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未来のきみへ   作者: 安弘
天道編
161/253

進化したその先に

 先に動いたのは極限茶ドレイクだった。斬神刀を肩に背負うと高速移動を開始した。プログレスから放たれた斬撃をかわしながら向かっていく。いままで見極めることができなかったプログレスの攻撃が極限化したドレイクにははっきりと見えた。ゆっくりと腕を振り切っているかに見えたそれが実は高速的な動きでありその手刀ともいえる振り切りから凄まじい威力を持つ斬撃を繰り出していた。技を見極めた極限茶ドレイクがかわした斬撃は羅刹の形状を変化させスピアを手にしている紫タカヒトが振り回し撃ち落した。


 「ミカ、最大級の防御を頼む。防御に徹すればやつの攻撃を回避できる。」


 紫タカヒトに促されたミカは倒れているハルピュイアやデスフェル、そしてリナとてんとの前に立つと巨大な桜の葉で覆っていく。さらにその中には無数のレインボーウォールを構築することで鉄壁にも近い防御壁を築いた。それを確認した紫タカヒトは理力を極限まで高めていく。真紫ともいうべき輝きが紫タカヒトを包み込む。そして極限紫タカヒトは極限茶ドレイクのもとへと向かった。


 「抜刀術奥義 瞬殺!」


 斬神刀を振り下ろした極限茶ドレイクは手応えを感じながらもプログレスを見ようとはしなかった。


 「強固な武装だな。こいつを喰らって無事だった奴はいままでいなかったんだぜ。」


 「ほう・・・私が最初に受け止めた者というわけか。光栄ではある。」


 プログレスは胸元についた刀傷を少し撫でる。極限茶ドレイクは斬神刀の刃先をプログレスに向けると再び対峙する。極限茶ドレイクと睨み合うプログレスであったがその背後をついて瞬時に接近すると極限紫タカヒトはスピアを突き刺した。だが突き刺した先にいたのはプログレスの残像のみ。背後に殺気を感じた極限紫タカヒトは瞬時にその場を離れると振り返った。


 「なかなかよい動きである。」


 冷静なプログレスに対して極限紫タカヒトは動揺している様子を悟られないように必死であった。紫タカヒトとドレイクが極限まで高めた闘気、理力を持ってしてもプログレスには通用しないことだけはわかった。しかしすべてを理解しているプログレスは余裕ともいえる笑みを浮かべながら極限茶ドレイクと激突している。すべてを斬り裂いてきた斬神刀を振り回すドレイクにプログレスは片手でそれらをさばいていく。息を切らし始めた極限茶ドレイクの表情は次第に険しいものに変わっていく。それを察したかのように極限紫タカヒトが変わってプログレスと極限茶ドレイクの間に入り込んだ。真紫色の透き通ったスピアを操り突きの連撃を放っていくがそれすらプログレスは片手で、しかも指先一本で対応していく。


 「ずい分息切れしているようだが・・・もう少し手加減したほうが良いのかな?」


 蒼ざめた表情をする極限紫タカヒトの槍術を簡単にかわしていくプログレスは退屈そうに言った。色玉である紫玉はタカヒトにより極限理力を手に入れた。色玉としてもっとも強力な力を得たはずの極限紫玉の攻撃がまったく通用しない。冷静さを保ちながらも圧倒的な力の差を思い知らされている。プログレスと極限紫タカヒトの戦いを目の当たりにしている極限茶ドレイクは恐怖と屈辱で身が震えていた。最強の力を手に入れたと確信していた心が勘違いであったと悟ったのだ。


 「・・・貴様も己のひ弱さを学んだようだな。」


 極限茶ドレイクが辺りを見渡すとそこにはプログレスや極限紫タカヒト、リナやミカ、それにてんとの姿はなかった。茶色の炎がひとつだけ目前に存在している。


 「・・・・茶玉なのか?」


 「残念・・・貴様の戦いは・・・戦闘というものを全く理解していない者の戦い方。素人に使われているとは実に腹立たしいかぎりだ。」


 「はっ、言ってくれるぜ。俺のどこが素人っていうんだ?」


 「貴様・・・我は大地の力を持つ者ぞ。色玉の中で最強と謳われる力を得ておきながらそれを使いこなせないことこそ素人だといっておる。それ以外に呼び方があるのなら教えてくれ。」


