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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
187/253

禁断の実

 「バベル・・・バラル(混乱)の塔とはよく言ったものだな。」


 教会を出たてんとは商店街らしき通りに向った。一見、活気に満ちているようにも見えるがてんとは店の奥で密売されていたあるモノを発見した。乾燥した葉のかたまりを店主が修道者に渡している。その修道者の後をてんとが追っていくとそこは小さな子供達の集まる施設であった。無邪気に遊ぶ子供達を呼び集めると先ほどの修道者はコップを手渡していく。それを手にした子供達は笑顔で飲み干していく。その後は興奮した様子で子供達は施設内を走りまわっていた。周辺調査を終えたてんとが戻って来た頃にはリナもミカも平常を取り戻していた。マリアの計らいにより隣の空き家に寝かせたもらうことになった。夕食を済ませたミカは頭を抱えながら言った。


 「なんか・・・ボォ~として・・・

  変な感じになったけど・・・今は頭が少し痛い。」


 「だろうな。あのホロホロ茶と呼ばれる液体は麻薬だ。」


 「えっ!麻薬って・・・犯罪者になっちゃったの、私?」


 「ミカ、ここは人道ではない。私の作った薬草茶を飲めば、浄化作用が見込める。嫌がらすにふたりとも飲むのだ。」


 てんとの作った薬草茶は苦くミカもリナもなかなか飲もうとはしなかった。もちろんてんとがそれを許すわけもなく半ば強引に飲ませた。別の意味でグッタリしているふたりをマイコがベッドまで連れて寝かせた。マイコとてんとにはホロホロ茶の影響は出ていなかった。


 「なんで私やてんとには影響が出てないの?」


 「詳しいことはわからん。地獄道の魔物にはかなり影響が出ていたのだが・・・。」


 麻薬の浄化作用の影響か、リナとミカはぐっすりと眠っていた。マイコもベッドで休ませるとてんとは眠らずに警戒態勢を取っていた。その夜、修道者は教会に集まっていた。煙のたちこめる教会内では誰もが祈りを捧げていた。もちろんマリアの姿もそこにはあった。


 「ピサロ様・・・迷える私どもをお導きくださいまし。」


 ピサロ像に修道者達は頭を床に押し当て祈りを捧げている。そしてその目前には地獄道の魔物が微動だにせず床に寝転んでいた。それは異様な光景であった。ホロホロの葉が敷き詰められた上に寝そべる数匹の魔物に修道者は祈りを捧げるといきなり噛み付いた。そしてその皮膚を噛み切るとムシャムシャと食べていく。天道人が地獄の魔物を喰らう光景をこの教会を治める教祖は口を開いた。


 「迷える子供達よ。ピサロ様の永遠の愛を受け取る試練に耐えるのだ。ピサロ様は私達を見捨てはしないであろう。何故ならピサロ様は私達を愛しておられるからだ。」


 両手を広げた教祖に魔物に喰らいつき口まわりを血だらけにした修道者達が歓喜の声をあげた。魔物の身体は修道者に噛みつき引き千切られ、床は血で染まっていく。深夜の晩餐が終了すると満面の笑みを浮かべた修道者達は帰路につく。


 「うぅ~ん・・・よく寝た。おはよう、てんと。」


 「ああ・・・朝早く悪いが今日はここを発つことにした。出発準備をしろ。」


 ミカはリナとマイコを起すと出発準備をしていく。身の危険を感じたてんとは一刻も早くこの地からの脱出を決めていた。この修道院では天道で禁断とされている実が流通している。ホロホロの葉は使用を禁止されている麻薬のひとつで常服すれば幻覚などの禁断症状が現れる。リナとミカは頭痛がしただけでその後のてんとがとった処置が良く、大事には至らなかったがこれ以上の使用は危険である。マリアがどういうつもりで麻薬を勧めたのか、以前わからないが関わることは止めたほうがよいとのてんとの判断でもある。早朝である為、起きている者はほとんど居らず、マリアも熟睡していた。気づかれないように空き家のドアを開けるとてんと達は忍び足で修道院を去って行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「ちょっと、アンタ!様子が変だけど闘えるの?」


 地獄道の残党と合流したリディーネはバベルの塔の階段をのぼっていた。魔物の数匹は涎を垂らし、足取りがおぼつかない様子でリディーネは気にしていた。視界も定まらない魔物達は階段を踏み外しては転んでいる。しかしこの天道に進軍してから連戦に続く連戦。疲労もピークに達しているのだろうと自分に言い聞かせていた。彼女達がいる場所はミカ達のいる修道院からかなりのぼった中層ステージにいた。バベルの塔は修道院のある下層ステージから中層、上層、最上層ステージから構成されている。リディーネのいる中層ステージは激戦区となっていた。地獄軍の残党がバベルの塔に潜入して来た事はすでに天道軍も察知していた。上層ステージには天道軍の施設があり、兵士達は中層ステージに迎撃に向った。残党とはいえ、魔物の圧倒的な力により当初天道軍は劣勢を強いられていた。


