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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
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ロードギア

 「大きくなった?・・・そうかなぁ~、普通だけど。」


 マイコは確かに成長していた。餓鬼道の世界で見たマイコはハンター族ではあったがタカヒト達よりも小さな子供だった。今目の前にいるマイコは身長が180cmはある立派なハンターになっていた。ゲイルのような戦闘ハンターとはまた違ったしなやかな身体をしている。てんとの説明によれば六道のすべてが同じ時間の流れをしているわけではなく、この天道に比べ、餓鬼道の時間の流れに差があるらしい。


 「ちょっと、てんと。私達のいた人道とも時間のズレは生じるの?もし戻ったら友達がお爺ちゃんやお婆ちゃんになってるってことないよね?」


 「さすがにそれはない。」


 マイコの成長が早いのは時間のズレもあるがそれ以上にハンター族としての性質が多くを占めている。戦闘民族であるハンターは子供の期間より成人の期間のほうが長いのである。戦闘民族らしい特性といえよう。しかしそれよりもタカヒトには気になることがあった。


 「それにしても凄い機械だね。これってドライブスーツ?」


 「目をキラキラさせてたから聞いてくると思ったわ。凄いでしょ。これはロードギアっていうのよ。最新ドライブスーツの四倍のスペックを誇るわ。」


 得意になって話すマイコはロードギアについて語り始めた。デュアル・レイバーユニットと呼ばれる餓鬼道で最新のコントロールシステムとバーチャル・ライド・ドライブ・システムと呼ばれる独自の動力機関。


 「ほかにもまだあるけど説明するの面倒くさいし、ロードギアの力は今の戦いでわかったよね。」


 「確かにドライブスーツを遥かに越えてはいるが・・・ミーン・ウォーリアをどうやって一掃したかだ?」


 「ああ、あれ?金属ウイルスを直接攻撃する抗金属ウイルスをバラ撒いたのよ。」


 ロードギガのバーチャル・ライド・ドライブ・システムと呼ばれる動力機関は金の印を施したロードギアの金属ウイルスが原動力として働いている。金属内に存在しているウイルスの開発が餓鬼道でかなり進んでいた。つまりロードギアが大破しない限り永久に動き続けることができる。更にロードギアのデュアル・レイバーユニットは金属ウイルスの改良、生産することが出来る。ミーン・ウォーリアにロードギアが攻撃をした際に金属ウイルスの採取に成功した。即座にデュアル・レイバーユニットはウイルスの分析を行い、対抗する金属ウイルスの生産を行った。


 「後はその抗金属ウイルスを噴出しただけ。あっ、でもこれは金属にしか効果がないからタカヒトやてんと達にはまったく影響はないわよ。」


 「凄いね。このロードギアってやっぱりミゲールが造ったの?」


 「うん・・・最後の機体だよ。」


 「えっ、最後?」


 「・・・死んじゃったんだ。」


 マイコは空を見上げると涙が流れるのを我慢しているようにタカヒトには見えた。ミゲールが死んだことはショックだった。今、タカヒトの頭にはミゲールとのいろいろな思い出が蘇ってきた。


 「どうしてミゲールは・・・」


 「タカヒト達がいなくなってから少し経った頃かな。徳寿さんが来たのよ。」


 「とくべえさんが?」


 復興を終え、永久中立国家オメガが創立されてからほどなくしてマイコ達のもとに徳寿がやってきた。建設機械開発兼整備長として数百名の部下を持つミゲールは徳寿の言葉に驚いた。


 「徳寿さん、それは本当ね!だとしたらえらいこっちゃ。」


 「彼らの協力をお願いしたいのじゃが・・・頼まれてくれるかの?」


 「もちろんね。タカヒトやミカには世話になったね。今、ドライブスーツを越える新しいシステムを製作中ね。ただ、こいつを操れるかどうか・・・・。」


 「私がやる!」


 「マイコ!立ち聞きとは行儀が悪いね!」


 「ねえ、じいちゃん。タカヒト達に危険が迫っているって本当?」


 「・・・・嘘を言っても仕方あるまい。」


 「わかった・・・ミゲじい、私が新型に乗るわ。」


 「何言ってるね!

  新型は反応速度が以上に速いね。それだけの身体機能が・・・・!」


 マイコはニヤリと笑った。そう、この頃のマイコはすでに永久中立国家オメガで最新のドライブスーツを乗りこなしていた。しかもそのドライブスーツですらマイコの反応速度にはついていけなかった。ミゲールの頭には新型に搭載するシステムの構想は出来上がっている。そしてシステムを使いこなすことが出来る者は姪のマイコだけである。


 「マイコ、覚悟する必要があるね。大丈夫ね?」


 「大丈夫!」


 「・・・話はまとまったね。開発には三年かかるね。」


 「感謝する。ありがとう。」


 こうしてミゲールは開発に没頭していく。ハンター族は成人の機関は長いが老体となってからの寿命は短い。それは戦士として役に立たなくなった者が足を引っ張らないようにそうなっていったのであろう。