 茶玉の言葉にドレイクは黙ったままだった。茶玉との会話は初めてであるが衝撃とともに生まれて初めて挫折というものを味わったような気がした。ほしいものは力ずくで奪ってきた。手に入れられないものなどあるわけがなかった。最強を手に入れたと確信していたがプログレスという更なる最強戦士が現れた。そんな時に茶玉が現れて素人と呼ばれた。これこそがドレイクのプライドを傷つけ落伍者としての刻印を刻み付けた。


 「黙り込んだところを見ると少しは理解したようだ。」


 「俺は極限まで闘気をあげることが出来る。その俺がまだ茶玉の力を使い切っていないとはどういうことだ?」


 「過信こそが己が最大の欠陥と悟れ。貴様は大地を揺るがし、マグマを操ることが我のこの茶玉の力と勘違いしておる。」


 茶玉は大地の力を持つ・・・それは短に地震やマグマを発生させるだけとドレイクは認識していた。そしてドレイクの極限闘気クル・ヌ・ギアスは大地から茶色の透明な液体のようなものが浮き上がり標的は乾燥して粉と化す。この時、ドレイクは茶玉の本当の力を悟った。


 「本当の力とは大地のエネルギーを自らの力に変換することだったのか!」


 「貴様は素人ではあるが頭はそれなりに切れるようだ。我が力は広大な大地の力を最大限まで活用することで最強と呼ばれる力が得られる。貴様の使いしその斬神刀は我と灰玉とを結び玄武の扉を開ける鍵にすぎん!我らの力と比べれば斬神刀など針の先ほどの破壊力しかもってはおらん。」


 大地の力を得るということは単純に大地を揺るがす程度ではない。生きとし生きる者、万物は大地の力を借りることで生命を保っている。大地の力なくして生きられない。その力を操れることこそ色玉最強と謳われた茶玉の本来の力なのである。ドレイクはその力がどうしてもほしかった。いや渇望していた。そんなドレイクに茶玉は口を開いた。


 「無理だな。我の力を得て貴様は何を手に入れたい?その問いに答えられるまでは我が貴様に力を貸すことはない。」


 そう言い残すと茶玉は消え、ドレイクの目前では極限紫タカヒトとプログレスが交戦中であった。いや交戦中というより極限紫タカヒトの防戦一方といったほうが合っている。プログレスの高速とも呼べる攻撃を極限紫タカヒトはスピアで防いでいた。一瞬の隙をついた極限紫タカヒトはアレストを発生させるとそれらは巨大な砲筒を築き波動砲が放たれる。至近距離から放たれた紫玉最大理力アルティメットバスターをもプログレスは簡単にかわしていった。戦況は依然変化はなくドレイクは茶玉に針の先ほどの破壊力しかないと言われた斬神刀の柄を握り締めるとプログレスに向かっていく。ドレイクにはそれしか手がなかった。持ち得るすべての力を解放すれば同じ極限理力を持つ紫タカヒトと協力してプログレスを倒すことも出来ると信じていた。しかしそれは叶わなかった。プログレスの前にドレイクとタカヒトはなすすべなく倒れていた。


 「実に申し訳ない・・・私が強すぎたようである。」


 プログレスはタカヒトの頭を踏みつけると激痛に叫び声をあげた。ミカやリナ、てんとが応戦に加わろうとするがプログレスの強力な衝撃波に近づくことすらできない。圧倒的な力にドレイクには手段がなかった。いやひとつだけあった。最後の手段が・・・。


 「くらえ、茶玉極限闘気クル・ヌ・ギアス!」


 大地から茶色の透明な液体のようなものが浮き上がってくるとプログレスを包み込んでいく。その技は依然ゴーチュッカーの身体を乾燥させて粉と化した茶玉最高の技である。身動きも取れなくなり恐怖に顔を歪めるプログレス。勝利を確信したドレイクであったが次の瞬間、プログレスの表情が和らいだ。