 「ちょっと、アンタ達!最初に勢いはどこにいったのよ?」


 紅リディーネは火炎玉を放ち天道軍の侵攻を食い止めてはいるが肝心の魔物達に戦闘意欲はない。口からは涎が垂れ、虚ろな眼、ハリツヤのいい皮膚も今ではただれていた。身体を小刻みに震わせ視点が定まっていない魔物達はキョロキョロとして何かを捜しているようだ。その魔物達は何かを発見するとリディーネの制止も振り切り、一目散にそれを目掛けて走っていく。魔物が向った先には天道軍兵士がいた。だが魔物達は襲い掛かるどころか兵士達の投げ捨てたなにかの塊を拾うと奪い合うように喰らっていた。腰を落とし地面に倒れこむと高揚感に包まれていた。天道軍の兵士にしがみつくと魔物はなにかを懇願していた。兵士のひとりが魔物になにかを伝えると先ほどまで高揚感に浸っていた魔物の目つきが変わった。


 「ちょっと・・・何考えてんのよ?

  ・・・アタシは破壊神よ・・・ちょっ、うわあぁ!」


 魔物達の一斉攻撃が始まるとリディーネは防戦一方に追い込まれていく。残党とはいえ破壊神七十二布武も数匹いた。リディーネは七十二布武に勝利して今の地位を手に入れたがそれは七十二布武に打算があったためで実力では彼らに遥かに劣る。特に七十二布武のウェパルはリディーネにとっては天敵である。ウェパルの持つ水の力はリディーネの火炎とは間逆の能力であり、紅玉上級闘気朱玉をも打ち消してしまった。


 「畜生!・・・このアタシが逃げるなんて・・・破壊神が逃げるなんて!」


 天道軍の笑い声の響く中、リディーネは独り撤退を余儀なくされた。破壊神撤退のご褒美に兵士はホロホロ乾燥葉の束を地面に捨てた。それを奪うように魔物達は取り合っていく。 残党とはいえ、破壊神七十二布武を得た天道軍は強力な武器を手に入れた。しかもホロホロの葉を得たいが為に死をも受け入れるであろう最強の武器をだ。この中層ステージは乾燥したレンガ敷きの床に広い敷地が続いている。身を隠す場所も少なく敗走したリディーネには厳しいステージでもある。


 「ちくしょう・・・紅玉最大闘気 獄熱地獄!!」


 恐ろしく巨大な火炎輪が上空より堕ちてくると快楽に支配された地獄軍の残党を包み込んでいく。生きながら焼かれていく残党からは悲鳴があがった。耳を押さえるリディーネはその場にしゃがみ込んでしまった。


 「仲間だったのに・・・・えっ!」


 気配を感じたリディーネが顔をあげると肩から焼けるような熱っぽさを感じた。リディーネの肩にはウェパルの鋭い水の刃が突き刺さっていた。悲鳴をあげたリディーネの身体を持ち上げるウェパルの表情は快楽に歪んでいた。七十二布武の中でも高い知性を誇っていたウェパルは涎を垂らし眼の下に膿のようなものがこびりついている。リディーネは水の刃を抜こうとするがかえしのついた刃はなかなか引抜けない。ウェパルは右腕を水の刃に変えるとリディーネの左肩に突き刺した。さらに残りの二本の腕も刃に変えると左右の両太ももに刺していく。


 「ぎゃあぁぁぁ~・・・あっ、ああ・・・・いっ、痛い・・・」


 リディーネの叫び声に反応するようにウェパルは身体を小刻みに揺らしていく。ウェパルはリディーネの唇にキスをするとリディーネの表情が一変した。リディーネは口から大量の水を吐き出し、それらはリディーネの顔を取り巻き離れない。球体の水塊はリディーネから空気を奪った。


 (もうダメ・・・アタシ、こんなところで死ぬんだ・・・死にたくない!死にたくないよ!誰か助けて!・・・・・・パパ・・・デュポン・・・。)


 ダランとリディーネの身体から生気がなくなるとウェパルは刃を抜いた。レンガ敷きの床にリディーネの血と水で濡れた身体が横たわっている。ウェパルは液体に姿を変えるとレンガとレンガの隙間から浸透して姿を消した。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「どうやら先まわりされたようだな。」


 修道院から逃げてきたてんと達の前には修道者達が立ち塞がっている。数百名はいるだろうか、それらの修道者の中心には白いクロブークに身を包めた教祖がいる。


 「子供達よ、これは試練である。悪魔の囁きに耳を貸さず、己が信念を貫いた者こそが永遠の愛を得られよう。さあ、行くのだ。神の刃を今こそ振りかざす時!」


 教祖の合図と共に修道者が一斉に迫ってきた。手に木杭を持ち、悪魔を葬る戦いを仕掛けてくる。教祖のまわりに集まっていた修道者が離れていくとそこには魔物の残骸があった。肉を引き千切られた魔物の残骸は骨と一部の内臓しか残されていない。口を血で染めた修道者はさらにてんと達に迫ってくる。天道軍でもない修道者にミカは困惑した。


