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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
183/253

バトルギア対ロードギア

 「戦闘開始って言ったけど、おじいちゃんは武器とか持ってないの?」


 「おおう、心配してくれるのかい?嬉しいのぉ~。実はのぉ~、ワシにもあるんじゃ。ちょっと待っててくれるかの。」


 ビックボスは小さな小箱を懐から取り出すとそれを床に投げ捨てた。するとその小箱が次第に大きくなって機械仕掛けの人形が現れた。


 「ビックボスと呼ばれてはきたが歳には勝てんもんでの・・・最近はこのバトルギアに乗っておる。具合がよくての、若き日を思い出すのじゃよ。」


 「ふぅ~ん、バトルギアっていうんだ。私のはロードギアって言うんだよ。」


 マイコは乗っていたバイクのスイッチを押すとロードギアに変形していく。ロードギアに乗り込んだマイコはメインスイッチを起動させると同時にビックボスもバトルギアに乗り込み起動させた。


 「デュアル・レイバーユニット起動、バーチャル・ライド・ドライブ・システム起動、フラッシュ・バイド・ドライブブローアップ方式採用・・・ロードギア起動完了」


 「こちらも完了じゃ。いざ、尋常に一本目・・・始め!」


 ビックボスの操縦するバトルギアが動き出すとロードギアも動く。コクピットに覆われ完全に密閉型のロードギアに対してバトルギアはビックボスの身体が見えている開放型だった。一見、バトルギアのほうが不利にも見えるがそれは間違っていた。バトルギアの素早い動きはハンターのそれよりも早かった。マイコの操縦するロードギアはバトルギアのスピードに完全に翻弄されていた。ロードギアは粒子ガンを放つがそれが当たることはない。マイコはキーボードにデータを打ち込んで細かく修正するがそれでもバトルギアのスピードには追いつかない。それどころか逆にバトルギアの接近を許したマイコのロードギアはハンマーのような大きな腕で殴られた。


 「わあぁ~・・・フラッシュ・バイド・ドライブ80パーセントに低下した?なんてパワーなの!補助システム作動、ドライブを補強して!」


 たったの一発でロードギアの性能を低下させたバトルギアにマイコは防戦一方に陥っている。システムの変更をすることにより致命傷は避けているがロードギアよりも確実にバトルギアの性能は上だった。

その頃、穴に落ちたタカヒトとミカはクッション性のあるなにかに座っていた。


 「真っ暗でなにも見えないね。穴に落ちたけど怪我とかしなかったし・・・。なんかブヨブヨしてるね、これ。」


 「そうだね・・・ねぇ、タカちゃん・・・真っ暗で見えないからって・・・耳元に息かけるの・・・やめて・・・。」


 「えっ?・・・僕、何もしてないよ。」


 「だって・・・今だって・・・息吹きかけてるよ。」


 「してないよ!赤玉の力でここに明かりを灯そうか?」


 赤タカヒトは小さな炎玉を造り出す。激しく燃え盛ると真っ暗だったフロアが思った以上に広かったことがわかった。そして・・・


 「きゃあぁぁぁ~、なにこれ!」


 ミカが赤タカヒトにしがみつく。赤タカヒトが見た先には巨大なムカデが這いずり回っていた。いや、ムカデだけではない。ダンゴ虫やナメクジの姿をしているがあまりにも巨大すぎる生物が周囲を移動していた。


 「なんだ、こいつらは!かぁ~、気持ちが悪いぜ!」


 赤タカヒトも後ずさりした。攻撃してくる様子はないが、地面が見えなくなるほどの昆虫類は気持ちが悪い。重なり合うようにして移動している昆虫類をジッと見つけていると急に赤タカヒト達の身体に振動が襲ってきた。ブヨブヨしていたクッションは巨大なダンゴ虫であった。


