」


 ガッツポーズをとるアレスにレインは少し涙ぐんだ。アレスはそんなレインを見て笑っていたがその師弟関係をてんとはしばらく眺めていた。部屋を後にしたてんとはバルコニーに向うとそこにはリディーネにミカ、リナにマイコが紅茶を飲みながらお喋りを楽しんでいた。近づけない感じがしたてんとは部屋に戻ると瞑想にふけっていく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「まったく、俺の邪魔をしょうなんて千年早いぜ!」


 「先年後にドレイクの相手をしなければいけないの?なんか大変だね。」


 「タカヒト・・・ものの例えだ。」


 「えっ、そうなの?僕てっきり先年待たないとダメかと思って・・・。」


 おトボケのタカヒトにさすがのドレイクとジェイドも呆気にとられた。彼らの足元には数十体の地獄軍の残党が倒れていた。中層エリアを目指して急いでいたドレイク達に魔物が襲い掛かってきたがさすがに相手が悪かった。魔物の半分はジェイドにより氷漬けに残りの半分はドレイクにより土に還った。ポカンとしているタカヒトには魔物の悲鳴だけが耳に入っていた。静まりかえった大地に妙な気配が漂ってきた。冷たくもなく熱くもなく、無機質な気配だ。ドレイクは斬神刀を構えるとタカヒトに言った。


 「嫌な感じだぜ・・・タカヒト、闘気を開放しておけ。こいつはかなりの強敵だ。」


 (ドレイクの言う通りだ・・・

 久しぶりに協力しなければ勝てそうにない。)(紫玉)


 (おし!俺様がメインでやってやるぜ!)(赤玉)


 (いや・・・ここはタカヒトを主格として我らはサポートにまわる。)(紫玉)


 (そうだね・・・・本当にヤバイ相手だし・・・)(白玉)


 (チェッ、なんだよ!根性なし共が!

  まあ・・・たまには言う事を聞いてやるか)(赤玉)


 タカヒトの意識の中では三つの色玉が話し合っていた。いつもなら折れないはずの赤玉がこうも簡単に納得するとはタカヒト自身驚いていた。たしかに色玉に意識を渡すと主格となった色玉は自由に身体を動かすことができる。だがタカヒトとの意識に若干のズレが生じる為に刹那という極めて短い時間ではあるが動きにロスが見られる。そのロスが今回の相手には致命的になると色玉達は理解していた。タカヒトは狂刀羅刹を両手に握ると闘気を高めていく。赤、紫、白の三色がタカヒトを包み込むように交じり合うとタカヒトを主格とした赤紫白タカヒトとなった。ジェイドはすでに青と蒼色に輝き、右の瞳は赤く左の瞳は冷酷な青色をしていた。


 「よ~し、そんじゃあ、いっちょ、やったるか!

  茶玉極限闘気  クル・ヌ・ギアス!」


 灰、茶色の輝きが増した灰茶ドレイクは地面に両手を押し当てると大地から茶色の透明な液体のようなものが浮き上がって向かってくるなにかを包み込んだ。だが液体はそれに触れることもなく消滅するとそれらは灰茶ドレイク達の目前に姿を現した。


 「なん・・・だ・・・こいつ等は・・・。」


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