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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
168/253

再会したハンター

 「酷いな・・・・言葉もねぇ・・・。」


 ドレイク達の目に映ったものは至る所に広がっているミーン・ウォーリアの喰らい残された地獄軍の兵士の残骸だった。死臭があたりを包みミカもリナも口をおさえる。


 「兵士の死体の数に比べてミーン・ウォーリアの残骸が少ない。地獄軍の軍勢がどのくらいか把握はしていないがかなり劣勢に追い込まれていることだけはわかる。」


 死臭の漂う大地を通り過ぎ、数匹の地獄軍兵士の残骸が次第に増えてくると目の前に地獄軍の本陣らしき建物が見えてきた。門はかたく閉ざされているがミーン・ウォーリアはあたりを取り囲んでいた。


 「篭城か・・・奴らも必死だな。むっ、俺達に気づいたようだ。」


 ドレイクは斬神刀の柄を握り締めると前方からミーン・ウォーリアがフラフラと歩いて迫ってきた。武器らしき道具は手にしてはいない。マテリアルフォースやソウルオブカラーの能力もなさそうに見える。つまり肉弾戦が得意ということだ。


 「左右に展開する。タカヒトと俺は前戦に、ミカを中心にリナとてんとは後方支援を頼む。」


 ミカは前方にレインボーウォールを張るとリナの雷撃とてんとの風撃が迫り来るミーン・ウォーリアに直撃し崩れ落ちるようにミーン・ウォーリアは倒れていく。その後ろから続々とミーン・ウォーリアが迫ってくると地面にある肉塊にむしゃぶりつく。


 「げっ、喰らいついてやがる。共食いか・・・仲間意識はないらしいな。」


 「あれに近い魔物は経験がある。

  体力を消費するが長期戦を覚悟する必要があるぞ。」


 「経験がある?・・・アレとか?」


 「まずは私とリナで牽制する。処理しきれない奴らの始末を頼む。」


 緑てんとは球体を高速回転させると鋭い風の衝撃を放つとミーン・ウォーリアはバタバタと倒れていく。そこにリナの雷撃が襲い掛かる。黒焦げになった肉塊にミーン・ウォーリアが待っていたかのように喰らいつく。てんとの風の衝撃とリナの雷撃を浴びなかった数匹のミーン・ウォーリアもドレイクの一閃に肉塊となった。


 「やれやれ、食欲しかないのかねぇ~。」


 「そのへんはドレイクと同じかもね。」


 「リナ、それは言い過ぎだろ。まあ、否定できないところもあるが・・・タカヒト、何笑ってんだ?」


 「ううん・・・・夫婦ってそういうものなのかなって思って・・・」


 「まあ、そんなもんだ。おまえもミカと夫婦になったらわかるぜ。おっとそんなこと言っている場合じゃないか。」


 ドレイクの言葉にタカヒトとミカは顔を真っ赤になっているがそんな場合ではない。ミーン・ウォーリアはフラフラとしながらも続々とこちらに迫ってくる。ミーン・ウォーリアの数は減って篭城していた三獣士にも朗報が飛び込んできた。


 「ミーン・ウォーリアが撤退しているだと?そんなバカなことがあるか。」


 「おそらく、彼らが応援に来てくれたのじゃろう。」


 「彼ら・・・・ドレイク達か。まさか・・・・いや、可能性は否定できないか。よし、迎撃に出るぞ。」


 迎撃に出た地獄軍とミーン・ウォーリアの戦力は拮抗していた。いや、食糧となることを考えればミーン・ウォーリアが少しだけ有利であった。ミーン・ウォーリアを支配するウイルスはある種の成長ホルモンを保有している。共食いでは得られないエネルギーは地獄軍の猛者達の肉塊で得られる。喰らえば身体能力が高められる。フラフラと一歩一歩進むことしか出来なかったミーン・ウォーリアは兵士の数として大半を失ったがそれを補うように数名ではあるが屈指の戦士として成長していく。ミーン・ウォーリア以上に兵士を失った地獄軍は三獣士と数名の部下だけとなり取り囲まれたアロケンは声を荒げた。


 「何故だ!我らが有利だったはず・・・」


 「あれらは喰らうことで急激な成長をするらしい。」


 「何か手立てはねえのかよ。」


 「囲まれておるし・・・集中攻撃しかあるまい。」


 「上等だ!行くぜ、ブギーマン!」


 毛深い熊のような魔物を引き連れてバラムはミーン・ウォーリアに戦いを挑んでいく。牡羊の顔を持つバラムは顎を開くと火炎を吐きだすと同時に蛇の尾がミーン・ウォーリアを絞め殺そうと巻き付く。両手の鋭い爪でブギーマンは手当たり次第切裂いていく。