 「てんと、どうするの?修道者は兵士じゃないよ。」


 「攻撃を仕掛けてくることは確かだ。あの残骸のようになりたくなければ戦うしかないな。」


 緑てんとは緑玉上級理力風撃波を放つと鋭い風の衝撃波が迫ってくる修道者を吹き飛ばしていく。それに合わせるようにリナは雷撃の塊を作ると風の衝撃波内に放っていく。吹き飛ばされた修道者は雷撃を浴びるとパタパタと気絶していった。リナは得意な表情を浮かべるとミカに言った。


 「殺すことだけが戦いじゃないわ。こういう戦術もあるってことね。」


 それを知ったマイコはシステムの変更をキーボードで行った。ロードギアの粒子砲の出力を最大まで下げると銃口を修道者に向けた。ロードギアから放たれた粒子砲は針の太さほどで修道者は電気ショックを受けたようでパタパタと倒れていく。数百いた修道者もそのほとんどが倒れ残るは教祖と数名の修道者のみとなった。教祖を倒すことでこの戦いが終わりをむかえるとてんとは歩み寄っていく。


 「たっ、助けてくれ・・・ワシは利用されていただけだ。」


 「利用?どういうことだ。」


 「ワシは・・・むっ?・・・よみがえり・・ヒッ、ヒヒヒ・・・成功だ。」


 指をさして笑みを浮かべた教祖にてんとは振り返ると修道者達が立ち上がっていた。フラフラと立っていても安定していない修道者達は少し様子がおかしい。修道者は自らの服を破り捨てると地面に四つん這いになった。肌の色が黒くなると鱗が現れ、舌を出した姿はトカゲに近い。


 「成功とはどういうことだ。」


 「機械人形は知っておるだろう。天道で開発された人造兵士だ。しかしワシの発案したアダム計画は修道者に禁断症状の出るホロホロの葉を与え、正常な判断ができない状態で魔物の血肉を喰らわせた。いや、それだけでは足りん。ある種の電気ショックが必要なのだ。」


 「つまり私達が計画を成功させたというわけか。」


 「ヒッ、ヒヒ、その通り。すべてはワシの思惑通りに事が進んだ。さて、話が長くなってしまった。我が計画の結晶であるアダムの洗礼を受けるがいいわ!」


 トカゲと化したアダムは地面を這いながら接近してくるとリナとマイコの電撃が放たれた。俊敏な動きで雷撃をかわすアダム達はミカの桜玉最大理力エラト・アグライアにより攻撃を阻止された。するとアダム達は巨大な桜の葉にまとわりつき口から体液を出してミカの作り出したシールドを溶解していく。ミカの理力が低下すると察した緑てんとは三つの球体を高速に回転させていく。


 「緑玉最大理力 風神!」


 ミカが桜の葉シールドをとくと同時にアダム達は一斉に襲い掛かってくる。緑てんとの 高速に回転する三つの球体から風の衝撃とともに鋭い風刃が放たれるとアダムの身体は切り刻まれていく。地面に体液を撒き散らし、舌をダラリと垂らす姿は・・・。身動きしないアダム達に勝利を確信していた緑てんとは輝きを解除した。しかし教祖の顔からは自信がみなぎっている。


 「甘くみないでもらいらいな。ワシのアダムは機械人形とは違うのだよ。この程度で倒せるわけがないのだよ。」


 教祖の言ったとおり、アダム達は立ち上がると傷口が閉じていく。その回復力にも驚かされたがそれよりも驚愕したことがある。それは・・・。


 「リナ、マイコ!雷撃と粒子砲で牽制してくれ。」


 てんとの指示通りにリナとマイコはアダムに雷撃と粒子砲で攻撃を開始するとてんとはマテリアルフォースを開放した。人型になったてんとはガトリングガンを手にすると給弾・装填・発射・排莢のサイクルを繰り返して連続射撃する。更に緑てんとになると球体を回転させて緑玉最大理力風神を繰り出す。


 「ダメだよ、てんと!動きが早すぎて標準が間に合わない!」


 アダムの驚くべき進化はその反射速度である。先ほどまでは緑てんとの風神を浴びてパタパタと倒れていたアダムが今では当てることも叶わない。緑てんとだけではない。リナの雷撃もロードギアの粒子砲すらアダムには当てられない。攻撃を当てることは出来ないがアダムは違う。鋭い爪で迫ってくるとミカが再び桜玉最大理力エラト・アグライアを繰り出した。巨大な桜の葉がミカ達を覆うとアダムがへばりつく。


 「耐え切れないよ・・・タカちゃん、助けて!」


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