 「勝ちを手に入れかけてそれを失った瞬間の顔が見てみたかったぞ!」


 プログレスは包み込まれた茶色の透明な液体のようなものからいとも簡単に抜け出すと衝撃波でそれらを消し去った。ドレイクの表情が恐怖に歪んでいる。タカヒトに意識はなく押し潰されそうな恐怖に耐えながらドレイクは立ち上がった。立ち上がったとはいえ、勝機はなく襲い掛かる死を受け入れるしかなかった。タカヒトの頭を足で押し潰していたプログレスは瞬きする間もない速さでドレイクの懐に移動すると防御や受身を取ることもできずに電光石火の一撃が腹部に突き刺さる。ドレイクの身体が九の字に折れ曲がると両膝を地面につけ息をすることもできずに悶絶している。


 「死を受け入れた者に用はない。

  生を求める者を殺めることこそ私の望みである。」


 そう言い残すとプログレスはゆっくりとミカ達の方向へと歩を進める。ミカの最大理力であるエラト・アグライアを衝撃波で打ち破ったプログレスはレインボーウォールに体当たりしながらそれらを破壊していく。レインボーウォールを破壊されては形成する・・・そんなことを繰り返しているうちにミカの目前にプログレスが立っていた。恐怖に怯えるミカの視界にタカヒトが映った。だが次の瞬間、ミカの身体は花びらのように舞って地面に落ちていく。人型となったてんとはガトリングガンを構えると給弾・装填・発射・排莢のサイクルを繰り返して連続射撃した。上半身を振り子のように素早く動かすプログレスに弾丸が当たることはない。驚愕したてんとのガトリングガンが真っ二つに斬りおとされると身体中から血が吹き出た。残されたリナは牡丹の輝きを放ちながら大地の鞭を振り回す。鞭の先端がプログレスの腕に巻きつくと雷獣が襲い掛かる。それらを振り払っているプログレスの頭上に大きな雷神の腕が現れた。


 「牡丹玉オーバーエレメント リ インドラ メガラウンド!」


 プログレスを雷神の腕が押し潰した。リナは距離をとるとドレイクのもとへ移動した。押し潰されたプログレスはその場から姿を消して勝利を確信したリナは笑みを浮かべながらドレイクに歩み寄っていく。


 「・・・・リナ、逃げろ!」


 「えっ・・・・!」


 リナが振り返えろうとした瞬間、胸部が熱く焼けるように感じた。胸元に目を向けるとプログレスの右手が突き刺さっていた。口から大量の血を吐いたリナはそのままうずくまるように膝から地面に倒れていく。倒れたリナの背後には血だらけの右手を見つめるプログレスの姿があった。


 「今のはさすがに堪えた・・・王に刃向かう者はこのように始末するものである。」


 目の前で起きた出来事にドレイクは呆然としていた。恐怖に支配され仲間が倒されていく。最愛のリナまでも失ったドレイクは地面の土を両手で握り絞めることしか出来なかった。そしてこの時、ドレイクは初めて涙を流した。恐怖に支配されたことなど経験のないドレイクにとってこの敗北は屈辱以外のなにものでもない。最強の力を得ていながら恐怖に支配され大切な者達を守ることができない。ドレイクの瞳から赤い血のような涙が頬を伝わっていく。この状況化でドレイクの脳裏に茶玉の言葉が蘇った。


 「我の力を得て貴様は何を手に入れたい?」


 最強の力を得て何がしたい?ドレイクの脳裏に浮かび上がったものはあるひとつの願いだった。それは財を成すことでも地位を得ることでもない。再び立ち上がったドレイクは茶玉闘気を極限まで高めていく。それを見たプログレスはため息をついた。


