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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
170/253

サーズの誤算

 「よし、いいぞ。そっちの木を斬りおとせ!」


 ドレイクが合図を送るとタカヒトは狂刀羅刹で大樹木の幹に一閃を与えた。斜めに斬られた大樹木は滑るように倒れていく。倒れた大樹木を緑てんとの球体から放たれた鋭い風刃がいくつもの柱を生産して、その柱はサクラリーフ内に収められると雷の衝撃が内部に放たれた。雷撃の熱により瞬時に乾燥した柱をロードギアに乗り込んだマイコが運んでいく。


 「本当に助かります。皆で協力してもここまで復興が進まなかったでしょう。」


 額の汗を拭いながら声をかけてきたのはガディッシュという長老の屋敷で移住に賛成していた若者である。先の戦により部落は壊滅され生活する場所を失ってしまった。肩を落としていた長老達を救った者がガディッシュ達であった。移住を反対された彼は部落の者に内緒で数名の仲間達と移住先を探す旅に出ていた。方々を探しまわった結果、部落から数十里離れた場所にてんとの話していた理想通りの場所が見つかった。その地に数日寝泊り、安全性や川の所在確認調査を行った。すべての調査を終えて安全を確認した彼らは部落へと戻っていくとそこにあったのは壊滅した部落の姿だった。


 「それにしてもあの機械人形達はよく働きます。」


 そう言うとガディッシュは作業に戻っていく。ガディッシュの言う通り機械人形は柱を何本もかかえながら運んでいる。その柱を組み立てながら家の骨格を築いていく。この機械人形を動かしたのはマイコだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「誰も出来ないの?しょうがないわね、私がやってあげる。」


 「えっ、マイコちゃん・・・できるの?」


 「そんなに驚くこと?」


 ロードギアを降りたマイコは工具箱を片手にドレイクから部品を預かった。機能停止している機械人形に部品を器用に取り付けていくとすぐに起動開始していく。動き出した機械人形はマイコに近づく。マイコの言葉にうなずいた機械人形は数体の機能停止している機械人形を運んできた。その都度、マイコは部品を交換しては機械人形を起動させていく。マイコの作業を隣でタカヒトがマジマジと見つめていた。


 「マイコちゃん、凄いね。」


 「ミゲじいに出来て私に出来ないことなんてないのよ。ミゲじいがいない今、ロードギアのメンテナンスは私にしか出来ないでしょ。だから自然と憶えたのよ。あっ、タカヒト、それ取ってくれる?」



 マイコの活躍によりすべての機械人形を起動させると長老達のいる部落へと向かった。しかしそこで見た光景は壊滅した部落であった。長老達を見つけるとガディッシュ達若者が長老らを説得していた。


 「ガディッシュよ・・・気持ちはわかるがわし等が新たな土地に移り開拓するには働き手の数が少なすぎるのじゃ。」


 「長老、その心配は無用だぜ。ホレ、働き手ならいるぞ。」


 長老とガディッシュ達は目を丸くして驚いた。こうして長老達やガディッシュ達、部落の者は移住と開拓を決意した。開拓は順調に進み、すべての屋敷が完成した。てんとの考えで部落の防衛と食糧の生産にも皆で知恵を出し合い、行動する。てんとはロードギアに乗るマイコと共に開拓地周辺の調査を行った。新たなる開拓地は天道の太陽である天光の恵みを受け、背面は山脈で覆われている。高くそびえ立つ山脈には生物は存在していなかったがあまりに大きすぎるためにすべての調査をすることはできなかった。開拓地前方は森林海に覆われ、小動物が飛びまわっていた。


 「今日の調査はこれくらいにしょう。」


 ロードギアとてんとは新たに築いた部落へ戻った。夕食を終えたタカヒトらは屋敷の一室に集まると情報交換を行う。てんとは山脈や森林海を上空より調査したが情報らしいものは得られなかったと伝えた。タカヒトとミカは部落の警備に当たり、異常は無いと報告した。最後にドレイクとリナは天道本部に再度調査に向かったのだが・・・・。


 「実はな・・・この前、発見できなかったんだが・・・。」


 ドレイクは本部から持ち去った構造図が書かれた図面を広げた。そしてドレイクが指差した位置は管理者室だった。以前、管理者室内を調査した時とはまったく違う不自然な現象を発見したらしい。


