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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
180/253

ジェイドの水妃

 「気配は薄々感じてはいたが・・・。」


 「休戦しないか?」


 「休戦だと?ふざけるな!」


 「別にふざけてはいない。俺もビックボスに話があるが戦力に差がありすぎる。ここは共に協力して乗り切ったほうが賢明だと思う。もちろん貴様ともだ、ドレイク。」


 「俺は別にいいぜ。遺恨はあるかもしれんがジェイドの戦闘力は俺達に有利だ。だが裏切りは許さん。同じ四神ではあるが二対一では分が悪いだろ?」


 「これが本部の見取り図だ。手に入れるのにかなり苦労したがじきに報われる。」


 ジェイドが準備に取り掛かる姿をマイコはマジマジと見つめていた。


 「ハンター族を代表して戦いを挑んでくるつもりか?」


 「ちがうわ。まさか鬼王と一緒に闘うなんて夢にも思わなかったからね。」


 「フッ、鬼王とはお前達が名づけたもの。」


 「まあ、そうだけどね。私的には恨みとかないよ。ハンター族も多くの命を奪ってきたからね。鬼王・・・ジェイドだけを責める気はないわ。」


 マイコはそう言い残すとロードギアのメンテナンスに向かった。ジェイドは氷のテーブルとイスを用意するとその上に見取り図を置いた。絶対零度を保っているテーブルに見取り図が濡れることもなく、ただイスだけはやっぱり冷たかった。ちょっと冷たさを我慢しながらタカヒトは見取り図を見つめた。ジェイドが広げた見取り図には本部内の詳細な位置が細かく書かれていた。そして天道兵器シュレイオンについて書かれている書物を持っていた。


 「天道兵器シュレイオンにも致命的な欠陥があるのか・・・・たしかにこれは極秘文書だ。手に入れるのには相当苦労したんだろうな。」


 「持っている情報はこれで全部だ。戦術はどのように行うつもりだ?」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「白タカヒト、厳しい戦いだが頼むぞ。」


 「大丈夫さ。主格の僕とタカヒトの協力があれば誰もついてこれないよ。」


 (クソッ、なんで白玉なんだ!)(赤玉)


 (まあ、奴が一番適任者だろう。しかしあまり無茶をするなよ)(紫玉)


 「うん、任せておいて!いくよ、タカヒト。」


 白タカヒトは高台を一気に降下すると天道兵器シュレイオンが見える位置に辿り着いた。白タカヒトからは天道本部が見えるが天道本部からは白タカヒトが見えない位置にいる。白タカヒトが指定した位置に辿り着いたことを確認したてんとは絨毯にミカとマイコそれにジェイドを乗せた。


 「それでは作戦を実行する。ドレイク、リナ、頼んだぞ!」


 「ああ、任せておきな。行くぜ、リナ!」


 茶ドレイクの闘気と牡丹色リナのエレメントが最大まで高められていく。それと同調するかのように大地が揺れ、空は厚い雷雲に覆われていく。大地から巨大な岩石が持ち上がっていくとそれは上空に浮かぶ雷雲の中に吸い込まれていく。雷雲が少しずつ小さくなっていくと激しい雷音を鳴らす稲光を含んだ岩石が天道本部へと落下していく。


 「茶玉牡丹玉最大闘気複合技 大雷怨!」


 異様な光景はすでに天道本部でも察知していた。ビックボスのいる司令室に入ってきたのはアリシアであった。すでにルルドの姿もそこにあった。


 「私が出向いて消し去りましょうか?」


 「いやいや、四天王の力を使わずともよい。ここには天道兵器シュレイオンがある。すでにエネルギーの蓄積も済み、標準も合わせておる。発射の合図を待つだけじゃ。」


 カツカツとブーツ底の音を鳴らしながら標準の合わせられている発射ボタンを押した。天道兵器シュレイオンから激しい光が放たれると上空に一閃の光が走った。それは稲光を含んだ岩石を貫いた。


 「おいおい、あれを一撃で粉砕かよ。恐ろしいもん持ってやがるぜ。」


 稲光を帯びた粉砕岩が雪のように大地に降り注ぐ中、白タカヒトは天道兵器シュレイオンに向かって飛行していく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「てんと、本当にそれで壊せるの?」


 「このシュレイオンという兵器は圧縮したエネルギーを一時柱に溜め込んでから更に圧縮して高濃度エネルギー体として放出するタイプだ。つまりあの柱は強度と柔軟性を兼ね備えた物質で造られている。」