 「とにかく、ここから逃げるぞ。」


 赤タカヒトはミカを抱きかかえると巨大なダンゴ虫から飛び降りた。赤タカヒトは安全な場所を探しているがどこを見ても虫しかいない。


 「くそったれ!久しぶりに登場したのによぉ~。

  なんだ、あの赤い奴は!気味が悪いぜ。」


 赤タカヒトの視線の先には真っ赤なムカデがいたが赤タカヒトの身近なところにも真っ赤な顔をしたミカがいた。突然、抱きかかえられたミカは赤面して言葉を失っていた。もちろん、赤タカヒトはまったく気づいてはおらず、安全な場所を探している。赤タカヒトとはいえ、タカヒトの真剣な眼差しを身近で見つめるミカは少しウットリしていた。


 「やべえな・・・おい、桜玉でシールドを作れ!」


 「えっ・・・あっ、はい。」


 抱きかかえていた赤タカヒトはミカをおろすと赤面した顔を悟られないように深呼吸すると桜色の輝きを放ち始めた。


 「桜玉中級理力 レインボーウォール」


 桜色の球体シールドを作り出すと赤タカヒトとミカはその中で状況を分析していく。レインボーウォールを覆うように虫達は移動しているがなにか危害を加えるといった行動は起こしてはいない。レインボーウォールから赤タカヒトが出るが危害は加えられなかった。


 「おい、大丈夫みたいだぜ。慣れてくるとこいつらも可愛いもんだな。」


 赤タカヒトのまわりに虫達が集まってきた。ミカは嫌がったが赤タカヒトはすっかり慣れたようで近くに寄ってきたムカデの頭を撫でていた。ムカデは赤タカヒトに甘えるように甘噛みしていく。笑顔の赤タカヒトはムカデに頭を完全に噛まれていく。


 「てめぇ~、俺は餌じゃねえんだよ!バラバラにすんぞ、オラ!」


 たんこぶをたくさん作ったムカデは頭を下げて赤タカヒトに詫びた。さらに赤タカヒトが暴れること数時間・・・


 「ちょっと・・・かわいそう。」


 「うるせぇ!ちょっと下手にでりゃあ、調子に乗りやがって・・・誰が主かコイツらに教えてやったんだ。」


 レインボーウォールはすでに解除されて、ミカのまわりには赤タカヒトに怯える虫達が集まっていた。すでにここでは赤タカヒトの支配下にすべての虫達がついていた。赤タカヒトはここに帝国を築く?と意気込んでいる。タメ息をつくミカを知ってか知らずか赤タカヒトの独裁政権?は続いていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「きゃあぁぁ~・・・くっ、ダメだ。ロードギアのスペックを越えている。勝ち目がない。どうしょう・・・とりあえず、体勢を立て直さなきゃね。」


 バトルギアの一方的な攻撃にロードギアは壁を壊しほかの部屋に飛ばされていた。ロードギアを立て直すとマイコは本部の構造図をハッキングにより手に入れた。


 「まずは・・・バトルギアに対抗する力を手に入れないとね。タカヒト達は穴に落ちちゃったし、リナ達もどこにいるか、わからないとなると・・・。」


 マイコは捕まっているであろうリディーネの捜索を始めた。検索した結果、リディーネが捕まっている可能性の高い部屋が数箇所見つかった。さっそく捜索に移ろうとした瞬間、バトルギアが視界に映った。ロードギアは煙幕を焚くとその場から姿を消した。


 「どこに行きおったか・・・まあ、いい。狩りの時間は始まったばかり。ゆっくりと楽しむとしょうかの。」


 バトルギアに乗ったビックボスは宝物を捜すようにワクワクしながら獲物を捜していく。マイコは部屋という部屋を捜索していくが、リディーネは見つからない。


 「どこにいるんだろう・・・あっ、それより私、リディーネって子知らなかった。でもミカの友達なんだし怪物ってことはないよね。」


 狭い廊下でロードギアを走らせていると右側面から接近者ありとのセンサーが鳴り響いた。その瞬間、廊下の壁が破壊されるとバトルギアがロードギアに体当たりしてきた。その衝撃にロードギアは反対の壁に激突した。