 「本棚の位置が少しズレていたんだ。壁の色あせ方が少し違っていたからすぐ気づいたぜ。」


 「さすがね。私の変化には気づかないのに・・・」


 「・・・・リナ、怒ってるけど、なにかあったの?」


 小声でミカがドレイクに語りかけた。実は髪型を変えたリナにまったく気づかずに調査にのめり込んでいたらしい。


 「それはドレイクが悪いよね。それで謝ったの?」


 「駄目だ・・・謝っても、褒めても許してくれないんだ。俺はどうすればいい?」


 「どうって・・・」


 「私に任せて!」


 ドレイクとミカの話を聞いていたマイコが声をかけてきた。ドレイクは少し考え込むとマイコにすべてを託すことにした。小声で話しをしているとてんとが声をかけてきた。


 「ドレイク、変わったところはそれだけか?」


 「おっ・・・・いや、違うぜ。」


 ドレイクは話を進めた。本棚の位置が気になったドレイクは奥から異質な空気感を感じ取ると本棚をグッと押し退けた。するとそこには白一色の空間が広がっていたらしい。


 「以前は発見できなかった・・・

  つまりサーズはあの時、まだ本部にいた可能性がある?」


 「だな!奴は俺達から身を隠していた。俺達がいなくなってからあの空間に逃げて行ったんだろうな。だが、あの先には何があるってんだ。」


 「わからなければ行くしかあるまい。」


 「てんとの意見はわかった。タカヒトはどうだ?」


 「えっ・・・僕は・・・・・」


 「私もタカちゃんもてんとと同じ意見だよ。」


 「そうか・・・マイコは?」


 「私も断る理由はないよ。」


 「よし、俺とリナで再度、調査に当たろう。復興も軌道に乗った。俺達も先へ進む頃合かもしれんな。行こう、新たなる地へ!」


 こうして彼らは新たなる地への旅立ちを決意した。一方、ドレイク達の目指す空間にはすでに管理者サーズが歩いていた。何もない白一色の世界・・・建物も白く冷たく硬いイメージがあるが実際に歩いてみるとフニャフニャした踏み心地である。重力無視した建物は上から横から斜めからと立ち並んでいた。今歩いている建物から隣の建物に移動すると重力が変化していく。


 「まったく、どういう仕掛けになっている。ピサロ様に与えられた避難通路ではあるが・・・白一色とは不気味なものだ。」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「わかったわ。それじゃあ、避難通路を通ってフォースブロックに行ってくださる。フォースの管理者に伝えておくから安心してちょうだい。」


 「ありがとうございます・・・ピサロ様・・・作戦に失敗した私への処分は・・・」


 「あら、そんな事気にしてたの?あなたはこれまで多くの実績を残してきたわ。さすがにすぐに戦略省の参謀や大臣ってわけにもいかないけど約束は守るわよ。」


 「ありがたきお言葉、身に余る光栄です。フォースブロックへ行ってもピサロ様への忠義を忘れずに懸命に働きたいと考えております!」


 「あなたの気持ちは理解したわ。

  早く逃げなさい。私も大切な人材を失いたくないわ。」


 ピサロとの交信を終えた管理者サーズはドレイク達に見つからないように自室へと戻った。机の下にあるスイッチを押すと本棚がゆっくりとスライドしていく。そこに見えたのは真っ暗で先の見えない階段だった。恐る恐る管理者サーズは階段を降りていく。万が一の為に造られた逃げ道が役に立つとは思わなかったがそれは管理者サーズの想像とはかなり違っていた。歩けど歩けど一向に出口が見えない。しかも建物がそびえたっているわりにはそこに暮らす者が見つからない。白一色の建物が迫ってくるように見え、サーズの精神は次第にうつ状態に陥っていく。


 「・・・・あれは・・・・誰かいるのか!

  ・・・・おおぉ~~い・・・待ってくれ!」


 出口も見つからず、途方に暮れていたサーズの視界にひとつの影が映った。この白一色の世界に自分以外の生存者がいることに希望を見出したサーズは急いでその影を追っていく。


 「ハアハアハア・・・・まっ、待ってくれ・・・ここに生存者がいたとは!・・・なっ、何だ、これは・・・・待て・・・たっ、助けて・・・うわぁあああ・・・ギョボ・・・ガビッ!」


 静かな白一色の世界に管理者サーズの悲鳴が響いたがそれに気づいた者は誰一人としていなかった。ただ白一色の世界の一部に赤い染料が広がっていた・・・・。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「もう行ってしまうのか・・・・寂しくなるの。」


 「いろいろ世話になったな、長老。」


 「世話になったのは我々のほうじゃ。本当にありがとう。」


 ドレイク達の出発する日となった。管理者サーズの跡を辿るのだが、思った以上に困難な調査となりそうなのでドレイクの提案でこの地を離れることになった。この地には外敵らしき生物がいない事と万が一に備えて部落を包むように丸太で積み上げた壁も完成していた。


 「長老、ひとつ言っておきたいことがある。」


 「・・・・わかっておる。我ら部落のことじゃろ。」


 「そうか・・・ならば言う必要もないな。」


 長老に言ったようにてんとが気になっていたことは組織のことであった。この部落では長老達年長者が話し合いですべてを決断していた。しかし、今回のような緊急時にはその決断が必ずしも良い方向へと導かれるものではなかった。組織として縦のつながりよりも横のつながりを重要視した方が緊急時には良い結果を生む。ガディッシュ達若者が中心となり長老達年長者がアドバイスを与えながら復興を進めていくことこそ理想だとてんとは考えていた。


 「みなさん、ありがとうございます。これからも長老達のアドバイスを受けながら私達が率先して努力していきたいと思ってます。どうかお身体にお気をつけて旅の成功を願っております。」


 ガディッシュ達若者が頭を下げると長老らも部落の者達も頭を下げた。彼らに見送られながらタカヒト達は再び管理者サーズの本部に辿り着いた。以前に来た時と同じように兵士の気配はまったくなく静けさだけが漂っている。


 「あの時は気づかなかったが不穏な空気が漂っているな。」


 「いままでにない殺気だ。涼やかで・・・気配が消えたり、現れたりしている。」


 「何かがいるって事?」


 ミカの言葉にてんともドレイクも何も語ろうとはしなかった。彼らに確信と呼べるものが見つからなかったからだ。気配が消えたり、現れたりする魔物など存在するわけがない。経験のない存在に恐怖感すら沸いてくる。内部に入り、涼やかな気配を警戒しながら進んでいくとその気配はある一室から漂ってきた。


 「ここか・・・・。」


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