 「う~ん・・・・わかるように説明して。」


 「通常は強固な構造でいかなる攻撃も受け付けないが、放出中はかなりの高温と圧縮膨張といった動きにさらされる。その後、冷却が行われるのだが、それまでの間は物質として最も不安定な状態になる。ほんのひと傷浴びせることが出来れば、内部分裂を起こし崩壊する。」


 「やっぱりよくわからないけど、撃ち終わった後で冷却前の間に斬りつけることができればいいんだね?」


 「まあ、そういうことだ。だが奴らとてその点には十分注意しているはず。私達が注意を引き付けている間にうまく、懐に入り込み一撃を与えるのだ。」


 猛スピードで突っ込んでいくとシュレイオンを眼下に捕らえることが出来た白タカヒトは凶刀羅刹を両手に持ち接近していく。シュレイオンは真っ赤に熱せられ、大きなチューブが張り巡らせてあった。そのチューブに動きかある。


 「あれが冷却チューブか。よし!」


 白タカヒトはシュレイオンに二・三度斬り付けると同時に冷却チューブをも斬裂くと冷却ガスを垂れ流しながらチューブの先端がクネクネと宙を舞っている。白タカヒトに斬りつけられた箇所からシュレイオンの内部の金属が液体のように流れて出てくると悲鳴のような声をあげながらシュレイオンは膨張し続け、破裂した。ドロドロになった細胞のような金属が辺りに飛び散っていく。


 「よし、作戦は成功だ。一気に突入するぞ!」


 白タカヒトと途中で合流するとてんと達を乗せた絨毯は内部へと侵入していく。その頃、リディーネに対してアリシアの拷問は続いていた。リディーネの捕らえられている部屋は人工的に共鳴亀裂が起されており、ソウルオブカラーを封じられているリディーネには手も足もでない。


 「うぅ・・・・」


 「うふふ、どうかしら?この道具。気に入ってもらえて?」


アリシアは手にした拷問道具ズグルをリディーネの太ももに押し付けるとスイッチを押した。棒状の拷問道具であるズグルはその先端が急回転すると皮膚をえぐりながら突き刺さっていく。


 「ぎゃあぁぁああぁぁ~~~!」


 リディーネの悲鳴が部屋中に響き渡るとなんともいえない表情をアリシアは浮かべた。スイッチを止めるとリディーネの太ももには拷問道具ズグルの先端が見えなくなるほど食い込んでアリシアはそれを一気に引抜いた。


 「ぎゃあがぁぁぁ・・・・うぅぅぅ・・・・」


 引き千切った血肉が挟まっている拷問道具ズグルを持つ手に血が滴り落ちてくるとアリシアはそれを嬉しそうに舐めながら味わっている。アリシアは気を失いかけているリディーネの顎を掴むと耳元で囁いた。


 「いいわ・・・その表情・・・声もかすれて・・・感じちゃうじゃない。」


 「・・・殺せ・・・・屈辱を味わうくらいなら死んでやる!」


 自ら舌を噛み切り、死を望んだリディーネだがアリシアの動きのほうが早かった。アリシアは指をパチンと鳴らすとリディーネの口がまったく動かなくなる。硬直したリディーネの口に強引に布を押し込めると自害すら奪った。丁度その時、拷問部屋にビックボスが入ってきた。


 「お楽しみ中に申し訳ないがどうやら侵入者を確認した。

  地獄軍かあるいは・・・。」


 「誰でもいいわ。この高まる感情を沈めてくれるなら・・・」


 拷問道具ズグルをリディーネの腹部に押し付けるとスイッチを押した。


 「ふっ、ぶぶぶぶ、ばばばば!」


 リディーネの衣服は引き千切られるように破れると血が噴出した。目を見開き、小刻みに震えだすとアリシアはスイッチを止めた。一気にしかも強引にそれを引抜くと拷問道具ズグルを机に置いた。蒼ざめた表情のリディーネは頭をガクッと落とすと意識を失う。なんともいえない表情のアリシアは気絶したリディーネを放置してその部屋を出ていった。


 「恐ろしいほど無反応だな・・・それとも罠でも張ってあるか。いずれにしても警戒しなければならんな。」


 地上に降り立つと大理石の床が異常なほど冷たく感じられた。そして驚くことに兵士の影らしきものも見えなかった。言葉を発したドレイクの声が辺りに響き渡るほど静けさを保っていた。すると遠くのほうからカツンカツンとブーツ音が鳴り響いてきた。その音は次第に大きくなり姿を見せた者は白い軍服に身を包んだ老人であった。するとそれまで黙っていたジェイドが口を開いた。