 「わあぁぁ~・・・・てっ、てて・・・ここは・・・?」


 廊下の壁を破壊して入ったところはドアのない部屋だった。そしてそこにはひとりの少女が両手を頭上で縛られていた。マイコは即座にリディーネであると判断するとロードギアから飛び降りて近づいた。何度も声をかけたが気絶しているらしくリディーネからは反応はなかった。


 「リディーネの救出に来たのじゃな。だが渡すわけにはいかんな。そやつにはまだ、聞き出さねばならんことがあるのじゃよ。」


 「へえ~、リディーネってこの子だったんだ。知らなかった。でも知ったからには助けないとね!」


 再びロードギアのコクピットに乗り込むとマイコは猛スピードでキーボードを打ち込んだ。バトルギアの反応速度や姿形から予測できる攻撃パターン。唯一、勝機があるとすれば、それはビックボスがマイコに油断している点である。ロードギアは粒子ガンを両手に持つとバトルギアに撃ち続けた。それらを素早く回避しながら接近してくるバトルギアに対して、一定の距離を保ちつつ撃ち続けていく。さらに煙幕弾を撃ちこむと部屋中に煙が立ち込めた。マイコは機械が動く微妙な振動を感知する振動スコープセンサーに切り替えるとモニターにバトルギアが映っていた。


 「ほっ、ほほほ、目くらましとはまた原始的なことを。

  そろそろネタがつきたかの。」


 「ジジイに原始的って言われたくないわね。あたしはね、ハンター族なの。あたしより強いかもって存在は許せないわ。消してあげる。」


 「こわいのぉ~、最近の若者は・・・消されるのはまだ早いぞい。」


 バトルギアは四方八方に粒子砲を放つと部屋中を破壊していく。煙幕を無視した攻撃にロードギアは回避行動で精一杯だった。だが、勝機はそんな中にも存在する。マイコはロードギアの可能性を信じている。ロードギアはマイコの反応速度にも対応できるだけのスペックを持っている。そんなロードギアであるが最近のマイコはさらに反応速度を上げており、それについてこれないロードギアに不満も持っていたことはある。


 「ハンターの力・・・なめないでよね!」


マイコが印を唱えるとロードギアの機体の隅々まで枝や根が覆い細胞のように広がる。これにより電子信号から細胞信号へと変換されていく。マイコの反射速度についていくロードギアに進化した瞬間だ。それまでバトルギアの粒子砲を受け続け、機能低下を起していたロードギアであるが、進化したロードギアは違う。それらすべてを回避していくと煙が立ち込めて視界の悪い環境の中、マイコの目指す場所はただひとつ。だが、その前にバトルギアが立ち塞がった。


 「ほっ、ほほほ・・・リディーネが気になるかの?行動が丸見えじゃわい。」


 「・・・・違うわよ。殺すの!」


 粒子砲が放たれるとリディーネの拘束された鎖は撃ちぬかれ、次に放たれた粒子砲に居リディーネは撃ちぬかれた。その場に倒れこむとピクリとも動かなくなった。


 「これは誤算じゃ・・・まさか、殺すとはの・・・。」


 「だって、邪魔でしょ?それに言ったよね?あたしより強いかもしれない存在は許せないって!その邪魔をする存在は消すしかないでしょ。」


 マイコの言葉にビックボスは戦慄を覚えた。百戦錬磨のビックボスであるがこれほどまでの戦慄を感じたことはあまり経験がない。


 「恐ろしい子じゃのぉ~・・・久しぶりに背中に冷たいものが流れておるわい。」


 ロードギアから再び粒子砲が放たれるがバトルギアは簡単にかわしていくと距離を取っていく。マイコから放たれた殺気に万が一を考えたビックボスがとった回避行動だ。その瞬間、ハンター族の鋭い眼光がバトルギアに向けられた。


 「ほっ・・・万が一に備えただけじゃぞ・・・・」


 「素直になれば?恐かったんでしょ?