 「いいぞ、ブギーマン。このまま一気に・・・・」


 バラムは急に熱さを感じると胸部にミーン・ウォーリアの腕が背中から突き刺さっていた。蛇の尾に巻きつかれていたミーン・ウォーリアは尾を引き千切り背後からバラムの胸部を鋭い刃に変形させた腕で貫いていた。吐血したバラムの眼に映ったものはミーン・ウォーリアに食い千切られていくブギーマンの姿だった。恐怖に叫び声をあげるがそれも次第に小さく消えていった。


 「バラムでも駄目じゃったか。ワシがいこうかの。足止めくらいにはなろうてな。」


 フルカスは地面をツンツンと杖で叩く。すると土が大きく盛り上がり天高く伸びていくと巨大な大蛇に変わった。大蛇はミーン・ウォーリアを見下すとその巨大な顎で喰らいつき、次々とミーン・ウォーリアを飲み込まれていくとその腹が大きく膨らんでいく。


 「やったな。これでやつらに勝てるぞ。」


 「・・・アロケン、足止めと言ったではないか。この程度であれを止めることなどできん。早く逃げるのじゃ。」


 アロケンが戸惑っていると大蛇に異変が起きた。膨らんだ腹部から夥しい数の腕が突き出してきた。叫び声をあげた大蛇はボロボロと崩れて土に変わり大地戻った。土塗れのミーン・ウォーリア達は素早くフルカスを取り囲むと鋭く尖った腕で貫いた。数匹のミーン・ウォーリアはフルカスを頭上に押し上げると貫いた腕に滴り落ちてくる血液を舐めた。小刻みに震えるフルカスに意識はない。血を飲み干したミーン・ウォーリア達は地面にフルカスを叩きつけるとその血肉にむしゃぶりつく。


 「貴様等ぁ~!喰らえ、ポイズン・カーペット!!」


 アロケンは両手にどす黒い煙のようなものを集めるとそれを地面に押し付けた。地面を覆うようにどす黒い煙が敷かれていくとミーン・ウォーリアらを包み込んでいく。これは先の戦いでアロケンが放った強力な猛毒の絨毯である。最高の猛毒を放ったアロケンには笑みすら漂っている。毒の絨毯からの猛毒にミーン・ウォーリアらは膝を落とし苦しみだした。


 「我が毒を浴びれば皮すら残さぬぞ!」


 猛毒を放ち続けるアロケンだったがその表情が蒼く引きつるのに時間はかからなかった。ミーン・ウォーリアらは再び立ち上がると何事もないようにどす黒い煙の絨毯の上をアロケンに向かって歩いてきた。必死の形相で猛毒を放ち続けるがミーン・ウォーリアは止まらない。大地に震える両手を押し付けながら顔をあげたアロケンの眼に映ったものはまわりを取り囲むミーン・ウォーリアだった。


 「やっ、やめろ・・・やめてくれ!・・・・うぎゃぁぁ~~~!!」


 アロケンを取り囲むとミーン・ウォーリアは肉を引き千切って喰らいつく。地獄の猛者を食したミーン・ウォーリアであったがまだ腹は満たされてはいない。次なる獲物を発見すると歩を進めていく。


 「くそっ、どうやら三獣士もやつらの腹におさまったようだな。」


 「そのようだ。奴らの数が急激に増えていく。

  どうする?撤退も考えねばならんぞ。」


 「撤退?どこに逃げる?後ろからもあれが来てるぞ!」


 てんとは風の流れを読むと天道軍の本部からミーン・ウォーリアがこちらに向かって行軍してくる気配を感じた。ミーン・ウォーリアを挟み撃ちにするつもりがミーン・ウォーリアに挟み撃ちに遭う展開となってしまった。逃げ道を失ったドレイク達は完全にミーン・ウォーリアに取り囲まれてしまう。