 「ビックボス、やっと会えたな。」


 「ジェイドに・・・面識のない者達がおるようじゃ。

  先に自己紹介をさせてくれまいか?」


 「・・・・・」


 「ワシはビックボス。天道政府最高高官長であり、この本部を指揮する者である。うむ・・・緑玉のてんと、牡丹玉のリナ、桜玉のミカ、それにロードギアを操るハンター族のマイコ。可愛らしい者達じゃ。そして玄武を操るドレイクに朱雀のタカヒトか。いやいや、これだけのメンバーであれば天道兵器シュレイオンも歯が立つまい。」


 その場にいた誰もが驚愕した。ビックボスに会うのはこれが初めてである。しかしビックボスは数年来の友のようにタカヒト達について知り得ている様子だった。そしてジェイドの口から驚くべき言葉が発せられた。


 「奴は空の中でただひとり思考を読める。

  そして空とは天道において最高権力者の名称だ。」


 「ジェイド、空の存在は知っているがビックボスなどという名はない。」


 「ああ、俺達が知っている空とは別ものだ。

  もやは天道に俺達の味方は存在していない。」


 ジェイドは青色の輝きを放つと目の前に水で出来た人型のものを作りだした。その水人形は両手を挙げるとビックボスを水柱で包み込んだ。苦しみに悶えるビックボスであるが攻撃をやめる気はジェイドにはない。


 「青玉極限理力 水妃。彼女の舞からは逃れられない。」


 包み込む水柱内でビックボスは口を両手でおさえながら悶絶していると鋭い刃が水妃を斬裂いた。ビックボスは大理石の床に両手両膝をついて咳き込んでいた。ジェイドの視線の先には冷たい表情を浮かべたルルドが立っている。


 「まさか攻撃を仕掛けてくるとはの・・・老人に対してなんて奴らじゃ!」


 「老体なのだから無茶しちゃ駄目よ。」


 びしょ濡れになった軍服が重そうに歩いていくビックボスにジェイドは水の矢を放つがそれもルルドの空中を飛ぶ刃に撃ち落された。再びジェイドのほうに振り向くとルルドの隣にはアリシアが立っていた。


 「あら、アリシアさん。どういうつもり?」


 「どうもこうもないわ。あの天道兵器シュレイオンはピサロ様に守るように申し付かったもの。ハープ同様に天道兵器シュレイオンまで破壊されて・・・黙っていられるわけが・・・ねぇだろ、クソったれが!」


 アリシアの身体が菫色に輝くと小さな音符が現れた。それらが四方八方に張り巡らされると音符から鋭い粒子砲が放たれた。機転を利かせたミカは桜玉最大理力エラト・アグライアを放つと巨大な桜の葉が頭上から覆いかぶさり粒子砲を防いでいく。しかしアリシアの攻撃はそれだけではない。アリシアは直接巨大な桜の葉に触れると激しい共鳴音を発してきた。


 「ダメ!エラト・アグライアに同調してくる。このままじゃあ、壊れちゃうよ!」


 「くそっ!あの粒子砲をなんとかしねえと・・・・もうひとりも四天王なんだろう?分散して戦うしかねえな。」


 「ドレイクとリナでアリシアを、私とジェイドでルルドに対応する。タカヒトとミカ、マイコはリディーネの捜索とビックボスに対応してくれ。行くぞ、必ず生き残るのだ!」


 エラト・アグライアが消えると音符の粒子砲が襲い掛かるがそれらはリナの雷撃で撃ち落された。大理石の床に落ちた音符が消えていくとアリシアの眼光が鋭くなった。


 「四天王とはいえ女相手にふたりがかりとは少し卑怯かもしれんな。」


 「フフ、それなら私は観戦でもしているわ。」


 満面の笑顔を見せるリナに笑顔で応えるドレイクの姿を、爪を噛みながら睨みつけるアリシア。


 「イラつくわね。特にアベックの会話はイラつくわ!」


 「嫉妬されてるみたいよ。」


 「別に嫉妬させておけばいいじゃねえか。」


 目の前でイチャつくドレイクとリナにアリシアの怒りは頂点に達しようとしていた。再び音符が現れると粒子砲を放っていく。リナ目掛けて襲い掛かる粒子砲をドレイクの斬神刀で打ち落としていく。


 「どうだい、リナ。俺もまだまだいけるだろ?」


 「そうね、惚れ直したわ。」


 「くそったれが!イチャつきやがって・・・ぶっ殺してやる!」


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