 「すでに寿命を察していたのかもしれない。だから開発を急いでいたんだと思う。」


 新型のドライブスーツが完成した時、ミゲールは眠るように息を引き取ったという。その表情は満足感に満ちた笑顔であったとマイコは言った。


 「ロードギアってのは私がつけたんだ。道を切り開くって意味を込めてね。」


 ロードギアの試運転をマイコが行っていた時、再び徳寿が現れた。徳寿はミゲールの死を哀しみながらもマイコに旅立ちを伝えた。準備の終えたマイコはロードギアに乗り込むと徳寿と共に天道に向かった。


 「その後、徳寿様はどうしたのだ?」


 「じいちゃんはブロックの進み方を教えてくれた。その後は別の用事があるって言って別行動になったのよ。」


 「やっぱりとくべえさんはキングダムシティへ向かったんだね。」


 「・・・・」


 「話はだいたいわかった。

  後は管理者サーズを倒すだけだな。そんじゃあ、行くか!」


 ドレイクは腕輪に触れると無人のモービルウォーカーがこちらに走ってきた。ドレイクは運転席に乗り込むとリナやミカも乗り込んだ。てんとの後をタカヒトが乗り込もうとするとマイコが声をかけてきた。


 「タカヒト、新型に乗りたくない?」


 「えっ、いいの?うん、乗りたい!」


 タカヒトはご機嫌になってロードギアに乗り込んでいく。ドライブスーツと違ってロードギアのコクピットはかなり狭かった。シートはマイコの座るひとつしかなく、タカヒトは狭い隙間に入り込んだがコクピット内の構造にはかなり驚いた。以前乗ったドライブスーツ旧型でレバーが沢山あった。外を見るのは小さな小窓から目視で見る以外なかった。新型にはレバーも小窓もない。マイコの座るシートを囲むように入力装置やメーター機器がある。小窓の代わりにロードギアに搭載されているカメラから常に映像が液晶ディスプレイに表示されている。口を開きっぱなしのタカヒトを気にせずにマイコはロードギアを操縦している。


 「・・・本当はね。私・・・寂しかったんだ・・・ミゲじいがいなくなってから心にポッカリ穴が開いた感じがして・・・タカヒトやミカ、てんと達との思い出だけが私を救ってくれた・・・今、こうして会えたことがすごく嬉しい。」


 後にいたタカヒトからは見えなかったが確かにマイコは泣いていた。ロードギアを操縦しながらも肩を震わせて泣いていた。タカヒトにはマイコにかける言葉が見つからなかった。ただ、黙ってマイコの手を握ることしかできなかった。


 「ねぇ、ミカ。気にならないの?ふたりっきりにして・・・。」


 「えっ?別に気にならないよ。何で?」


 「ハッ、ハハハ、

  リナ、ミカのタカヒトへの想いはそう簡単には崩れないらしいぜ。」


 「本当ね。結婚式も近いわね。」


 「ちょっと、ふたりとも何言っているの?マイコは確かに成長したけど小さい頃から知っている子だよ。変な事言わないでよね!」


 少しふて腐れたミカは口を膨らませた。その表情にリナもドレイクも笑い出した。そうこうしているうちに最終目的地である管理者サーズにいる天道軍の本部が見えてきた。偵察に向かったてんとが戻ってきた。


 「ミーン・ウォーリアは確認できなかった。本部にも兵士の気配は感じられなかった。管理者サーズは逃走したのかもしれん。」


 「とりあえず行ってみるか。オーブや共鳴石が得られるかもしれんしな。」


 周囲を警戒しながら近づいていくがミーン・ウォーリアに遭遇することはなかった。しかしこの施設の広さには皆が驚いた。城壁といった類はなく、代わりに優雅でモダンな石積造りの庭園がある。わりと開放的な造りの建物で内部への侵入は簡単に出来た。


 「侵入者に対する警戒が薄いのはそれだけ自信があるのだろう。警戒を怠るな!」


 てんとは施設の最も高い鐘楼塔への潜入を試みると羽根を開き飛んでいった。心配したマイコもてんとを追っていく。ロードギアには飛行能力があり、簡単に鐘楼塔へ辿り着いた。最上階には釣鐘がかけられてこれもサーズの趣味なのかとあまり気にも止めなかった。マイコはロードギアから降りるとてんとと共に階段を降りていく。だが、サーズはおろかミーン・ウォーリアすら見つからなかった。鐘楼塔の階段を降りていくと再びタカヒト達と合流する。


 「やはり、管理者サーズは逃走したようだ。」


 「そのようだな。施設内にも奴を見つけることはできなかった。まあ、発見は出来なかったが面白いものを見つけたぜ。」


 「面白いもの?」


 マイコが首を傾げるとドレイクは機械の部品を手にして見せた。それは機械人形の部品のようだった。ドレイクが管理者サーズを捜していた時、ある製造室を発見した。そこにはまだ未完成の機械人形が数体並んでいた。


 「うまくいけば、復興の助けになるってドレイクが言うのよ。どうかしら?」


 「・・・ドレイクの自信満々の笑顔を見たら否定することはできない。」


 「よし、決まりだ!」


 「でも、誰が機械人形を動かすの?」


 「誰って・・・・俺はそんなことできねえし・・・てんとは?」


 「私は修理工ではない。」


 「ミカも私ももちろん無理よ。」


 「僕も・・・・。」


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