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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
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リミット・エボリューション

 真っ暗な世界が消えるとてんとの視線の先にはルルドの右脚が迫ってきた。かわすことなどできず直撃を覚悟したてんとであったがそれが当たることはなかった。驚いたのはルルドよりてんとであった。すかさず立ち上がるとルルドから距離を取った。ルルドから受けた傷はなく、痛みもまったくない。ルルドを警戒しながら身構えているが攻撃を仕掛けてくる様子がなかった。ルルドの表情がいままで見た事もない顔をしていた。てんとが警戒しているとルルドは攻撃を仕掛けてきた。右脚のアイアンシュートから繰り広げられる鋭い刃群はてんとに襲い掛かってくる。回避できずに直撃を受けたてんとであったがダメージはまるでなかった。


 「これは・・・どういうことだ。」


 (驚くことないよ、てんちゃん。これがみどりちゃんの力なんだから)(緑玉)


 「そうか、私達の反撃の番が来たということだな。」


 いつもとは違い、緑色に染まったてんとは大鷲の薙刀を構えた。刃先を地面スレスレにすると目の前にいたルルドの姿が薄れて消えた。緑てんとは球体をルルドの気配がする方向に移動させると風撃波を放つ。風撃波がルルドに当たることはなく、すでに緑てんとの真横にいたルルドがアイアンシュートを放つがてんとには当たらない。


 「どういうわけかしら・・・もしや、リミット・エボリューション?」


 距離を取り、戦況を分析するルルドの考えは間違いではなかった。そう、この時てんとの緑玉は極限理力風化連撃を発動させていた。つまり極限進化である。緑玉の能力を極限まで高めることにより緑てんとの身体は風と化した。


 「直接攻撃を受けない・・・というわけね。でも、てんとちゃんも私に攻撃を与えることが出来ない。痛み分けかしらね?」


 「それは違う。直接攻撃を受けないのは私であり、ルルドが直接攻撃を受けないことはない。そうだろ?」


 「・・・・」


 「すでに私の段取りは済んでいる。」


 緑てんとの言葉にルルドは周囲の変化に気づいた。さきほど緑てんとが放った球体がどこにぶつかるわけもなく、跳ね返りながら飛び回っていた。しかもそれは少しずつではあるが速度が増していた。


 「ルルドの弱点をひとつだけ言おう。お前に仲間がいないことが敗北の要因だ!」


 三つの球体は速度を加速させながらルルドの気配のする場所を跳ね返りながら攻撃を続ける。しかしルルドに激突することもなく緑てんとはその場に留まっていた。大鷲の薙刀の刃先を再び地面スレスレにおく。


 「そこか!」


 緑てんとが大鷲の薙刀を振り上げると何もないところに突き刺した。緑てんとにはたしかに手応えがあった。大鷲の薙刀の刃先に薄っすらと血が滴っていくとその先にルルドがいた。大鷲の薙刀の刃先を掴むとルルドは身体からそれを突き放した。よろけながらも後退するとルルドは地面に片膝をついた。口に手をあてると大量の血を吐き出した。


 「・・・気配は映していたはず。」


 「すべてを覆い隠す者とはやはりそういうことか。」


 「さすがだったわ。極限まで進化した緑玉には勝てなかったのね。」


 「いや、緑玉だけではない。虚見実裏 極実活世、ジェイドの言葉が私を救った。」


 草木に囲まれていたこの場所は次第に薄れていくとゴツゴツした岩の大地に闇が支配する空が広がっていた。黒い空にはカラスが、大地には多くの蛇がいた。もとの姿に戻ったてんとのもとにすぐ傍にいたジェイドが歩み寄ってきた。


 「ちょっと、そこに寝かせてくれる?立っているの辛いから。」


 ゴツゴツした岩だらけの地面でわりと平らな場所にジェイドはルルドを寝かせた。口から吐いた血は衣服を真っ赤に染めていた。


 「偽りの中にある真実を見よとはね・・・・徳寿さんがよく言っていたわ。」


 「徳寿様の言葉が、そのことを知らせてくれたジェイドのおかげで勝ちを拾った。でなければ・・・・。」


 ルルドの持つ茜玉の能力はパラレルワールド(鏡の世界)により自らの姿を消し去るものだった。鏡により姿を消し、気配を鏡に反射させて別の位置に気配のみを置く。てんとが攻撃し続けたのは鏡により映された気配だけであった。


 「気配のする方向に意識を向け、私が見えない位置から、しかももっとも死角となる位置から攻撃する。それを悟るのに相当苦労した。」


 「フフ・・・ゴホッ!・・・それでも極限理力は得られたでしょ。」


 「どういうことだ?私の能力を高める為にこんなことをしたとでも言う気か?」


 「もう、多くは語れないわ。最後にこれだけは憶えておいて・・・ピサロには四神は通用しないわ。ピサロも進化している。」


 「進化!創造神をも手に入れてさらに進化しているのか!」


 「そうね・・・必要なのは・・・四・・・神・・・あなた達なら出来るはず・・・兄弟なんですもの・・・天道でもない・・・地獄の者でもない・・・あなた達なら・・・・」


 「教えてくれ!なんなんだ!ルルド!」


 叫ぶようにルルドに問い掛けたジェイド。だが、すでにルルドに息はなかった。四天王ルルドがこうも簡単に死んでしまうとはてんと自身想定してはいなかった。天道に近づけば、ルルドとの対決は避けられないと覚悟は決めていたが・・・。