 「極限闘気クル・ヌ・ギアス!」


 大地から茶色の透明な液体のようなものが浮き上がってくるとそれらは何もない大地を包み込んでいく。闘気を使い果したドレイクはその場にうずくまってしまった。


 「死を受け入れた者の行動はわかりかねる。

  この王自ら殺されるのは名誉な事である。」


 プログレスはゆっくりと歩み寄るとうずくまるドレイクを見下した。ドレイクの背中に鋭い手刀を浴びせようと構えた瞬間、ドレイクに異変が起こった。


 「クッ、ククク・・・」


 「・・・気でも違えたようである。だがそれももう終わりである。」


 「クッ、ククク・・・ハッ、ハハハ・・・・気が違えた?いや違うぜ。やっとわかったんだ。茶玉の言う力を得て何を手に入れたいかの答えがな!」


 ドレイクは立ち上がると少しよろけた。その姿にプログレスは困惑していた。勝敗は明らかである。どんなにドレイクが闘気を開放しようともプログレスには勝てない。しかもドレイクは闘気のすべてを使い果たしている。マテルアルフォースを駆使した斬神刀をもプログレスには通用しない。勝ち目のない相手を前に笑っているのだ。プログレスが気が違えたと考えても不思議はない。不愉快に感じたプログレスはドレイクの笑みを止めようと鋭い手刀をリナと同様に胸部に突き刺した。だがその手刀はドレイクの胸に突き刺さることはなかった。


 「どうした?そんな手刀じゃあ俺は殺せないぜ。手刀ってのはこうやるんだ。」


 ドレイクは右腕を突き出すとプログレスの胸部に刺さった。口から緑色の体液を吐くとプログレスは片膝を地面につけた。強固な胸部はどのような攻撃も受け止めてきた。もちろん無傷で受け止めてきた。ドレイクの斬神刀ですら斬りつけることは叶わなかった。それが武器すらもたないドレイクのしかもチョコンとだした右手が胸部を貫いたのだ。ドレイクの右腕を強引に抜いたプログレスはふらつきながら後方へ避難する。追撃することもなくドレイクは倒れているリナに近づくとその手で傷口を押さえる。程なくしてリナは意識を取り戻した。これにはプログレス自身驚愕した。


 「ありえん・・・貴様・・・何をした!」


 「おいおい、「何をしたのである。」じゃないのか?かなり動揺しているようだな。まあいい、俺もやっと茶玉の本当の力を手に入れたようだ。お前にはつまらない戦いを押し付けたようで悪いことをした。これからが本当の戦いだ!」


 ドレイクは立ち上がるとリナも共にたちあがる。さきほどまで瀕死だったリナはプログレスに貫かれた傷口からの出血も止まり意識もはっきりしていた。リナをその場に残したままドレイクはプログレスに接近していく。斬神刀を使わずにあえて肉弾戦に持ち込んだドレイクとプログレスの力は今、拮抗していた。プログレスの素早い攻撃に対応するドレイクに対して先ほどまで取るに足らない存在だったドレイクの成長ぶりに困惑しているプログレスは動きが鈍っていた。ドレイク優勢が広がっていく中、プログレスはリナの存在を完全に忘れていた。ドレイク優勢で防戦一方のプログレスは何かに足を捕られ転んだ。足元を見るとそこには茶色の透明な液体状の物体が絡まっている。それらを取り払おうとした瞬間、プログレスの視界にドレイクの脚が映った。顔面を蹴られたプログレスは地面に後頭部が減り込んでいく。覆いかぶさったドレイクは馬乗りの態勢のまま打撃を繰り返すと強固なプログレスの皮膚に亀裂が走る。防御している両腕も茶色の透明な液体状の物体が絡まり、身動きが取れなくなるプログレス。ドレイクはその強固な胸部に攻撃を集中いていくと亀裂は大きくなり渾身の一撃が胸部を貫いた。激痛に叫び声をあげるプログレスにドレイクは斬神刀を取り出すと貫いた胸部に突き刺した。


 「リナ!」


 突然ドレイクは叫ぶと上空に牡丹色に輝くリナが浮遊していた。両手を頭上に運ぶと厚い黒雲で覆われた空から黒雲が消えていく。透き通る青空が現れるとそこから雷神が出現した。雷神からはほとばしるほどの電撃が身体を包み込んでいる。それらの電撃を両腕に集中させて両手で圧縮していく。その圧縮されたものを雷神はそっとほおり投げた。それを受け取ったリナの輝きは極限まで達していた。


 「牡丹玉極限マキシマムオーバーエレメント ライズ テラ アルティメスト!」


 雷神の玉を受け取ったリナは急降下するとそれを斬神刀に押し当てた。想像を絶する雷撃が斬神刀を通じてプログレスの身体に吸収された。斬神刀をプログレスから抜くとドレイクはリナを抱きかかえ距離をとった。雷撃を浴びたプログレスは痙攣と断末魔を交互に繰り返しながら悶絶するとピクリとも動かなくなった。極限まで引き上げられたリナは立っていることもままならずその場に座り込むとドレイクにもたれかかった。そこに茶玉が現れた。


