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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
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管理者サーズの野望

 「いえいえ、そんな・・・はい、わかりました・・・ええ、では私を戦略省の参謀に推薦して頂けるのですか?・・・ありがとうございます。もちろん撃退してみせます。はい・・・えっ、大臣にですか?・・・ありがとうございます。はい、失礼します。」


 幼虫のヨグ・ソトホートを机に置くとサーズは笑みをこぼした。管理者のサーズにとってまたとない機会が巡ってきた。天道でも身分の低いサーズは学力だけでこの管理者までのぼりつめたが、腕力や特殊な能力のないサーズには十六善神にはなれない。彼が目指すポストは天道の行政を運用する省庁の官僚となることだ。そんな彼に大臣になるチャンスが巡ってきたのだ。それには三獣士率いる地獄道の魔物を撃破しなければならない。


 「待てばチャンスは巡ってくるものだ。そして私にはそれを実現する力がある。」


 サードブロックの地図には赤と白の駒が並べられている。その駒を動かしながらすべてが計算どおりに動いていることに満足な表情を浮かべていた。その頃、地獄道本陣ではちょっとした騒ぎが起きていた。


 「何!・・・ドレイク達が消えただと?」


 部下の報告を受けたアロケンは声をあげた。部下によると昨日、夕食を届けた時には部屋にいたらしいのだが、翌朝になり朝食を届けようと部屋に入ると誰もおらずもぬけの殻だったらしい。


 「ふっ、そんなに心配することでもあるまい。戦況があまりにも長引き苛立ったのだろう。どちらにしても我らの部下ではないのだ。敵対せねば自由にしておけばよい。」


 アロケンはワイングラスを持つとそれを口に含んだ。バラムもフルカスも同意見であり報告した部下は一礼すると部屋を出ていった。


 「やつらのことはともかく、あれから天道軍の動きがまったくないのが気になるところじゃの・・・この静けさは妙に気になる。」


 「年をとると心配症になるんだな。大丈夫だ、フルカス。高射砲を失った奴らには篭城しか手段がない。」


 バラムはワインを一気に飲み干すと部屋を出ていく。バラムの言う通り高射砲撃が破壊されてから天道軍に動きはなかった。だからといって篭城する雰囲気でもなさそうだ。警戒心は怠らないように部下には指示しているが胸騒ぎだけはおさまらない。そんなアロケンに戦況の知らせが来たのは数時間ほどしてのことであった。


 「何故、いままでわからなかったのだ!警戒を怠るなと指示したはずだぞ!」


 アロケンの激が飛ぶ。本陣の数里ほどの位置に数百の天道軍が進軍していた。真っ赤な姿をしたそれらは歩を揃え、機械人形のように一定リズムで進軍している。数里先にはこのブロックの集落がある。それらが進軍を阻止することで時間を稼ぐことが出来ると考えたアロケンは臨戦体勢を整える準備を行う。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「村長、もう駄目だ!逃げられねぇよ・・・。」


 「女子供だけでも地下に避難させるのじゃ。もし地下室に空きがあるのならお主ら若者も避難するんじゃ。」


 「そげなことできねぇよ。村長をおいてどこに逃げるんじゃ!」


 「・・・ワシらはずい分と生きたものじゃ。もはや命など失ってもよい。お主らは生きて部落を守っていかねばならん。」


 「・・・・すまねぇ、村長。」


 部落の井戸には隠し通路が存在していた。彼らは天道の亜人種であるが飛行能力など特殊能力は一切なく平和を愛し、懸命に生きてきた。管理者サーズへの作物の取立てにも甘んじて受け入れてここまで部落を大きくしてきたのだが万が一に備え地下室を建設しておいたがここにきて役に立とうとは考えてもみなかった。若者や女子供が無事に地下室に避難したことを確認すると村長や年寄り衆は家から出て青空の見える大地に座り込んだ。


 「ワシらの命は時期消えるじゃろう・・・若者達がいればこの部落は再生する。」


 「そうじゃとも。

  ワシらの意志を受継ぐ者がおれば、安心して旅立てるというものじゃ。」


 老人達は自らに言い聞かせるように言った。青空を見上げながら地鳴りが近づいてくるのを肌で感じていた。前方からは真っ赤な姿をした機械人形が進軍している。後方からは地獄道の魔物がこちらに飛んできた。もはや逃げる場所などない。希望は地下室に残してきた。彼らは今、死を受け入れようとしている・・・。