  だから、リディーネのことなんか忘れてたのよね?」


 「おう?・・・リディーネじゃと?」


 煙が消えていくとビックボスの視線の先にはロードギアとリディーネの姿が映った。マイコの操縦するロードギアから放たれた粒子砲はリディーネの腕を拘束していた鎖は撃ち抜いたが次に放たれた粒子砲は圧縮力を最小限まで下げていたのだ。これにより、リディーネは意識を取り戻すほどの痛みしか受けてはいなかった。


 「どういうことか、わからないけど・・・

  ビックボスと戦っているってことは味方よね?」


 「はじめましてよね?私はマイコ。ミカの友達よ。」


 「ミカの友達・・・久しぶりだわ、その名を聞くのは。とりあえず、ビックボスを殺しておかない?」


 「いいアイディアね。私も今、そう思っていたところよ。」


 すっかり意気投合したマイコとリディーネではあるが、動揺した様子もなくビックボスは冷静さを失ってはいない。


 「ほっ、ほほほ。リディーネを救出したようじゃが役には立たんぞい。この部屋は共鳴亀裂を人工的に作り出しておる。ソウルオブカラーを使えないリディーネは小娘にすぎん。」


 「共鳴亀裂を人工的に作ってるって・・・これのこと?」


 ロードギアの手には球体の水晶が握られていた。それを粉々に砕くとリディーネは笑みを浮かべる。紅い輝きが増すとリディーネから巨大な火炎玉が放たれた。火炎玉を受け止めたバトルギアはその高熱により両腕が溶け始めてくる。バトルギアは火炎玉の勢いを止めるとそれを跳ね返した。再び戻ってきた火炎玉をリディーネは片手で受け止めると人差し指でクルクルと回転させていた。


 「バトルギアの耐熱性を上回るとはの・・・恐ろしい火炎じゃ。」


 「火炎玉に気を取られている場合じゃないわよ。ほら、危ない。」


 ビックボスがリディーネの言葉の意味に気づいた瞬間、ロードギアは手にした超振動ヒートブレードでバトルギアの両腕を斬りおとした。絶対強度を誇ったバトルギアであるが、リディーネの火炎によりそれは失っていた。


 「うぬ!高熱でセンサーが破損しおったか!」


両腕を落としたバトルギアはロードギアから距離を取るが、すでに頭上には恐ろしく巨大な火炎輪が迫っていた。


 「紅玉最大闘気 獄熱地獄」


 火炎輪はバトルギアを包み込むと小さくなり縛り付けていく。身動きのとれないバトルギアは高熱にさらされ、ビックボスに被害が及んでいく。


 「高熱に対するダメージが大きすぎるわい。むっ、伝達システムにも異常が見られる。もはやこれまでか!」


 バトルギアから脱出したビックボスはよろけながらも着地に成功した。するとバトルギアが激しく燃え、ドロドロに溶けていった。九死に一生を得たビックボスであるがまだ、危機から回避できたわけではない。目前にはリディーネとマイコの操縦するロードギアが立っていた。


「リディーネって言ったわね?今度私の部下にしてあげるよ。」


「フン、アンタこそやるわね。今度私の僕にしてあげるわ!」


同時に言ったマイコとリディーネは顔を見合わせるとニヤリと笑った。そして最後の仕上げをする為にふたりはビックボスを睨みつけた。ふたりと目があったビックボスはすでに敗北を認めている。


「さすがに手に負えんわい。バトルギアを失ったワシに勝てる要素はないの。ここはひとまず撤退をさせてもらう。」


 突然、放たれた閃光にロードギアのモニターはダウンして、リディーネは視力を失った。再び彼女達の視界が回復した時にはビックボスの姿はなかった。


 「逃げられたか・・・仕方ないわね。とりあえず皆のところに行きましょ。」


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