 「この数・・・勝ち目はないな。てんと、理力はどのくらい残っている?」


 「残念ながら全員運べるほど残ってはいない。せいぜい四名ってところだな。」


 「そうか・・・・ならば俺が残る。リナを宜しく頼むぜ。」


 「何を言っているの?」


 「この戦は俺達の負けだ。リナ、タカヒト達と逃げて生き延びてくれ。」


 「いやよ・・・・私達は夫婦でしょ?生きるも死ぬも一緒よ!」


 「そうよ、私達は仲間なんだから誰かが犠牲になるなんて考えないで。」


 「・・・・」


 「僕だって・・・まだ諦めてない。」


 「タカヒトの言う通りだ。誰一人としてまだ諦めてないのだぞ。」


 「そうか・・・・そうだな。俺としたことがちょっと早とちりだったな。よし、んじゃあ、いっちょ、やったるか!」


 ドレイクは斬神刀を振り上げると水平に振り切った。鋭い斬撃がミーン・ウォーリアを切裂いていく。タカヒトは徳の水筒を一口飲むと狂刀羅刹を振り上げた。金色の光の雨がミーン・ウォーリアに降り掛かると身体中に陥没した穴が開いて倒れていく。てんとの風撃が、リナの雷撃がミーン・ウォーリアの身体を弾き飛ばす。だが、あまりに多すぎる数にタカヒト達は少しずつ体力と闘気を奪われ、劣勢に陥っていく。ミカが倒れ、それをかばうようにタカヒトも膝をついた。浮遊していたてんとはミーン・ウォーリアの攻撃に地面に叩きつけられた。よろけるリナを守りながら闘うドレイクも限界に近い・・・涎を垂らしながら近づいてくるミーン・ウォーリアにもはや討つ手立てはない。タカヒトは震える手でミカをしっかりと抱きしめた。ミーン・ウォーリアの食糧となるにしてもミカが食べられる光景は見たくなかった。ミカが食べられるより自分が先に・・・。そんな想いでタカヒトはギュッとミカを抱きしめた。ミーン・ウォーリアがタカヒトに飛びかかろうとした瞬間、空から一閃の光が落ちてミーン・ウォーリアを貫く。一閃を浴びると内側に陥没していくようにミーン・ウォーリアの身体は溶けていく。空からの光はドレイクとリナを取り囲むミーン・ウォーリアに放たれた。


 「なんだ、この光は?」


 ドレイクが上空に視線を向けると一点の影が見えた。それは次第に大きくなっていくと機械人形らしき姿が落下してきた。地面に落ちる寸前でそれは浮遊するとゆっくりと大地に降り立った。それはタカヒトが以前見た事があるモノによく似ていた。


 「てんと!アレって・・・・」


 「油断するな!まだ、味方と決まったわけではない。」


 てんとが警戒するとその機械人形は周囲を見渡した。その後、ミーン・ウォーリアに砲筒を向けるとおびたたしい光にミーン・ウォーリアは次々と溶けていく。だが、その光を浴びても溶けないミーン・ウォーリアも現れてきた。


 「どうやら奴らは受けた攻撃に対して免疫力がつくようだ。」


 てんとの考えは的を得ていた。ミーン・ウォーリアを操る金属ウイルスは衝撃に対して免疫を瞬時に生み出すことが出来る。故にドレイクやタカヒトの攻撃もリナやてんとのソウルオブカラーもすでに免疫が出来ている。攻撃をすればそれだけ免疫力が高まり限りなく無敵になる。すでに突然現れた機械人形の攻撃も効かなくなっていた。


 「安心して、タカヒト!機械が相手でしょ?なら私に任せて!」


 機械人形からの声にタカヒトは驚いた。タカヒトは見た事もない機械人形だが、相手はタカヒトを知っていた。機械人形は両手の指を鋭く尖った形状に変形させると瞬時にミーン・ウォーリアに近づく。虚をつかれたミーン・ウォーリアは動くことも出来ずに機械人形にその身体を貫かれた。すぐに引抜くと機械人形はしばらく動かなくなった。


 「へぇ~・・・この金属ウイルス使ってるんだ。古いかんじ。まあ、いいわ。デュアル・レイバーユニット起動、バーチャル・ライド・ドライブ・システム全開!」


 機械人形から黒色の光が放たれるとそれらはミーン・ウォーリアに吸い込まれていく。黒色の光をタカヒト達も浴びたが何の異常もなかった。だがミーン・ウォーリアは違った。断末魔のような悲鳴声を出すとその強じんな身体は次第に乾き、粉のようになった身体は風により次第に消えてなくなる。ドレイク達を取り囲んでいたすべてのミーン・ウォーリアは粉となり大地の一部に変わった。機械人形はタカヒトの前に立つとしばらく動かなかった。てんとの言う通り、ミーン・ウォーリアを倒したからといって仲間とは限らない。警戒するタカヒト達に機械人形は膝をつくと胸部が開き、中から黒い影が出て来た。


 「ちょっと、タカヒト!久しぶりの再会に武器を手に構えてるってどういうこと?」


 「えっ・・・・なんで僕の名を・・・・」


 「失礼ね、アンタ!私を忘れたの・・・・マイコよ、マイコ!」


 「えっ!ひょっとしてハンター族のマイコちゃんなの?」


 「ほかのマイコっている?あっ、ミカ!久しぶりね。元気だった?」


 「マイコちゃん?・・・・なんか・・・大きくなったね・・・。」


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