 「しかし、何故かの・・・ワシらはサーズ様に忠義を誓い懸命に働いてきた。そのワシらがどうしてこんな仕打ちにあうのじゃろうな。ワシらが守ってきたものはなんだったんじゃろうかの?」


 涙を浮かべる村長に老人達はしがみつくと最後の別れを惜しんだ。その老人達に向かって真っ赤な姿をした機械人形は突き進んできた。部落を通り過ぎた機械人形は砂煙をあげながら進軍を続けた。砂煙が消えた頃、老人達はしがみつきながらも通りすぎていった機械人形をポカンと口を開けながら見つめていた。


 「おじいさん達、大丈夫?」


 「・・・女神様じゃ・・・。」


 いきなり出現したミカを女神と勘違いして両手を合わせて拝んでいる。死を覚悟した老人達をミカの桜玉上級理力 桜吹雪で覆い隠すと機械人形達は老人達を発見することも出来ずそのまま進軍した。再びもとの場所に戻った老人達はいまだに祈り続ける。


 「女神か・・・まあ、九死に一生を得ただけにそう見えるのかもしれんな。」


 てんとは緑色に輝くと老人達の身体がゆっくりと浮遊していく。老人達はオロオロしているがミカの言葉には従うようだった。


 「機械人形は通りすぎたけど、次の機械人形の進軍がこちらにむかっているの。身を隠す場所はないの?」


 「そんな場所などないのじゃ。ワシらはもう長くはない命じゃ。覚悟は決めておる。女神様こそ早く安全な場所にお逃げくだされ。」


 諦めた表情を浮かべる村長に老人の誰もが黙り込んでいる。部落の地下室には女子供と若者は逃げ込んでいる。この地に逃げ込める場所など残っていない。体力のない老人達は諦めるしか方法がない。


 「そんなの・・・ゆるさない。老人だからとか、長くない命とか・・・そんな覚悟なんて私は許さない!」


 ミカが初めて怒りを表した。それはタカヒトですら初めてみる表情である。長くない命である老人を犠牲にすることをしょうがないを諦める彼らをミカは許せなかった。失ってもよい命などない。命の続く限りそれを放棄せず懸命に生きる。それがミカの出した結論だった。すでに機械人形の第二部隊の進軍はそこまで近づいている。浮遊しているタカヒト達の姿もすでに察知しているであろう。ならば地上に降り立ち機械人形を迎撃するしかない。緑てんとはタカヒト達や老人と共に地上に降り立つと迎撃体勢をとる。


 「さて、女神様の言う事は聞かねえとな!タカヒト、行くぞ!」


 「指図するな、バカ野郎が!」


 ドレイクと共に赤タカヒトは数百体からなる第二部隊の機械人形に向かっていく。挨拶代わりに赤タカヒトは赤玉最大闘気 テラアグニギガントを放った。荒々しい巨大な火炎龍が向かってくる機械人形に喰らいつくと大火炎の海原が広がっていく。激しく燃え広がる火炎の海を、ワイングラスを手に笑みを浮かべるサーズがいた。


 「どうやら強大な力が動いているようだ。地獄道の魔物でもあそこまで激しい火炎は生み出せぬだろうな・・・だが私の兵士には効かんよ。」


 激しい火炎海から何事もなかったかのように機械人形達は歩いて行軍を進めていく。これにはさすがに赤タカヒトも驚いた。その後、二度三度とテラアグニギガントを放つが結果は同じだった。決め手にかいた赤タカヒトに代わり茶ドレイクが前に出た。地面に両手を押し付けた茶ドレイクは輝きを増すと進軍してくる機械人形のいる地盤を大きく裂いていく。裂け目から次々と機械人形達が落下していくとその裂け目も次第に塞がって元通りになった。