 「短期間でよくここまで成長したものよ。少しだけ才能があるのやもしれん。」


 「今になってやっとわかった気がする。もう惑わされたりはしない。俺は自分の行くべき道を信じる。俺は自分を信じ成長していく・・・いや進化していく。」


 「いいだろう。我も貴様の成長が見たくなった。もう少しだけ付き合ってやろう。」


 そう言い残すと茶玉は姿を消していく。ドレイクは疲れきっているリナを見つめた。


 「順序が逆になったが共同作業としてはまあまあだったな。」


 「?・・・・なんのこと?」


 「リナ、結婚してくれ。俺にはおまえが必要なんだ。力を得た俺が手に入れたいものはリナと築く幸せな生活だ。まあ、力を得なくても幸せな生活は築けるんだけどな。」


 「・・・・でも私・・・傷ものよ。それでもいいの?」


 動揺するリナは胸の傷を見つめた。プログレスに受けた傷口はドレイクの大地のエネルギーにより塞がったが傷跡が消えたわけではない。ほかにも戦場で受けた傷や心の傷も沢山ある。ドレイクの真剣な申し入れにリナは素直に喜べなかった。そんなリナを真っ直ぐ見つめるとドレイクは言った。


 「ところで子供は何人がいい?」


 「えっ、・・・バカ!・・・・ありがとう、ドレイク。」


 微笑むドレイクに涙を浮かべ素直に喜んだ。ドレイクの胸元にもたれかかるリナは幸せを噛締めていた。そんな幸せは長くは続かない。ドレイクは気配を感じるとリナを離して立ち上がった。ドレイクの視線の先をリナも見つめるとそこにはプログレスがふらつきながらも立っていた。


 「何故・・・・貴様は・・・・」


 「進化したのか?それはな、おまえの進化・・・つまりおまえの得たオーブからのエネルギーは嫉妬や憎しみだけだからだ。大地のエネルギーは無限に広がっている。」


 「グハッ、・・・・そうか・・・どうりで勝てぬわけよ・・・スカイハイランドを撃沈させ暗黒の世界を手に入れた。あと少しというところで・・・・。」


 「それも違うな。」


 「?・・・」


 プログレスはドレイクの言葉に不思議そうな表情をしていた。ドレイクはデスフェルの砦で古い古文書でこの世界の状況を理解した。その古文書によればスカイハイランドはもともとこの地に雨を降らせる人工構造物であった。スカイハイランドから生み出された黒雲は水分を含むことで雨を降らせ大地を潤わせてきた。しかしいつの頃からかスカイハイランドは動き出すようになりその結果青空を黒雲で覆い隠していったのだ。何故そのようになったのかは古文書にも記載されてはいなかった。だがその結果、飛行亜人種を分裂させてしまった。それに気づいたドレイクはリナと共に内々のうちにてんと達に知らせ分裂を阻止しようとしていたのだ。


 「だがお前の仕組んだこの戦争の結果、スカイハイランドは落下してしまった。それにより天候をコントロールしていた装置が破壊された。おまえのたくらみとはうらはらに天光が注がれることになる。」


 「なんだと・・・それでは私は自ら光を生み出してしまったとでも言うのか!おのれぇ~・・・この私をはめおったな・・・・ピサロ・・・ゲハッ!」


 プログレスは口から大量の体液を吐くとその強じんな皮膚が次第にしぼんでいく。身体は縮んでいき最後には拳大の大きさになった幼虫に姿を変えていた。そしてその横にはオーブと共鳴石が置かれていた。ドレイクは地面にあるオーブと共鳴石を取りあげると怯えている幼虫に言った。


 「今のおまえには何も出来ないだろう。生きるも死ぬも自分で決めるんだな。」

 

 罠に陥れていたはずのプログレスですら陥れられていた。想像を絶するピサロの策略にドレイクは自分達の戦う相手を再認識させられた。


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