 「てんと、この先に扉があった。どうやらルルドが戻る手段を残しておいてくれたようだ・・・どうした?」


 「私は間違っていたのかもしれない。

  倒すべき相手はピサロ。己の遺恨など・・・。」


 「俺への恨みを忘れることなどできまい。それでもいいんだ。ただ、いつの日か・・・いや、なんでもない。皆のところに戻ろう・・・・まだ、何かあるのか?」


 「ルルドには多くを教えられ、世話にもなってきた。ここに置いていけばカラスや蛇の餌となる。それが忍びない。」


 てんとの言葉を聞いたジェイドから蒼色の輝きが放たれると岩の大地が急激に凍り、岩が隆起してくるとその下から土が現れた。ジェイドはマテリアルフォースを開放するとルルドの身体は宙に浮きながら移動した。土の見える位置に運ばれたルルドの身体は土の中に沈んだ。


 「死んだ者は土にかえり、いずれまた生まれ変わるだろう。」


 ルルドの身体は土がかぶさり、隆起していた岩も元の位置に戻った。ルルドの身体は蛇やカラスの餌になることもなく、生まれ変わると信じたふたりは扉へと歩を進めた。その頃、ドレイクとリナはアリシア相手に有利な立場に立っていた。


 「おのれぇ~・・・・この私が下等な者達に。」


 「お前は愛の力に負けたのさ。俺とリナの愛の力にな!」


 「こんなところで死ぬわけにはいかないわ。」


 アリシアは高音の雄叫びをあげるとマスティアが集団で集まってきた。マスティアの総攻撃に一気に防戦状態に陥ったドレイクとリナは劣勢を強いられていた。


 「くそったれ!調子に乗りやがって!茶玉極限闘気  クル・ヌ・ギアス!」


 茶色の透明な液体のようなものが浮き上がってくるとマスティアを包み込んだ。液体に包まれたマスティアの身体は乾燥して粉と化していく。そしてそこにアリシアの姿はなかった。


 「逃げやがったか。リナ、奴を追うぞ!」


 ドレイクとリナは逃げたアリシアを追ったが姿を確認することはできなかった。そして今、タカヒトとミカ、マイコはビックボスを追い詰めていた。


 「観念しなさい!もう逃げ場はないわよ!」


 「リディーネを渡してもらうわよ!」


 マイコとミカの強気な言葉にも王座に座ったビックボスからは動揺した様子は伺えなかった。そのふてぶてしい態度にマイコとミカは一瞬、攻撃を躊躇った。さすがはビックボスの名を持つ者である。マテリアルフォースとソウルオブカラーの所有者二名にロードギアを操るマイコを前にして全く動じない。ゆっくりと身体を動かすとビックボスは口を開いた。


 「ただの老人だと思っておるのなら怪我をするぞい。」


 ビックボスは立ち上がると手招きをする。自信満々のビックボスを警戒してか、タカヒトもミカもゆっくりと距離を詰めていく。ビックボスとの距離が詰まってくると「パチンッ」と指を鳴らした。


 「きゃあぁぁぁ~~~~」


 床が抜けた瞬間、タカヒト達は底が見えない穴へと落ちた。


 「まったく、年寄りだと油断するからじゃぞ。

  お嬢ちゃんだけは違ったようじゃな。」


 「この手の対策っていつでも出来てるのよね。

  アンタみたいなジジイを見てきたからね。」


 床が元に戻ると天井に吊るさっていたマイコが床におりた。床が抜けた瞬間、マイコだけが天井に向かってジャンプすると落とし穴の罠を回避していた。


 「それよりタカヒト達は大丈夫なんでしょうね?」


 「無論じゃとも。穴の底にはクッションが用意してある。怪我のひとつもないじゃろうな。悪戯は好きじゃが、悪意はないのが粋なのじゃな。」


 「ふぅ~ん・・・そういうとこまで似てるんだ。なんかやりにくいね。」


 「その老体はお嬢ちゃんの大切な人らしいの。」


 「そうね、大切だったよ。」


 「羨ましいのぉ~。そこまで想われるとのぉ~。」


 「はいはい、いいから、いいから、早く闘おうよ。」


 マイコはビックボスを王座から引きずりおろすと手を組んで歩き出した。ニコニコしながらビックボスに笑顔を見せると右腕を振り上げて、渾身の右フックをビックボスの頬に浴びせた。子供とはいえ、マイコはハンター族である。ビックボスの身体はフワリを浮き上がると王座へと吹っ飛んだ。


 「さてと・・・戦闘開始にしましょうかね、おじいちゃん!」


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