 「戦いってのはスマートさが必要なんだぜ!」


 得意げの茶ドレイクであったが、地面から激しい衝撃音が鳴り響くと地盤を破壊しながら機械人形達が次々と大地に飛び出してきた。


 「どのあたりがスマートなんだ?」


 「くそっ、あの化け物には火炎や地震の類は

  通用しないようだな。肉弾戦しかねぇ!」


 「俺様はもともとそのつもりよ。行くぜ、ドレイク!」


 「俺に指図するな!」


 赤タカヒトは狂刀羅刹を手に、茶ドレイクは斬神刀を握り数百体の機械人形に走り向かっていく。一方、ミカ達にも機械人形が襲い掛かっていた。赤タカヒトと茶ドレイクの戦闘力を脅威と感じたサーズは第一部隊を二分割にして三獣士と赤タカヒト達への襲撃に向かわせた。赤タカヒト達の襲撃に向かった機械人形であったがその途中にいるミカ達と戦闘を繰り広げる事になった。


 「牡丹玉オーバーエレメント リ インドラ メガラウンド!」


 上空に雷雲が発生すると大きな雷神の腕が機械人形を押し潰していく。電撃により機械人形は奇妙な動きをするが、それも時間が経つにつれて元の状態に戻り回復していく。何事もなかったかのように機械人形は進軍を開始しだす。雷撃を受け付けない機械人形に対して次に攻撃を仕掛けた者はてんとであった。緑玉最大理力 風神を繰り出した。緑色の三つの球体がてんとを中心に円周上に回転していく。しかも正確に回転は加速されていくとてんとの頭上に風の衣をまとった青白い表情をした者が現れた。風神である。飄々とした風神は両腕を機械人形に向けると風の衝撃とともに鋭い風刃が放たれた。風の衝撃を受けた機械人形は胸部を陥没させ、手足をもぎ取られていく。それとともに鋭い風刃が頭部や脚部を斬りおとしていく。


 「やったね、てんと。」


 「いや、・・・足止めくらいは出来ると考えていたが・・・甘かったか。」


 てんとの言葉どおりに数体の機械人形は撃破することが出来たがその背後にはまだ数十体の機械人形がいた。てんとはマテリアルフォースを開放するとガトリングガンを手にした。給弾・装填・発射・排莢のサイクルを繰り返して連続射撃を繰り出すと機械人形はバタバタと倒れていくがそれよりもガトリングガンの弾薬が切れるのが早かった。


 「ミカ、リナ!老人を連れて撤退するぞ。」


 ミカはレインボーウォールを何層も形成すると機械人形の進軍の阻止を図る。機械人形はレインボーウォールに激突するが前進できない。それでも進軍を止めない彼らはジリジリと前進していくとレインボーウォールに亀裂は走った。レインボーウォールを割りながら進軍していくが機械人形の進軍速度を抑えることはできた。


 「でも、てんと。進軍を止めることはできないよ。」


 ミカ達の戦況が悪化しつつある中、ドレイク達もまた同じ状況であった。マテリアルフォース、ソウルオブカラーとも極限まで高められた彼らは迫り来る機械人形相手に押されつつあった。


 「くそっ、いったい何体いやがるんだ!もう八十体は倒したはずだが・・・。」


 「おい、おっさん!疲れたんなら俺様一人でやっといてやるぜ!老体に鞭打っちゃあ、かわいそうだからな!」


 「任せられるほど力があるのか?

  ヒヨッ子は大人しく偉大な先人についてきやがれ!」


 「けっ、言ってくれるぜ!」


 背中を向けたままいがみ合う彼らを機械人形が取り囲んでいた。ふたりと機械人形の距離が縮んでいくと極限赤タカヒトは激しく烈火する狂刀 羅刹を振り回し向かっていく。極限茶ドレイクも斬神刀を八相に構えると機械人形を一掃していく。苦しみながらも機械人形を倒していくふたりは上空に稲妻が走り爆音が鳴り響くのを聞いた。


 「おい、赤玉。俺も老体に鞭打ってきたがここまでが限界のようだ。

  後は頼んだぜ!」


 「てめぇ!なに言ってやがんだ!」


 「はぁ~ん・・・俺が疲れたら後は独りでやっといてくれるんじゃなかったか?」


 「なっ・・・・くそが!てめえはどこに行くんだよ!」


 「俺か?帰ってこいコールがきたんでな。俺はリナのところに帰ることにする。結婚するとな、拘束されるが増えるんだ。悪いな!」


 激怒する赤タカヒトを無視するかのように斬神刀で機械人形を斬りつけ倒しながら走り去っていく。残された赤タカヒトは一瞬、呆気に取られるが突然激怒すると阿修羅の如く機械人形を斬り倒していく。


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